上 下
116 / 196

116話

しおりを挟む
ジョウキside

俺はアナからの手紙を読んでも現実味がなくて意外に頭の中は冷静だった。

でも、1人で抱え込めるほどの心の余裕はなくて俺はマハロくんに電話した。

話してる間に涙が頬をつたってぽたぽたと落ちていく。

これはマハロくんに言いたい言葉じゃない本当に言いたい人はアナだ。

だけど伝える相手であるアナがいなくなってしまった今、俺はマハロくんに伝える事でしか自分の感情を処理出来ずにいた。

J「マハロくんは…運命って信じる?」

M「え?」

J「俺は信じる…何度でもアナを見つて…惚れさせる…」

俺は流れ落ちる涙をパーカーの袖で拭き、スマホをテーブルに置いて心に決めた。

何度でもアナを探して見つけてやる。

アナがどこにいようが俺から隠れようが俺が見つけて俺に惚れさせる。

俺を忘れるなんて絶対許さない。

俺はそうでも思わないと息をする事さえ忘れそうで…自分で自分を奮い立たせた。

その時ふと頭によぎったのはトウヤくんだった。

俺がトウヤくんに電話をしようとしたら部屋のインターホンが鳴った。

俺が慌ててモニターを見るとそこにはトウヤくんが俯いて立っていた。

俺はオートロックをあけ、部屋に来たトウヤくんをリビングへと案内した。

J「トウヤくん…」

T「アナがいなくなっちゃった。俺さ信じられなくてもう一回家に行ってた…けど…やっぱいなくて…。どうすればいいか分かんなくて…ジョウキのとこに来たんだ…。」

トウヤくんの瞳には涙が今にもこぼれ落ちそうなほど揺らいでいて、自分も同じ状況なのに弱々しいトウヤくんの姿を見て胸が痛む。

J「何やってんすか…。」

俺はトウヤくんが座るソファに少し間隔をあけて座った。

T「なんでジョウキはそんな平気なんだよ?アナがいなくなったんだぞ!?なんとも思わねぇのかよ!?アナのこと好きだったんじゃねぇのかよ!!」

トウヤくんは涙を零しながら力任せに俺の胸ぐらを掴んだ。

J「好きだったんじゃなくて好きだよ!今でも…これからもずっと…俺はアナが好きだよ…」

俺がそう言うとトウヤくんはゆっくりと手を下ろし…泣きじゃくった。

T「じゃなんでだよ…なんで…そんな…平気な顔していられるんだよ…。」

J「また会えるから。俺とアナが運命の相手ならまた絶対に巡り会うから…」

T「なんだよそれ…」

J「トウヤくんが俺に言ったんですよこの言葉。アナがそう決めたなら今の俺らにはどうすることもできないでしょ…だから、振られた者同士…今日はヤケ酒でも飲みません?」

俺はトウヤの肩をそっと叩き、冷蔵庫にあるビールを取りに行った。


つづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

凶器は透明な優しさ

恋愛
入社5年目の岩倉紗希は、新卒の女の子である姫野香代の教育担当に選ばれる。 初めての後輩に戸惑いつつも、姫野さんとは良好な先輩後輩の関係を築いていけている ・・・そう思っていたのは岩倉紗希だけであった。 姫野の思いは岩倉の思いとは全く異なり 2人の思いの違いが徐々に大きくなり・・・ そして心を殺された

隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される

永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】 「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。 しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――? 肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!

【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました

藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。 次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。

ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる

Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。 でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。 彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。

最後の恋って、なに?~Happy wedding?~

氷萌
恋愛
彼との未来を本気で考えていた――― ブライダルプランナーとして日々仕事に追われていた“棗 瑠歌”は、2年という年月を共に過ごしてきた相手“鷹松 凪”から、ある日突然フラれてしまう。 それは同棲の話が出ていた矢先だった。 凪が傍にいて当たり前の生活になっていた結果、結婚の機を完全に逃してしまい更に彼は、同じ職場の年下と付き合った事を知りショックと動揺が大きくなった。 ヤケ酒に1人酔い潰れていたところ、偶然居合わせた上司で支配人“桐葉李月”に介抱されるのだが。 実は彼、厄介な事に大の女嫌いで―― 元彼を忘れたいアラサー女と、女嫌いを克服したい35歳の拗らせ男が織りなす、恋か戦いの物語―――――――

粗暴で優しい幼馴染彼氏はおっとり系彼女を好きすぎる

春音優月
恋愛
おっとりふわふわ大学生の一色のどかは、中学生の時から付き合っている幼馴染彼氏の黒瀬逸希と同棲中。態度や口は荒っぽい逸希だけど、のどかへの愛は大きすぎるほど。 幸せいっぱいなはずなのに、逸希から一度も「好き」と言われてないことに気がついてしまって……? 幼馴染大学生の糖度高めなショートストーリー。 2024.03.06 イラスト:雪緒さま

恋とキスは背伸びして

葉月 まい
恋愛
結城 美怜(24歳)…身長160㎝、平社員 成瀬 隼斗(33歳)…身長182㎝、本部長 年齢差 9歳 身長差 22㎝ 役職 雲泥の差 この違い、恋愛には大きな壁? そして同期の卓の存在 異性の親友は成立する? 数々の壁を乗り越え、結ばれるまでの 二人の恋の物語

【完結】maybe 恋の予感~イジワル上司の甘いご褒美~

蓮美ちま
恋愛
会社のなんでも屋さん。それが私の仕事。 なのに突然、企画部エースの補佐につくことになって……?! アイドル顔負けのルックス 庶務課 蜂谷あすか(24) × 社内人気NO.1のイケメンエリート 企画部エース 天野翔(31) 「会社のなんでも屋さんから、天野さん専属のなんでも屋さんってこと…?」 女子社員から妬まれるのは面倒。 イケメンには関わりたくないのに。 「お前は俺専属のなんでも屋だろ?」 イジワルで横柄な天野さんだけど、仕事は抜群に出来て人望もあって 人を思いやれる優しい人。 そんな彼に認められたいと思う反面、なかなか素直になれなくて…。 「私、…役に立ちました?」 それなら…もっと……。 「褒めて下さい」 もっともっと、彼に認められたい。 「もっと、褒めて下さ…っん!」 首の後ろを掬いあげられるように掴まれて 重ねた唇は煙草の匂いがした。 「なぁ。褒めて欲しい?」 それは甘いキスの誘惑…。

処理中です...