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はじまりは、あの日

1.目撃してしまった

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人は、予想外の状況に陥ると固まるらしい。
「…」
「…ん、っはぁ…」

扉を開けた先では、見目麗しいイケメンさんが顔を赤らめ息を絶え絶えに自分のお尻を弄っていらっしゃいました。

生々しい音とイケメンさんの艶やかな様子に息を呑んだが、
イケメンさんが気づく前に扉をしめなければ!となんとか思い至った。

しかし一歩遅く快感に耐える様にきつく閉じられていた瞳がうっすら開き、ぼんやりと俺を見た。
快楽で頭がまだ回っていないのか、俺を認識するまでに少しの時間を要した後

「…え?」

とイケメンさんの口から静かに驚きが漏れ、艶かしく潤んでいる瞳が見開いた。

やっと二人の視線と交わると、

「んっ、あっ…」と必死に押し殺した声を掠れさせながら、イケメンさんは達した。

その姿を見て「あぁ、俺、終わったな」と他人事の様に思いながら、下半身が自己主張しだしたのを感じたのだった。


* *  *


「で、何か弁明することある?」

とイケメンさんもとい、川奈かわなさんがつい今し方、役目を終えたばかりのバイブとローションが放置されているベッドに腰掛け、床で正座をしている俺に冷たく告げる。
先程まで熱を帯びていた瞳は今は冷え切り、俺を冷たく見下ろしている。

「…えっと、忘れ物をしてしまい、それで、あの、お部屋に入らせていただきました。」

言葉を選びながら慎重に言うと、川奈さんは

「忘れ物って、これ?」

と俺の社員証が入ったネームホルダーをベッドのサイドボードからひょいっとつまみあげる。
彼が動くと、バスローブの首元が少し緩み、まだ、うっすら汗ばんでいる肌が見える。
先程の姿がフラッシュバックしてしまいそうになったので、そっと視線を逸らしつつ、

「そうです。」と答えると、

「おたく、仮にも依頼主のプライバシーに配慮してるのがウリなんでしょ?社員証なんて、次の勤務の時で良かったんじゃないの?そうしたら、今みたいに顔を真っ赤にしなくて済んだのにね。」

と俺の様子が面白かったのか先程よりも和らいだ声で揶揄ってくる。

「いや、その、社員証が無いと携帯を預けているロッカーが開けられないんで。なので、その、今日、取りに来なきゃいけなくて。」

川奈さんの言い分は最もで、うちの会社はプライバシーに配慮していることで人気を得ている。
依頼主の中には有名人もいるくらいだ。
ただ、プライバシーを守るため社員には現場に行く前に必ず携帯を専用ロッカーに預けていくことが義務づけられている。

「へぇ。ハウスキーパーさんも大変だねぇ。…それよりも、これ辛くないの?」と彼の足が俺の股にスッと伸びる。

「ちょっ…川奈さん!」驚いて顔を上げると、彼はニヤリと笑り、俺の制止する声を無視して足の裏でゆっくり柔らかく擦る。

悲しいことに刺激されてしまうと反応してしまうのが男の性で、俺の意思とは無関係に下半身の主張は強くなっていく。

「…っ!」

「固くなってきた。もうキツイでしょ?」と楽しそうに言うと、俺のスラックスのチャックを器用に足の指で下ろしていく。

ズボンが寛げられると窮屈そうに仕舞われていた屹立が、パンツの上からでも、その形がはっきり分かるほど頭をさらに持ち上げる。

「ここ、シミになってるよ。」と先端部分から滲み出た欲望で汚れた部分を足の指で、優しく突かれる。

敏感な先端への刺激が、更なる快感を呼びシミを大きくしていく。

「んっ、か、川奈さん、ほんとにもうっ」

「もう何?イきたい?青とかグレーって、濡れると分かりやすいよね。」

俺の反応とは対照的に彼は楽しそうに笑っている。
彼のその顔を恨めしく思いつつ今日このパンツを履いてきた自分を激しく責めた。

「…っ!」

彼の足は相変わらず止まらず、先端を指でグリグリと強めの刺激を受け、声を殺し快感を逃す様に歯を噛み締め目を固く瞑る。

「うーん。これじゃイけないか」と言った後、カチッとボトルを開ける音がした。
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