二人の王子様はどっちが私の王様？

89話

ジョウキside

次の日、俺は仕事に行く前にマネージャーにお願いをしてアナの入院する病院を訪れた。

アナの病室の扉をノックすると女性の返事が聞こえ、俺はゆっくりと扉を開けて中に入る。

すると、中にはどことなくアナに似たおばさんがアナの横に座っていた。

J「あ…えっと…初めまして橘ジョウキと申します…アナさんとは…仲良くさせてもらっていて…」

母「初めまして…アナの母です。」

そう言って優しく微笑んだ顔がアナによく似ていた。

J「アナさん…まだ意識が戻らないんですね…」

俺がベッドで眠るアナを見つめながら言うとお母さんは無言のまま軽く頷いた。

J「今回の事故は…僕たちのMV撮影現場で起きてしまった事故です…こんなことになってしまい…本当に申し訳ございません…」

俺がお母様に向かって頭を下げると、お母様はそっと俺の腕に手を添え首を横に振った。

母「起こってしまったことを責めるつもりはありません…でも…この子が目覚めた時…もしかしたら…アナじゃなくなってるかもしれません…それでも…仲良くしてやってくださいますか…？」

お母様の目には涙が揺れ、太陽の光に照らされてキラキラと光って見える。

J「それって…どういう意味ですか？あの…実は…アナさんから昔、交通事故に遭い記憶喪失になったと聞いたんですが…もしかして意識が戻らないのはそれと関係しているんですか？」

俺がそう話すとお母様の目は大きく見開き、その反動で涙がポロリと落ちた。

母「この子…ジョウキさんに記憶喪失の事話してたんですね…今まで必要な時以外はその話しを誰にもしなかったのに…」

J「話の流れで…」

母「そうですか…お医者様が言うには関係あるだろと…」

J「そんなひどい事故だったんですか…？」

母「実はねアナが15歳の頃…この子…自ら道路に飛び出したの…」

俺はお母様のそ言葉を聞いて固まり、お母様は震えた声でゆっくりと話し始めた。

母「私たちはその事故を聞いた時…自ら命を絶とうとしたんだと思ってたの。でも…あとで同じ学校の子達が赤信号で道路を渡れたら友達になってあげるって言ったと関係してた子が白状してね。この子…バカみたいにそんな話を信じたんですよ…」

J「そんな…」

母「アナはいつも私たちに心配かけないように楽しそうに学校に行ってたの。本当は学校でイジメにあってたのに…後で考えてみればアナが楽しそうに学校の話をしたことなんて1度もなかった。でもね？一度だけ…隣にある中学校の年下の男の子と友達になったって自分から嬉しそうに話してきた事があったの。確かアナより2歳下で彼のことジョジョって呼んでて…もしかしたらその子はアナの初恋だったのかもしれないわね。」

お母様のその話を聞いて俺はさらに固まった。


つづく