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はじまりは、あの日

30.誤魔化して

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「もう本当に可愛い。どうして、そんなに可愛いの。」

「ひあっ…あっ、まってぇ」

川奈さんの体を仰向けにし強く穿つと、川奈さんの屹立から欲望が溢れる。

「手、傷ついちゃう。」

「やぁっ…はぁ…んふぅ」

声を押し殺そうと口を塞いでいた川奈さんの手をはずし、代わりにキスで塞ぐ。川奈さんは俺の背中に手を回し、しがみつきより体が密着する。

「んっ…くぅっ」

川奈さんの声を飲み込む様に口を塞ぎ、より深く腰を打ち付ける。

「ふぅっ…んっんっ」

限界が近いのか川奈さんの蕾が俺の屹立を包み込む様に締める。
追い立てる様にピストンの動きを早め、口を割開き舌を絡めとる。

「はぁっ…あっ」

川奈さんはキスの合間に声を漏らし、キツく俺にしがみつくと、屹立から欲望を吐き出して下着を濡らす。

「川奈さん…もう少しだけ、付き合って。」

「あっ…ダメっ…んっ」

「ごめん。ゴムつけてる分、いつもより長く持つから。」

「はっ…あぁっ」

「川奈さんの中、すごく気持ちいい。…くっ」

注挿を繰り返すと、絞り取る様に締め付けられ、俺自身の欲望も爆ぜる。
川奈さんに体重をかけない様に川奈さんの顔の横に腕をつき上に覆いかぶさる。二人の荒い呼吸が事後の生ぬるい空気が漂う部屋に響く。

「ねぇ…田浦君。」

川奈さんが俺の前髪を掻き分けるみたいに触りながら、下から見上げてくる。

「さっき…畠に言ってた名前…。」

川奈さんが歯切れ悪く聞いてくる

「咄嗟に口から出た名前だから、なんて言ったか覚えてないや。それがどうしたの?」

「…。ううん。やっぱり大丈夫。」

俺の回答を聞いて川奈さんが一瞬思案した後、安堵した様に笑う。そして俺の頭に手を回し、顔を近づけるとチュッと触れるだけのキスをする。

「…ねぇ、もう一回しよ?」

可愛いらしくはにかみながら、誘ってくる。

恋人たちが言葉だけでは埋められない溝を体のつながりで補う様に、俺たちも互いに求め抱き合うことで気付かないふりをする。

あなたの心にまだ居座る他の男のことを、今は誤魔化されたふりをするから、俺が特別なのだとどうか思い込ませて。

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