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20 一応、一段落
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「と、兎に角……この話はもうお終いにしましょう。済まなかったね」
咳ばらいをしつつ、父はグレイヴさんに謝罪した。そんな父に、彼は申し訳なさげにもう一度頭を下げる。
「いえ、こちらが完全に悪いので……」
「もういいですよ。ロランも、それでいいですね?」
父に視線を向けられ、羞恥で顔を上げられない私は、その言葉に小さく頷いた。
うう……恥ずかしい……。両親の前で、あんなこと言っちゃうなんて……。
恥ずかしさを紛らわそうと、シチューを頬張る。未だ熱々のシチューを勢いよく口に放り込んだ所為で、軽く舌を火傷してしまった。痛い……。
その後は、特に問題もなく他愛もない会話をして食事を終えられた。自分だけが恥ずかしい思いをしたが、それでも、旅のことや村のこと、そうした話が出来て良かった。
食後、何故か父とグレイブさんは内緒の話があると言い、父の書斎に向かう。気になるが、後で聞くことはできるだろうか。
私が食器洗いをしている間に、母がグレイヴさんの布団を用意しに二階に向かった。空き部屋なんて用意できる時間があっただろうか? そんなことを思いつつ、食器を洗っていった。
「ロラン、お風呂先に入っちゃいなさい」
「うん」
食器を全て洗い終え、浴室に向かう。多くの村の宿に備え付けられたお風呂も気持ちがいいが、久方ぶりの我が家のお風呂は気兼ねなく使えて気分的に楽だ。ゆっくりと浸かり、疲れを癒す。
お風呂から出ると、丁度グレイヴさんと話を終えた父に声を掛けられた。椅子に腰掛け手招きする父に近付くと、テーブルの上には小さな錠剤の入った小瓶が置かれていた。
「ロラン、これをあなたに」
「これは?」
手に取り、中身を瓶越しに確認する。何の変哲もない錠剤のようだった。
「避妊薬です」
「……」
さらりと言われた言葉に、思わず一瞬硬直する。顔を真っ赤に染め「はあ!?」と大きな声を出してしまった。
「お父さん、何を考えてるんです!?」
「今後の為です」
父の声は、至って真面目だった。
「ロラン、聖女という役職柄、護衛が必ずいます。ですが、君はもう一人の女性です。万が一ということもありますから、持っていなさい」
「……わかりました」
父に従い、小瓶を寝着のポケットに仕舞う。こんなものを使う日は来ないとは思うが、父の心配を少しでも軽くすべく持っていよう。そう思った。
「ちなみに、十五歳ですからまだ結婚は出来ませんので、グレイブ君とそうした行為をする際は必ず服用するようにね」
突然の爆弾発言に、私は一瞬で顔が真っ赤に染まった。
「おおおお父さん!!」
丁度お風呂から出てきたグレイヴさんにも聞こえていたのか、彼も勢いよく咳き込みだしている。
なんてことを言い出すんだこの人は……!
そんな私達二人を見て、父は楽しそうに笑みを浮かべていたが、すぐさま真剣な表情に変わった。
「ロラン、人の気持というのは長くは待ってくれません。そこを忘れてはいけませんよ」
意味深な言葉に首を傾げつつ頷き、そして気付く。そっか。何時までも彼の気持ちが私に向いてくれているという確証はない。そう言っているのだろう。考えると、胸が痛んだ。
ランプを片手に部屋へ戻ると、まさかの自室にグレイヴさんの布団が敷かれていて驚く。
「もう、お母さんめ……」
「あー……、部屋の移動、頼むか?」
困り果てた顔をする彼に、私はベッドに乗り上げ、サイドチェストにランプを置きながら答える。
「他の部屋は物置になってます。この部屋くらいしか寝る場所はないですから、仕方ないです。狭いですが、我慢してくださいね」
「お、おう……」
頬を掻きつつ、グレイヴさんも布団に潜りだす。私も布団に潜り、タイミングを見計らい息を吹きかけランプの明かりを消した。
「あの、グレイヴさん」
互いに背を向け合い横になっている彼に、声を掛ける。今日は、中々眠れなさそうだ。
「ん、どうした」
「父とは、どんなことを話したんですか?」
少しの沈黙の後、彼は「悪い」と答えた。やはり、聞くことは難しいようだ。仕方ないとは思うが、残念だとも思ってしまう。
「逆にさ、俺からもお前さんに聞きたいたいことがあるんだが……」
緊張しているのか、声が震えていた。歯切れの悪い言い方に疑問を持ちつつ、「どうぞ」と答える。
「その、キスが嫌じゃなかったって、本当か?」
その言葉に、どきりと心臓が大きく脈打つ。一瞬で頬が紅潮し、鼓動が速くなった。
「それは、その……」
どうしよう。本人を前にして、うまく言葉に出来ない。
「やっぱり、あの場しのぎの言葉だったってことか?」
「そんなこと……っ」
ない、と言い掛け振り返ると、彼がすぐ側にいた。足音もなく近付かれていて驚いたが、今はそれ所じゃない。ベッドに手を乗せ、顔を近づけられる。
「そんなこと……なんだ?」
すぐ側で聞き返され、羞恥に顔を逸らす。
「そんなこと、ない、です……」
更に頬を赤く染めながら、囁くような声で答えた。熱い視線を注がれ、彼の顔を見ることが出来ない。益々顔を寄せられ、耳元に彼の吐息がかかった。
「なあ……キス、していいか?」
低くかすれた声に、背筋がゾクゾクする。目を見開き、彼の方を見やる。
熱の籠った瞳で見つめられ、断ることが出来ない。我慢できなくなり、小さく頷きゆっくりと目を閉じた。
唇同士が軽く触れ合い、重なる。角度を変えつつ、深くつながるように貪られた。呼吸するタイミングがよくわからないまま深く何度も何度も貪りつくされ、胸を軽く叩く。
「ぷはっ、んっ」
一度離れて息を吸い込むが、またすぐに塞がれた。それを何度も繰り返されると、ふわふわした心地になっていく。
もっとしたい。欲が湧いてきて、自分から彼の唇に触れてみた。
「グレイヴさん……?」
うす暗い部屋の中、動きの止まった彼に小首を傾げる。すると、突然両肩を掴まれる。
「くそッ、煽るなよ……っ」
何かを堪えるように言葉を吐き出し、がむしゃらに唇を奪われた。
「んっ、んぅっ、んっ」
咥内に舌が侵入し、蹂躙されていく。押し返そうにも、上顎や歯列の裏を丁寧に優しく撫でられ、ゾクゾクと甘い痺れが体中を駆け巡りうまく身動きができない。
「んんぅっ、ふぅ、んっ」
舌が絡み吸い上げられ、感じたことのない快感が押し寄せてくる。うまく息も吸えず、思考も視界も霞んでいく。
このまま、蕩けてしまいそうだ。
胸を再び叩くと、漸く、解放して貰えた。
「あ……はぁ……」
「わりぃ……抑え、きかなかった」
肩で呼吸する私とは違い、余裕そうなグレイヴさん。慣れているのかな……そう思うと、胸が締め付けられた。
「……グレイヴさん、狡いです」
「ロラン?」
訝し気な表情を浮かべる彼の首元に手を回し、引き寄せる。耳元に顔を寄せ、囁く。
「私は初めてなのに、余裕があって、狡いです」
すると彼の体が大きく跳ね、耳が真っ赤に染まった。そんな彼が可愛らしくて、彼の耳朶を食み、舐めるを繰り返す。
「ッ、ロ、ラン……ッ」
動揺する彼の声が堪らない。
「悪い……こっちからキスしたいなんて言ったけど、これ以上は理性が持たねえ」
獣のようなぎらついた目を向けられ、ドキドキする。
どうしよう……悩みが生じる。
このまま続けてと言うか、それとも、留まるべきか……。
そんなことを考えていると、グレイヴさんが離れていってしまった。
「トイレ、借りるわ」
そう言い残し、足早に部屋から出て行ってしまう。
「あ……」
声を掛けようとしたが、もう遅かった。
あのまま流れに身を任せていたら、どうなっていただろうか。
もしもを想像し、唇に触れる。今もまだ、ドキドキしている。
ベッドの中で悶えた。ああ、恥ずかしい……なんてはしたないんだろう。
咳ばらいをしつつ、父はグレイヴさんに謝罪した。そんな父に、彼は申し訳なさげにもう一度頭を下げる。
「いえ、こちらが完全に悪いので……」
「もういいですよ。ロランも、それでいいですね?」
父に視線を向けられ、羞恥で顔を上げられない私は、その言葉に小さく頷いた。
うう……恥ずかしい……。両親の前で、あんなこと言っちゃうなんて……。
恥ずかしさを紛らわそうと、シチューを頬張る。未だ熱々のシチューを勢いよく口に放り込んだ所為で、軽く舌を火傷してしまった。痛い……。
その後は、特に問題もなく他愛もない会話をして食事を終えられた。自分だけが恥ずかしい思いをしたが、それでも、旅のことや村のこと、そうした話が出来て良かった。
食後、何故か父とグレイブさんは内緒の話があると言い、父の書斎に向かう。気になるが、後で聞くことはできるだろうか。
私が食器洗いをしている間に、母がグレイヴさんの布団を用意しに二階に向かった。空き部屋なんて用意できる時間があっただろうか? そんなことを思いつつ、食器を洗っていった。
「ロラン、お風呂先に入っちゃいなさい」
「うん」
食器を全て洗い終え、浴室に向かう。多くの村の宿に備え付けられたお風呂も気持ちがいいが、久方ぶりの我が家のお風呂は気兼ねなく使えて気分的に楽だ。ゆっくりと浸かり、疲れを癒す。
お風呂から出ると、丁度グレイヴさんと話を終えた父に声を掛けられた。椅子に腰掛け手招きする父に近付くと、テーブルの上には小さな錠剤の入った小瓶が置かれていた。
「ロラン、これをあなたに」
「これは?」
手に取り、中身を瓶越しに確認する。何の変哲もない錠剤のようだった。
「避妊薬です」
「……」
さらりと言われた言葉に、思わず一瞬硬直する。顔を真っ赤に染め「はあ!?」と大きな声を出してしまった。
「お父さん、何を考えてるんです!?」
「今後の為です」
父の声は、至って真面目だった。
「ロラン、聖女という役職柄、護衛が必ずいます。ですが、君はもう一人の女性です。万が一ということもありますから、持っていなさい」
「……わかりました」
父に従い、小瓶を寝着のポケットに仕舞う。こんなものを使う日は来ないとは思うが、父の心配を少しでも軽くすべく持っていよう。そう思った。
「ちなみに、十五歳ですからまだ結婚は出来ませんので、グレイブ君とそうした行為をする際は必ず服用するようにね」
突然の爆弾発言に、私は一瞬で顔が真っ赤に染まった。
「おおおお父さん!!」
丁度お風呂から出てきたグレイヴさんにも聞こえていたのか、彼も勢いよく咳き込みだしている。
なんてことを言い出すんだこの人は……!
そんな私達二人を見て、父は楽しそうに笑みを浮かべていたが、すぐさま真剣な表情に変わった。
「ロラン、人の気持というのは長くは待ってくれません。そこを忘れてはいけませんよ」
意味深な言葉に首を傾げつつ頷き、そして気付く。そっか。何時までも彼の気持ちが私に向いてくれているという確証はない。そう言っているのだろう。考えると、胸が痛んだ。
ランプを片手に部屋へ戻ると、まさかの自室にグレイヴさんの布団が敷かれていて驚く。
「もう、お母さんめ……」
「あー……、部屋の移動、頼むか?」
困り果てた顔をする彼に、私はベッドに乗り上げ、サイドチェストにランプを置きながら答える。
「他の部屋は物置になってます。この部屋くらいしか寝る場所はないですから、仕方ないです。狭いですが、我慢してくださいね」
「お、おう……」
頬を掻きつつ、グレイヴさんも布団に潜りだす。私も布団に潜り、タイミングを見計らい息を吹きかけランプの明かりを消した。
「あの、グレイヴさん」
互いに背を向け合い横になっている彼に、声を掛ける。今日は、中々眠れなさそうだ。
「ん、どうした」
「父とは、どんなことを話したんですか?」
少しの沈黙の後、彼は「悪い」と答えた。やはり、聞くことは難しいようだ。仕方ないとは思うが、残念だとも思ってしまう。
「逆にさ、俺からもお前さんに聞きたいたいことがあるんだが……」
緊張しているのか、声が震えていた。歯切れの悪い言い方に疑問を持ちつつ、「どうぞ」と答える。
「その、キスが嫌じゃなかったって、本当か?」
その言葉に、どきりと心臓が大きく脈打つ。一瞬で頬が紅潮し、鼓動が速くなった。
「それは、その……」
どうしよう。本人を前にして、うまく言葉に出来ない。
「やっぱり、あの場しのぎの言葉だったってことか?」
「そんなこと……っ」
ない、と言い掛け振り返ると、彼がすぐ側にいた。足音もなく近付かれていて驚いたが、今はそれ所じゃない。ベッドに手を乗せ、顔を近づけられる。
「そんなこと……なんだ?」
すぐ側で聞き返され、羞恥に顔を逸らす。
「そんなこと、ない、です……」
更に頬を赤く染めながら、囁くような声で答えた。熱い視線を注がれ、彼の顔を見ることが出来ない。益々顔を寄せられ、耳元に彼の吐息がかかった。
「なあ……キス、していいか?」
低くかすれた声に、背筋がゾクゾクする。目を見開き、彼の方を見やる。
熱の籠った瞳で見つめられ、断ることが出来ない。我慢できなくなり、小さく頷きゆっくりと目を閉じた。
唇同士が軽く触れ合い、重なる。角度を変えつつ、深くつながるように貪られた。呼吸するタイミングがよくわからないまま深く何度も何度も貪りつくされ、胸を軽く叩く。
「ぷはっ、んっ」
一度離れて息を吸い込むが、またすぐに塞がれた。それを何度も繰り返されると、ふわふわした心地になっていく。
もっとしたい。欲が湧いてきて、自分から彼の唇に触れてみた。
「グレイヴさん……?」
うす暗い部屋の中、動きの止まった彼に小首を傾げる。すると、突然両肩を掴まれる。
「くそッ、煽るなよ……っ」
何かを堪えるように言葉を吐き出し、がむしゃらに唇を奪われた。
「んっ、んぅっ、んっ」
咥内に舌が侵入し、蹂躙されていく。押し返そうにも、上顎や歯列の裏を丁寧に優しく撫でられ、ゾクゾクと甘い痺れが体中を駆け巡りうまく身動きができない。
「んんぅっ、ふぅ、んっ」
舌が絡み吸い上げられ、感じたことのない快感が押し寄せてくる。うまく息も吸えず、思考も視界も霞んでいく。
このまま、蕩けてしまいそうだ。
胸を再び叩くと、漸く、解放して貰えた。
「あ……はぁ……」
「わりぃ……抑え、きかなかった」
肩で呼吸する私とは違い、余裕そうなグレイヴさん。慣れているのかな……そう思うと、胸が締め付けられた。
「……グレイヴさん、狡いです」
「ロラン?」
訝し気な表情を浮かべる彼の首元に手を回し、引き寄せる。耳元に顔を寄せ、囁く。
「私は初めてなのに、余裕があって、狡いです」
すると彼の体が大きく跳ね、耳が真っ赤に染まった。そんな彼が可愛らしくて、彼の耳朶を食み、舐めるを繰り返す。
「ッ、ロ、ラン……ッ」
動揺する彼の声が堪らない。
「悪い……こっちからキスしたいなんて言ったけど、これ以上は理性が持たねえ」
獣のようなぎらついた目を向けられ、ドキドキする。
どうしよう……悩みが生じる。
このまま続けてと言うか、それとも、留まるべきか……。
そんなことを考えていると、グレイヴさんが離れていってしまった。
「トイレ、借りるわ」
そう言い残し、足早に部屋から出て行ってしまう。
「あ……」
声を掛けようとしたが、もう遅かった。
あのまま流れに身を任せていたら、どうなっていただろうか。
もしもを想像し、唇に触れる。今もまだ、ドキドキしている。
ベッドの中で悶えた。ああ、恥ずかしい……なんてはしたないんだろう。
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