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58話
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アナside
私は自分のマンションに戻り、MV撮影で使う衣装をハンガーにかけ、眠れそうになかったのでバスタブにお湯を張り、しばらく半身浴をして体内のお酒を汗として全て出しきった。
そうしているうちに朝日が昇り始め、私は結局あれから一睡もせずに会社へと向かった。
デスクについてすぐ、二日酔い全開のユナが出社してきた。
Y「おはよ。気持ち悪い。」
A「おはよ。そりゃあんなに飲むから。」
Y「あれだけ飲んで二日酔にならいとかアナの肝臓はどうなってんの!?」
ユナが青ざめた顔で私の顔を覗き込んだ。
A「あぁ~眠れなくて半身浴したらお酒が抜けた!ってか、あのMVの衣装あるじゃん?もちろん、作るの手伝ってくれますよね?」
私がユナと肩を組み耳元でボソボソっとそうつぶやくと、ユナは手に持っている栄養ドリンクのフタを勢いよくバキバキっと開けた。
Y「アナ先生!当たり前でございます!!先生のためなら喜んでお手伝いさせていただきます。」
ユナそう言いながら栄養ドリンクを一気にグビッと飲み干す。
A「さぁ!今日も1日気合入れて頑張りましょう!」
私のその声と同時に社員達の手が素早く動き始める。
このブランドを立ち上げて約3年。
そこそこ私たちのブランドも世間に知られるようになってきた。
私がこの立場でこの職につけているのは間違いなくパパのおかげだが、親の七光りと馬鹿にされ続けて何度も挫けそうになった。
しかし、いつかそんな事を言った人たちを見返してやりたい。
自分の実力をもっと身につけて一流デザイナーになりたい。
私は今日もそう思いながら色んなアイディアを出してはデザインに起こしていく。
ジョウキのように筋肉質な人には…うん…こんな感じがいい!
トウヤのように足が長い人には…これで間違いない!
って…結局、私の頭の中から消えるはずだったジョウキはそのままずっと居座り、さらにそこにはトウヤという存在が追加された。
これ1番ダメなやつ。
ってかあのトウヤの告白の返事…どうしよ…。
デザインを考えようにも頭の中はジョウキとトウヤの顔がグルグルと回って仕事が手に付かない。
そんな私を横目にユナがため息をついて近づいた。
Y「アナ?あなた一応、ここのボスなんだからしっかりしなよ?この頭の中が恋でいっぱいで仕事が手に付きませ~ん!ってなってたらここの社員達は誰について行けばいいの?」
ユナはそう言って私の背中を思いっきりバシっと叩きコーヒーをそっとデスクに置いた。
A「ごめん!」
私はそのコーヒーを飲み気合いを入れ直し仕事に取り掛かった。
定時になり社員達が私に挨拶をして会社を後にする。
その時、ユナが私の顔を覗き込んだ。
Y「今日も行っちゃう?」
ユナが手でグラスを傾ける仕草をして私に微笑む。
ユナはとても綺麗な顔をしているのに中身が完全におやじだ。
しかし、今日はそんな気分にはなれず今日は1人で色々と考えたい。
A「ごめん!今日はやめとく…」
私の返答にユナは眉を下げて残念そうな顔をして肩を落とす。
Y「残念~じゃ、途中まで一緒に帰ろう?」
A「うん。帰ろう!」
私とユナはバッグを持ち会社を出る。
電車に乗り最寄り駅で私たちは降りた。
A「ユナ?私、コンビニに寄るからこっちに行くね?」
Y「オッケー!じゃ、また明日ね~!」
そう言って私たちは手を振り別れた。
いつもの行き慣れたコンビニに寄りミネラルウォーターを手に取る。
綺麗に並べられたスイーツを品定めして…あっ!今日は大好物のこれにしよう。
そう思った私が残り1つのシュークリームを手に取ろうとすると、男性の大きな手が私のシュークリームを横取りした。
A「あっ!」
思わず大きな声が出てたがそんな事は気にならず、手の行方を目で追いかけるとそこにいたのはなんと、帽子を目深に被ったジョウキだった。
J「これはデブの素だぞ。」
A「要らないなら返して!」
驚いた私が咄嗟にジョウキの手にあるシュークリームを奪おうとすると、ジョウキはそれをヒョイと交わす。
J「返してってこれはまだアナのじゃないだろ?」
A「そう…だけど!もういい。さよなら。」
私は早々にスイーツを諦め、ミネラルウォーターを持ってレジに向かい店員に差し出す。
すると後ろからジョウキがやってきてシュークリームとコーヒーを店員に渡した。
J「これも一緒に。」
店員「はい。」
店員はダルそうにレジを淡々と進める…はぁ?
なんで会計一緒にしてんの?
そう思った私が隣にいるジョウキを睨む。
店員「545円になります」
店員のその声を聞いて、ジョウキに呆れた私が仕方なくバッグから財布を取り出そうとすると横からジョウキがブラックカードを差し出した。
J「これで。」
ジョウキはそのままパスワードを入力するとそのままビニール袋を持ちコンビニを出ていく。
私もその背中を追いかけコンビニを出ると、前を歩いていたジョウキが突然クルッと振り返った。
J「じゃ、行くぞ。こっち。」
ジョウキはそう言って私の手を取り当たり前のように恋人繋ぎをする。
へぇ!?なに!?これ!?
そんなの聞いてませんけど!!
戸惑う私はテンパり、うまく言葉にならない。
A「え!あ!ちょっと!」
J「声がでかいんだよ!誰かにバレたら責任とれんの?」
そう言ってジョウキに流し目で睨まれた私は渋々ジョウキにおとなしく付いて行くしか方法が思いつかなかった。
月明かりに照らされた夜道をトボトボと歩く…
ジョウキと手を繋いで。
これどういう状況!?
私の頭の中にはもうこの言葉しか思い浮かばない。
あの世界的アイドルのジョウキと手を繋いでるんですよ!?何がどうなってこうなるの!?
そう戸惑っているとジョウキは手慣れた手つきで高級マンションのオートロックを解除し、当たり前のような顔をして私の手を引いたままマンションの中に入ろうとする。
A「え?いや、これはダメでしょ!?」
J「早くしろ!後ろに記者がいる!」
ジョウキが焦ったように私の耳元で眉間にシワを寄せながらそう言い、驚いた私はジョウキに言われるまま慌ててマンションの中に入った。
つづく
私は自分のマンションに戻り、MV撮影で使う衣装をハンガーにかけ、眠れそうになかったのでバスタブにお湯を張り、しばらく半身浴をして体内のお酒を汗として全て出しきった。
そうしているうちに朝日が昇り始め、私は結局あれから一睡もせずに会社へと向かった。
デスクについてすぐ、二日酔い全開のユナが出社してきた。
Y「おはよ。気持ち悪い。」
A「おはよ。そりゃあんなに飲むから。」
Y「あれだけ飲んで二日酔にならいとかアナの肝臓はどうなってんの!?」
ユナが青ざめた顔で私の顔を覗き込んだ。
A「あぁ~眠れなくて半身浴したらお酒が抜けた!ってか、あのMVの衣装あるじゃん?もちろん、作るの手伝ってくれますよね?」
私がユナと肩を組み耳元でボソボソっとそうつぶやくと、ユナは手に持っている栄養ドリンクのフタを勢いよくバキバキっと開けた。
Y「アナ先生!当たり前でございます!!先生のためなら喜んでお手伝いさせていただきます。」
ユナそう言いながら栄養ドリンクを一気にグビッと飲み干す。
A「さぁ!今日も1日気合入れて頑張りましょう!」
私のその声と同時に社員達の手が素早く動き始める。
このブランドを立ち上げて約3年。
そこそこ私たちのブランドも世間に知られるようになってきた。
私がこの立場でこの職につけているのは間違いなくパパのおかげだが、親の七光りと馬鹿にされ続けて何度も挫けそうになった。
しかし、いつかそんな事を言った人たちを見返してやりたい。
自分の実力をもっと身につけて一流デザイナーになりたい。
私は今日もそう思いながら色んなアイディアを出してはデザインに起こしていく。
ジョウキのように筋肉質な人には…うん…こんな感じがいい!
トウヤのように足が長い人には…これで間違いない!
って…結局、私の頭の中から消えるはずだったジョウキはそのままずっと居座り、さらにそこにはトウヤという存在が追加された。
これ1番ダメなやつ。
ってかあのトウヤの告白の返事…どうしよ…。
デザインを考えようにも頭の中はジョウキとトウヤの顔がグルグルと回って仕事が手に付かない。
そんな私を横目にユナがため息をついて近づいた。
Y「アナ?あなた一応、ここのボスなんだからしっかりしなよ?この頭の中が恋でいっぱいで仕事が手に付きませ~ん!ってなってたらここの社員達は誰について行けばいいの?」
ユナはそう言って私の背中を思いっきりバシっと叩きコーヒーをそっとデスクに置いた。
A「ごめん!」
私はそのコーヒーを飲み気合いを入れ直し仕事に取り掛かった。
定時になり社員達が私に挨拶をして会社を後にする。
その時、ユナが私の顔を覗き込んだ。
Y「今日も行っちゃう?」
ユナが手でグラスを傾ける仕草をして私に微笑む。
ユナはとても綺麗な顔をしているのに中身が完全におやじだ。
しかし、今日はそんな気分にはなれず今日は1人で色々と考えたい。
A「ごめん!今日はやめとく…」
私の返答にユナは眉を下げて残念そうな顔をして肩を落とす。
Y「残念~じゃ、途中まで一緒に帰ろう?」
A「うん。帰ろう!」
私とユナはバッグを持ち会社を出る。
電車に乗り最寄り駅で私たちは降りた。
A「ユナ?私、コンビニに寄るからこっちに行くね?」
Y「オッケー!じゃ、また明日ね~!」
そう言って私たちは手を振り別れた。
いつもの行き慣れたコンビニに寄りミネラルウォーターを手に取る。
綺麗に並べられたスイーツを品定めして…あっ!今日は大好物のこれにしよう。
そう思った私が残り1つのシュークリームを手に取ろうとすると、男性の大きな手が私のシュークリームを横取りした。
A「あっ!」
思わず大きな声が出てたがそんな事は気にならず、手の行方を目で追いかけるとそこにいたのはなんと、帽子を目深に被ったジョウキだった。
J「これはデブの素だぞ。」
A「要らないなら返して!」
驚いた私が咄嗟にジョウキの手にあるシュークリームを奪おうとすると、ジョウキはそれをヒョイと交わす。
J「返してってこれはまだアナのじゃないだろ?」
A「そう…だけど!もういい。さよなら。」
私は早々にスイーツを諦め、ミネラルウォーターを持ってレジに向かい店員に差し出す。
すると後ろからジョウキがやってきてシュークリームとコーヒーを店員に渡した。
J「これも一緒に。」
店員「はい。」
店員はダルそうにレジを淡々と進める…はぁ?
なんで会計一緒にしてんの?
そう思った私が隣にいるジョウキを睨む。
店員「545円になります」
店員のその声を聞いて、ジョウキに呆れた私が仕方なくバッグから財布を取り出そうとすると横からジョウキがブラックカードを差し出した。
J「これで。」
ジョウキはそのままパスワードを入力するとそのままビニール袋を持ちコンビニを出ていく。
私もその背中を追いかけコンビニを出ると、前を歩いていたジョウキが突然クルッと振り返った。
J「じゃ、行くぞ。こっち。」
ジョウキはそう言って私の手を取り当たり前のように恋人繋ぎをする。
へぇ!?なに!?これ!?
そんなの聞いてませんけど!!
戸惑う私はテンパり、うまく言葉にならない。
A「え!あ!ちょっと!」
J「声がでかいんだよ!誰かにバレたら責任とれんの?」
そう言ってジョウキに流し目で睨まれた私は渋々ジョウキにおとなしく付いて行くしか方法が思いつかなかった。
月明かりに照らされた夜道をトボトボと歩く…
ジョウキと手を繋いで。
これどういう状況!?
私の頭の中にはもうこの言葉しか思い浮かばない。
あの世界的アイドルのジョウキと手を繋いでるんですよ!?何がどうなってこうなるの!?
そう戸惑っているとジョウキは手慣れた手つきで高級マンションのオートロックを解除し、当たり前のような顔をして私の手を引いたままマンションの中に入ろうとする。
A「え?いや、これはダメでしょ!?」
J「早くしろ!後ろに記者がいる!」
ジョウキが焦ったように私の耳元で眉間にシワを寄せながらそう言い、驚いた私はジョウキに言われるまま慌ててマンションの中に入った。
つづく
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