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36話

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トウヤside

本当は薄々気づいてた。

やっぱりジョウキが提案したのはあの2人。

確かにこのMVのイメージに2人はピッタリとハマる。

そんな事、俺だってプロだから分かってる…

だけど…

正直、俺は出来るだけジョウキとアナの接点を作るのが嫌だった。

ましてや、アナとユナは素人だしMVに出るなんて嫌がるはず。

だから反対した…

けどいざ、レンくんに具体的な反対理由を聞かれたら頭に思い浮かぶのは自分本位な言葉ばっかで…

プロとして2人を反対する理由が俺には見つからなかった。

そして、なんとか強がって俺の口から出たのはとても子供染みた言葉だった。

T「分かったよ。でも、アナには俺から話す。」

そんな幼稚な言葉を残して俺は部屋を出た…

そして微かに扉越しにメンバーの声が聞こえてきた。

N「もぉ~なになに~?やっぱりトウヤってアナちゃんにほの字なの?」 

ノイくん相変わらずな冷やかしの声にやっぱ俺って分かりやすいのかな…?と頭を抱える。

J「さぁ?まぁ、でもアナは俺にまだ夢中ですからね!」

アナがジョウキに夢中か…

俺はジョウキの言葉を聞いて思わず声が出そうになるのをグッと堪えて足早にその場から離れた。

全身の血の気が引いて頭がクラクラするのに心臓だけは激しく動き、何度もジョウキの言った言葉が頭の中でこだまする。

俺は人影の少ない非常階段へと行き新鮮な空気を肺にいっぱい吸い込んで吐き出した。

すると、酸欠になっていた脳が喜んでいるかのように思考回路が再開していくのが分かった。

アナがジョウキのファンだって事は出会ったときから知っていた事なのに、アナとの繋がりが増えていくにつれて俺は勝手にアナと上手くいってると舞い上がっていた。

それは自分本位な思い込みでそう思っていたのは俺だけだったのかしもしれない。

あのライブが終わったらアナはジョウキのファンをやめるなんて言ってたけど…

そりゃそうだよな…

簡単にファンじゃなくなる訳がない。

おまけに2人で会っていたのなら尚更…

もっと好きになるに決まってんじゃん。

分かっていたはずなのに結局は何も分かっていなかった。

俺は一体、何に期待していたんだろ…?

俺はアミ電話番号の表示を眺めながらも…

なかなか、通話ボタンを押せずにいた。

やだよ…どんなに女々しいって思われてもいい…

やっぱりアナがジョウキに夢中になるとこなんて…

俺は見たくないんだよ…

俺は綺麗すぎる青空を目を細めながら眺め、ひとつため息を残してゆっくりと会議室へと戻った。


つづく
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