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29話

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カイルサイド


purple社の一件が落ち着き、俺はテオンくんのおじい様の会社に入社することが正式に決まり、テオンくんも会社に入る事が決まった。


そして今日はじめて、俺はテオンくんのお家にお泊まりに行き、明日は俺たちが子供の頃に出会ったあの思い出の公園へ一緒に行く約束をしている。


想いが通じ合ったあの日からテオンくんは俺のお家にお泊まり込みでpurple社のことを一緒に調べていたが、purple社の一件が落ち着いて以来、一切我が家には寄り付いていない。


そう、その理由はもちろん。


T「やだ。俺にそっくりなアンドロイドとの思い出が詰まったカイルの家になんて行きたくない。あの時は会社の事があったから仕方なくカイルの家にいただけ。なんで俺がカイルの恋人になったのにアンドロイドの想い出の場所に行かないといけないの!?カイルが引っ越せば!?」


という事で我が家に来なくなってしまったテオンくん。


引越しの契約がまだ残っている俺は引っ越す訳にも行かず、もっぱらデートはお外でのデートのみ。


そのため、テオンくんと先へ進みたいというのにお外で出来る範囲と言えばそりゃ、チュッチュくらいで。


そりゃ、チュッチュしながらテオンくんのお尻触ったりはしたけど、それとなくテオンくんにその手を払われた。


いや、付き合ったんだしそれ以上のことをしたいと思うのは好きなんだから普通じゃない!?


ということで、俺はありったけの勇気を振り絞ってテオンくんの家に行きたいとわがままを言った。


はじめはまだ、付き合ったばかりだからお家には入れたくない!なんて固いこと言ってたけど…


ソウスケさんが「テオン?いくらお前がこの世で一番可愛いくてスーパーイケメンで泣く子も黙る男前だったとしても、そんなに値打ちこいてたら、カイルだってそこそこなんだし、他のやつに取られるぞ?」とナイスアシストなのかは分からないが、そう言ってくれたおかげでテオンくんは渋々オッケーし、俺は今、ウキウキで花屋で小さなブーケを買ってテオンくんのお家に向かっている。


スマホのマップ通りに向かった先には、大企業の跡継ぎが住みそうなイメージ通りの高級マンションがあり、俺は震える指でオートロックのインターホンを押した。


ピーンポーン


T「は~い。」

K「カイルです。」

T「ラーメン買ってきた?」

K「買ってきましたよ…山ほど。」

T「わーい!!」


そんな声と同時にインターホンは切れオートロックの扉が開き、手土産は大量のインスタントラーメンがいいと言ったテオンくんの願いを叶えるため、大きな袋を片手に俺はエレベーターを上がっていく。


すると、既に扉を開けて顔を覗かせているテオンくんがいた。


T「こっちこっち~」

K「すんごい高級マンションですね…」

T「まぁ一応、御曹司だからさ。」

K「お邪魔します。」


なんて言いながらテオンくんの背中について中に入ると、なんと広すぎるキッチンとリビングには沢山のコックさん達がいて、大きなテーブルには大量の綺麗な料理が並んでいた。


それに驚いた俺は思わずインスタントラーメンの入った袋を落とし、ここには不釣り合いな小さなブーケを背中に隠し立ちすくむ。


T「なにしてんの?」

K「いや…こんな事になってるとは思ってなくて…」

T「あぁ…俺はカイルとラーメン食べるからって何度も言ったんだけど、じいちゃんがまだ会社を助けてくれたお礼も出来ないからって言って二つ星レストランのシェフにお願いしたみたい。ごめん…言わなくて。サプライズ?」


俺はてっきり家でゆっくりとしながら過ごすもんだと思っていたから、今日に限ってスウェットという超ラフな服装をしてきてしまった。


それに気づいたのかテオンくんが微笑みながら俺の腕を掴んでリビングに引き入れると、その弾みで小さなブーケがテオンくんに見えてしまった。


T「うわぁ!お花買ってきてくれたんだ!?」

K「すいません…こんな見窄らしいの…」

T「何言ってんだよ!カイルがくれたのはなんでも嬉しいの!」


テオンくんはそう言って俺の花束を受け取ると、お手伝いさんにテーブルに飾るよう伝えた。


T「料理できたらみんな帰っていいからね。今日はカイルと2人っきりがいいの。」


テオンくんがそういうと、お手伝いさんとシェフ達は微笑みながら部屋を出る準備をし、頭を下げて部屋から出て行った。


そして、ようやく2人っきりになれた俺たちはテーブルを挟み少し照れ笑いをしながら座る。


T「ねぇ。」

K「はい。」

T「俺さお腹すいてないんだけど。あっちでゲームして遊びたい。」


綺麗な料理を目の前にしてテオンくんは何故かそんな事を言い始める。


確かに俺もいきなりお手伝いさんやシェフを見てしまい、一気に緊張したからかお腹はそんなに空いてはいない。


しかし、こんなにも美しい料理が目の前にあるのにそれを無駄にするなんて勿体無いと思った。


K「でも食べないとせっかくおじい様が用意してくださったのに。」


俺がそう言うとテオンくんはうーんと言って唇を尖らせる。


すると、そうだ!!と言ってキッチンから何かを取ってきた。


T「ラップしてゲーム終わってからあとで食べよう!!」


テオンくんはそう言うと次々に料理にラップをかけていき生ものは冷蔵庫へ入れていった。


そんなテオンくんに呆気に取られながら見つめていると、冷蔵庫に入れ終えたテオンくんは笑いながら俺の手を引きめちゃくちゃ大きなソファに俺を連れてって座らせる。


T「せっかくうちに来たならさ…カイルとこのゲームしたいんだもん。」


テオンくんには最近、ハマっているゲームがあり会えばその話ばかりだが、ゲームオタクな俺にしてみればその話は普通に楽しいし、いつか一緒にしてみたいなとは思っていた。


しかし、テオンくんはピタッっと俺の腕にしがみ付き、くっついたままゲームをしようとするもんだから俺はそんなテオンくんのあまりの可愛さで頭を抱えムラムラする。


確かに今まで夜の公園のベンチでもこうやって並んで座ると俺たちはこうやってイチャイチャしていた。


その行動は相変わらず同じだがここは誰もいないお家。


ゲームに集中しているテオンくんをよそに俺は全く集中出来ず、ゲームだけじゃ家に行きたいと言った意味がない…


そう思った俺は恐る恐るテオンくんの服の中に手を忍び込ませようとすると、テオンくんは「んっもう!ゲームに集中して!」と言って頬を膨らませ俺の手を離させる。


それなのに自分は俺にもたれかかり、自分の体をピッタリとくっ付けてきたり、俺の内股を撫でたりとそんなあべこべな態度を取るテオンくんの気持ちが分からなくて、俺はゲームオーバーになったタイミングでテオンくんに言った。


K「…勘弁してください…これでも我慢してるんですから…ゲームしながら誘ってんのか天然なのかどっちなんですか…?」


俺がそう言うとあからさまにプッと頬を膨らませ不満そうな顔をするテオンくん。


T「…分かってる……我慢…させちゃってごめんね…」


そう言ったテオンくんの言葉を聞いて俺はハッとさせられ俺の胸はザクッと痛みが走った。


つづく
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