回り道した1つの愛

樺純

文字の大きさ
上 下
9 / 10

9話

しおりを挟む
テルキside

玄関を出るとジュンはエレベーターに乗り込もうとしていたので、思わず俺はジュンの腕を掴んで止めた。


ゆっくりと振り返ったジュンの顔は涙でぐちゃぐちゃで微かに震えていた。


T「ジュンの想いに応えてやれなくてごめんな…」

J「わざわざそんな事言いに追いかけて来たのかよ。」

T「好きになってくれて…ありがとう…」

J「だから!!わざわざそんなこ………」


俺はジュンの言葉を遮るように涙で濡れたジュンの頬を両手で包み込み、そっと触れる程度のキスをジュンの唇に落とした。


T「ごめんな…今度会う時は…笑って会おう…俺たち…」

J「最後まで…思わせぶりな奴…なんで嫌いにならせてくれねぇんだよ…」

T「ごめん… ジュンは俺の大切な親友だから…」


ジュンは俺の腕を振り払うようにエレベーターに乗り込み帰って行った。


俺は1人になった廊下でひとり立ち尽くした。


高校から仲が良くなった俺とジュン。


本当に気の合う親友ができた…そう俺は素直に思っていた。


しかし、俺に対するジュンの気持ちが親友ではないと気づいたのは大学3年生の頃だった。


いつものようにエマとジュンの3人で朝までカラオケに行き、途中で俺とエマは眠ってしまった。


そろそろ起きなきゃ…夢と現実の狭間を行ったり来たりしていた俺が起きようとしたその時…


突然、唇に柔らかく温かい体温を感じ、一瞬、エマが俺にキスをしてきたのかと思った。


でも、エマではないと気づいたのは微かにジュンの香水の香りがしたから。


ゆっくりと俺の唇は解放され、部屋から出て行くのが分かり恐る恐る目を開けると、やはりそこには寝息を立てて眠るエマの姿がり、ジュンの姿はそこにはなく俺にキスをしてきたのはジュンだというのがわかった。


俺はずっと親友だと思っていたのに…ジュンは違った…


俺は動揺したが、自分の気持ちを悟られないよういつも通りに過ごした。


大学4年になり、卒業間近になったある日


俺はユマに呼び出された。


エマと同じ顔をして全く雰囲気の違うユマが俺は少し苦手で怖かった。


しかし、なぜユマに呼び出されてノコノコと行ったと言うとユマに「テルキがエマのこと好きってことバラしちゃうよ?」っと言われたから。


俺は絶対にそれだけは嫌だった。


卒業したらきちんと俺の口から告白するつもりだったから。


なのにユマは俺の顔を見たかと思ったら話があると言っていたくせに、特に話をすることなく俺にキスをしてきた。


意味が分からず突き飛ばすと、ユマは笑いながら行った。


Y「エマはジュンのことが好きなんだよ?テルキが邪魔者なのに気づかないの?エマのためにも離れてあげたら?」


そう言われた。


そう話すユマの目が恐ろしくて後退りするように振り返るとそこにはエマが言って、エマは走って逃げて行った。


慌てて追いかけたがエマに言う言葉が見つからなくて…


次の日


気づいたらエマとジュンは付き合っていた。


俺にエマと付き合ったと幸せそうな顔で報告してくれたジュンを見て俺は思った。


俺にキスをしたのは一瞬の気の迷いだったんだと。


こんなにもジュンが幸せそうでエマも大好きなジュンと付き合えたなら俺はそれでいいと。


だから、エマへの恋心に蓋をするように俺は2人から距離を置いた。


なのに、俺の心の中にはずっとエマが居座り続け、忘れようとすればするほどエマの存在が大きくなった。


大学を卒業し、社会人生活に疲れ果て街をふらついていた時、俺はエマと再会してしまった。


会いたくて仕方なかった。


その存在を見つめるだけで胸が震え…足を止めることは出来なかった。


男に絡まれていたエマを助け、そのままエマを家まで送り届けた俺。


下心しかないのに冗談で交わしたのはエマが親友の恋人だから。


でも…だけど…


俺を誘うようなエマの言葉にもう…我慢の限界だった。


エマはジュンと付き合って幸せじゃない?


ジュンはまだ…エマを抱いてないのか?


そう思ったらもう、止められなくて俺はエマとセフレになる事を選んだ。


なのに、まさかジュンは俺への憎しみにも似た愛で俺とエマを引き裂くためにエマも付き合っていたなんて…


そう思ったら俺は情けなくて胸が張り裂けそうだった。


微かに滲んだ涙を拭い、俺はエマの部屋に戻るとエマはひとりソファの上で膝を抱いて泣いていた。


T「…おいで…」


俺がそう言うとまるで子猫のように俺の胸に擦り寄ってくるエマ。


T「最悪の誕生日になっちゃったね……」


俺がエマの頭をなでながら言うと、エマは涙を拭きながら首を左右に振った。


俺はエマの頬に手を添わせて親指でその涙のあとを拭った。


*「テルキ……」

T「俺エマのこと…抱きたい…ダメかな?」


エマは一瞬、目を大きく見開いたかと思うと俺の服をギュッと握りしめ涙ながらに言った。


*「ダメな訳ないじゃんか…大好きだよ…ずっと今まで傷つけてごめん…」


ずっとエマの口から聞きたかった言葉を今、なんの後ろめたさも罪悪感もなく聞けた俺は桜色に染まったエマの唇を塞いだ。


幾度となくエマの唇と重なり合ってきたはずなのに、エマの腰に回す俺の手は微かに震えていて涙がじわりと滲む。


チュッ…チュッ…と音がなるたびに背筋がゾクゾクとし全身が震えだした。


*「テルキ…?大丈夫…?震えてる……」


それはエマにも伝わるほどで、エマは心配そうに俺を見つめた。


T「愛してる…俺はずっと前からエマを愛してた…」


そう言葉にすれば涙は溢れ出し、エマの目にも涙が滲んだ。


*「私も…愛してるよ…」


エマは俺の首に手を巻き付けギュッと俺を強く抱きしめ、俺はエマの首筋に顔を埋めそっと唇を押し当てると初めて俺はエマの身体に自分の紅いシルシを付けた。



つづく
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

美醜逆転した異世界で、絆されてハーレム作ることになりました

SHIRO
BL
ーー実は俺、異世界に行った事があるんだ。 酒の席で同期の山田に打ち明けられた異世界話。 まさか俺がその異世界に行くなんて!山田の話もっと真剣に聞いとけば良かった! しかもこの世界、美醜の感覚が地球とはちょっと違うみたい。 え、この世界男しかいないの?え、俺ハーレム作んの? 醜いと言われるイケメン達が大きな犬に見えてきて、なんかもうほっとけない。 そんな、健気な犬…じゃなかった、俺にとってはイケメンな男達に絆されまくる俺の話。 ・更新不定期です。 ・基本的にヤマなしタニなし、ほのぼのです。 ・R18には※マークつけます。苦手な方は飛ばして読んでいただければ幸いです。 ・男性妊娠表現が含まれます。苦手な方はご注意くださいませ。 ・すぐ行き詰まって心折れます。お気に入りやいいねや感想にとても救われています。ありがとうございます。

今、私は幸せなの。ほっといて

青葉めいこ
ファンタジー
王族特有の色彩を持たない無能な王子をサポートするために婚約した公爵令嬢の私。初対面から王子に悪態を吐かれていたので、いつか必ず婚約を破談にすると決意していた。 卒業式のパーティーで、ある告白(告発?)をし、望み通り婚約は破談となり修道女になった。 そんな私の元に、元婚約者やら弟やらが訪ねてくる。 「今、私は幸せなの。ほっといて」 小説家になろうにも投稿しています。

ぷろせす!

おくむらなをし
現代文学
◇この小説は「process(0)」の続編です。 下村ミイナは高校2年生。 所属する文芸部は、実はゲーム作りしかしていない。 これは、ミイナと愉快な仲間たちがゲーム作りに無駄な時間を費やす学園コメディ。 ◇この小説はフィクションです。全22話、完結済み。

オルゴールを鳴らして

みちまさ
ライト文芸
妻からよっちゃん、と呼ばれる男は、夜のバーで適当に女の人と遊んで過ごしていた。 ある日知り合ったマリアという女はその枠には入らない、音楽の話ができる友達―― 手を出さなかったのは、友達なら別れなくていいから。 出逢って十二年後、もう十年近く音沙汰の無かったマリアから連絡が来た……。

私なりの愛し方

壱婁
恋愛
28歳一児の母。旦那とのセックスレスは3年。このままだと結婚も出産も後悔してしまう気がする…… そんなのは嫌だ!!と導き出した打開策は……

運命は、すれちがったままじゃいられない

やなぎ怜
恋愛
果南(かなん)はごくごく普通の女子大生。当然、第二性もβ。だけど彼氏の千春(ちはる)はだれもが認めるαで、常々釣り合っていないと陰口を叩かれていた。そんな千春はよく果南のうなじを噛む。βである果南のうなじを噛んでも、意味はないのに。果南はαとΩの運命的な関係にあこがれる一方、千春との別れを予感しながら恐れて、しかしどこかあきらめられていると自分では思っていた。しかしいざ千春に「運命」のお相手が現れたとき、果南の体に異変が起きて――。 ※異性間(男女)オメガバース。

幼馴染から離れたい。

じゅーん
BL
アルファの朔に俺はとってただの幼馴染であって、それ以上もそれ以下でもない。 だけどベータの俺にとって朔は幼馴染で、それ以上に大切な存在だと、そう気づいてしまったんだ。 βの谷口優希がある日Ωになってしまった。幼馴染でいられないとそう思った優希は幼馴染のα、伊賀崎朔から離れようとする。 誤字脱字あるかも。 最後らへんグダグダ。下手だ。 ちんぷんかんぷんかも。 パッと思いつき設定でさっと書いたから・・・ すいません。

よくある婚約破棄なので

おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。 その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。 言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。 「よくある婚約破棄なので」 ・すれ違う二人をめぐる短い話 ・前編は各自の証言になります ・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド ・全25話完結

処理中です...