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98話

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ジョウキside

なんだかんだと一悶着あったけどアナの顔をみたらホッとした。

みんなに囲まれてまじまじと見られるアナは少し居心地が悪そうな顔をして肩をすくめている。

J「ホントにもう大丈夫なのか?」

俺の問いかけに柔らかく微笑みゆっくりと頷くアナ。

J「あのさ…記憶は…?俺が誰だか分かる?」

A「分かるよ!今をときめく世界のスーパースター橘ジョウキでしょ。」

J「うん。大正解だな!じゃ、何か思い出したことは?」

その問いかけに一瞬、アナの顔が引きつったがすぐにいつも笑顔に戻った。

A「う…ん。何も思い出してない今まで通りだよ?でもね?もう私はいいの。私はアナでこれからもずっとアナ…過去より未来を見て生きていきたいの…だから…もう過去のことは聞かないで?お願い…」

アナのその言葉が俺の心臓の奥深くをえぐっていくような感覚に襲われた。

みんなは黙って聞いてくれていたけど…どうか…今の俺の気持ちには気づかないでほしい。

Y「ってかさ…ジョウキめちゃくちゃ酒臭いんだけど!?」

ユナは暗くなったアナの顔を見てそう言いながらわざとらしく手を左右に振って扇ぐ。

J「なんで俺だけなんだよ!?」

Y「ジョウキが喋る度に酒の臭いがして部屋中が酒臭い!!」

そう言いながらユナは大袈裟に鼻をつまんで俺を挑発するような顔をする。

A「あはは~!!ユナの話聞いて急に口をぎゅっと閉じたトウヤも仲間じゃない?」

アナはそう言ってトウヤくんを指差して笑いハヤセくんとマハロくんも一緒に笑っていた。

J「ホント失礼だな!!ってかアナいつ退院できそうなの?」

A「うん?明後日!」

T「マジで!?退院祝いしなきゃ!」

M「いつもの店で退院祝いだね?」

H「よっし!ハヤセくんがおごってあげる!だから、アナはゆっくり休んで早く元気になるんだよ?分かった?」

A「う、うん!ありがとう!なんかちょっと疲れちゃったから少し休むね…」

アナはそう言いながらベッドに横になった。

M「そうだよね?ごめんね大勢で押しかけて…じゃ、今日はもう帰ろう?」

Y「みんなありがとうね?私はもう少しアナのそばにいるから…」

A「ごめんね…ありがとう…」

J「またな?」

俺はアナの頭を優しく撫でながら言った。

A「う…うん…」

すると、アナの目にはなぜか涙がじわりと滲み、すぐ俺から目をそらしてベッドに潜り込んだ。

そんな様子のアナに俺とトウヤくんは不思議に思い目を合わせたがそのまま病室を出た。


つづく
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