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22.色仕掛け?
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父上が再び眠ったのを確認して、みんなで広間のテーブルの上に広げた地図を見る。
「先日シアー侯爵が、うちの領地を巡視した際には、原因は水じゃないかと言っていました。」
「父上がきちんと約束を果たしていて良かった。」
「ファナー卿、この疫病はいつから広まったのだ?」
「ツィーリィが侯爵家に奉公に出てすぐだから、1年ほど前ですね。」
殿下、義兄様、兄様で疫病の状況を確認する。ティアは難しい話は分からないと先にお風呂に行った。
「領地の何割の民が、この病に罹っているか分かるか?」
「はい侯爵子息様。えっと、多分、6割はいるかと。罹ってからの進行は遅いので、まだ皆んな持ち堪えてくれていますが、もう時間の問題かと。」
「そうか。水に関わって、進行が遅い疫病…。明日、罹患者がいる場所に行きたいのだが、連れて行ってもらえるか?」
「お心遣いは嬉しいですが、殿下に万一があったら一大事になってしまいます。」
「兄君やツィーリィの友達がこうして元気でいるということは、人から人へ感染するものではないと予想している。それに身の危険を心配してくれているなら、魔法も剣術も人並みには出来るから安心してくれ。」
どうやら殿下は兄様からの情報で大凡の予測をしていたらしい。兄様は殿下の言葉に目を丸くしている。
「それならば、明日ご案内いたします。領民も殿下の訪問を喜ぶと思います。」
「明日、私も殿下と一緒に伺いたいです。何もできないから、せめて自領の民の手助けをしたいです。」
「ツィーリィ、立派になったな」
兄様が私を感慨深く見つめる。
「じゃあ私は、水場を調べてみる。井戸や川を調べたいのだが、誰か人を貸してもらえるか?」
「あぁ、それならティアが適任かと」
兄様がティアの名前を出すと義兄様が渋い顔をする。道中のやり取りを見るに相性は悪くないと思うけど
「お義兄様、わたしじゃ不満ですかー?」
「不満しかないが?」
「ひどーい。こう見えて私ってば優秀なんですからねー?」
お風呂から上がってきたティアがぬっと現れる。義兄様のはっきりした物言いと、ティアのおっとりしているけど言いたいことは言っているあたり、息ぴったりな気がする。
「それはどうだか」
「義兄様、ティアが優秀なのは本当です。ティアは医師の一族で彼女もその心得があります」
「そうなのか」
「私が言っても信じなかったのに、ツィーリィが言うと信じるのはなんでですかー?」
「信頼の差だ」
「あぁ、そういえば殿下長旅でしたので、お疲れではないですか?明日もあるので今日はもうゆっくりしてください。」
義兄様とティアが白熱する前に、話題を変えるため殿下に声をかける。
「ありがと。じゃあ、私もお風呂に入らせてもらうかな。」
「はい!殿下は客人用のお風呂になるのでこちらです」
兄様が殿下をお風呂まで案内するために席を立つ。
「ツィーリィは一緒に行かなくていいのー?」
「え、何で?」
「だって、お妃様でしょー?殿下も一緒にお風呂入りたいんじゃないかなーって」
「ぐっ。」
「義兄様大丈夫ですか?」
ティアの爆弾発言に、兄様が飲んでいた紅茶で咽せる。
「お前、婚姻前にそんなこと許されるはずないだろう?」
「ええー。お堅いですね。今日の働きを労って背中くらい流してあげたら、明日も頑張ろうーって思うんじゃないんですかー?」
「ティア、流石にそれはね。」
義兄様が怒りティアに凄んでも、当の本人は全く気にせず、持論を展開していくので火に油がそそがれ場の空気がピリピリする。
「ふぅー。緊張したー!え、どうしたの?」
「あ、ハイルさん。ツィーリィに殿下の背中を流しておいでって言ったら、侯爵様が怒ったのー。」
「ティア、それは…」
戻ってきた兄様が、ピリつく雰囲気に驚きギョッとする。ティアの話を聞いた兄様は真面目な顔をする。さすがの兄様も止めるはずだ。
「いいアイディアだな!」
「はぁ⁈」
「兄様⁈」
予想外の反応に義兄様と私が声をあげる
「殿下との距離が縮まるいい機会じゃないか。ツィーリィが殿下の寵愛を得たら、うちも安泰だ。だから、頑張れ!」
「いまは侯爵家の娘になっているんだ。そんな色仕掛けするなんてもってのほかだ!」
「そうですよ。兄様!お風呂で距離が縮まるって、殿下をその気にさせる色気なんて私に無いですよ!」
「そうだな…。そこは否定できない…。でも、ツィーリィはやればできる子だ!大丈夫!」
「兄様、最低です」
兄様は私の両肩を掴みエールを送るが、義兄様と私で反論する。私の悲しい主張を否定することなく後押ししてくるがら残念なものを見る目で見られて腹立つ。どうせ、私は、色気のないお子ちゃまですよ。
「ハイルさん、最低。でも、ツィーリィも義兄様も、やらしいこと考えてない?私は一緒にお風呂入るんじゃなくて、ただ背中流せばって言ったつもりだよー。」
「……」
「そ、そうだぞ!」
ことの発端のティアがさらりと言った内容に、私と義兄様が顔を見合わせる。そして私達と同じ想像をしていたに違いない兄様が便乗をする。
* * *
スカートの裾が濡れない様に少したくし上げ、準備をする。後は心の準備をするだけだ。
「ツィーリィ、ボヤボヤしてると殿下のお風呂時間終わっちゃうよー。」
「えっ、ちょっと」
ついて来てしまったティアが扉を開けて、私をお風呂に押し込む。勢いによろけて転びそうになるのをなんとか耐える。
「…ツィーリィ?」
湯船に浸かる殿下が驚いた顔で私を見る。
「先日シアー侯爵が、うちの領地を巡視した際には、原因は水じゃないかと言っていました。」
「父上がきちんと約束を果たしていて良かった。」
「ファナー卿、この疫病はいつから広まったのだ?」
「ツィーリィが侯爵家に奉公に出てすぐだから、1年ほど前ですね。」
殿下、義兄様、兄様で疫病の状況を確認する。ティアは難しい話は分からないと先にお風呂に行った。
「領地の何割の民が、この病に罹っているか分かるか?」
「はい侯爵子息様。えっと、多分、6割はいるかと。罹ってからの進行は遅いので、まだ皆んな持ち堪えてくれていますが、もう時間の問題かと。」
「そうか。水に関わって、進行が遅い疫病…。明日、罹患者がいる場所に行きたいのだが、連れて行ってもらえるか?」
「お心遣いは嬉しいですが、殿下に万一があったら一大事になってしまいます。」
「兄君やツィーリィの友達がこうして元気でいるということは、人から人へ感染するものではないと予想している。それに身の危険を心配してくれているなら、魔法も剣術も人並みには出来るから安心してくれ。」
どうやら殿下は兄様からの情報で大凡の予測をしていたらしい。兄様は殿下の言葉に目を丸くしている。
「それならば、明日ご案内いたします。領民も殿下の訪問を喜ぶと思います。」
「明日、私も殿下と一緒に伺いたいです。何もできないから、せめて自領の民の手助けをしたいです。」
「ツィーリィ、立派になったな」
兄様が私を感慨深く見つめる。
「じゃあ私は、水場を調べてみる。井戸や川を調べたいのだが、誰か人を貸してもらえるか?」
「あぁ、それならティアが適任かと」
兄様がティアの名前を出すと義兄様が渋い顔をする。道中のやり取りを見るに相性は悪くないと思うけど
「お義兄様、わたしじゃ不満ですかー?」
「不満しかないが?」
「ひどーい。こう見えて私ってば優秀なんですからねー?」
お風呂から上がってきたティアがぬっと現れる。義兄様のはっきりした物言いと、ティアのおっとりしているけど言いたいことは言っているあたり、息ぴったりな気がする。
「それはどうだか」
「義兄様、ティアが優秀なのは本当です。ティアは医師の一族で彼女もその心得があります」
「そうなのか」
「私が言っても信じなかったのに、ツィーリィが言うと信じるのはなんでですかー?」
「信頼の差だ」
「あぁ、そういえば殿下長旅でしたので、お疲れではないですか?明日もあるので今日はもうゆっくりしてください。」
義兄様とティアが白熱する前に、話題を変えるため殿下に声をかける。
「ありがと。じゃあ、私もお風呂に入らせてもらうかな。」
「はい!殿下は客人用のお風呂になるのでこちらです」
兄様が殿下をお風呂まで案内するために席を立つ。
「ツィーリィは一緒に行かなくていいのー?」
「え、何で?」
「だって、お妃様でしょー?殿下も一緒にお風呂入りたいんじゃないかなーって」
「ぐっ。」
「義兄様大丈夫ですか?」
ティアの爆弾発言に、兄様が飲んでいた紅茶で咽せる。
「お前、婚姻前にそんなこと許されるはずないだろう?」
「ええー。お堅いですね。今日の働きを労って背中くらい流してあげたら、明日も頑張ろうーって思うんじゃないんですかー?」
「ティア、流石にそれはね。」
義兄様が怒りティアに凄んでも、当の本人は全く気にせず、持論を展開していくので火に油がそそがれ場の空気がピリピリする。
「ふぅー。緊張したー!え、どうしたの?」
「あ、ハイルさん。ツィーリィに殿下の背中を流しておいでって言ったら、侯爵様が怒ったのー。」
「ティア、それは…」
戻ってきた兄様が、ピリつく雰囲気に驚きギョッとする。ティアの話を聞いた兄様は真面目な顔をする。さすがの兄様も止めるはずだ。
「いいアイディアだな!」
「はぁ⁈」
「兄様⁈」
予想外の反応に義兄様と私が声をあげる
「殿下との距離が縮まるいい機会じゃないか。ツィーリィが殿下の寵愛を得たら、うちも安泰だ。だから、頑張れ!」
「いまは侯爵家の娘になっているんだ。そんな色仕掛けするなんてもってのほかだ!」
「そうですよ。兄様!お風呂で距離が縮まるって、殿下をその気にさせる色気なんて私に無いですよ!」
「そうだな…。そこは否定できない…。でも、ツィーリィはやればできる子だ!大丈夫!」
「兄様、最低です」
兄様は私の両肩を掴みエールを送るが、義兄様と私で反論する。私の悲しい主張を否定することなく後押ししてくるがら残念なものを見る目で見られて腹立つ。どうせ、私は、色気のないお子ちゃまですよ。
「ハイルさん、最低。でも、ツィーリィも義兄様も、やらしいこと考えてない?私は一緒にお風呂入るんじゃなくて、ただ背中流せばって言ったつもりだよー。」
「……」
「そ、そうだぞ!」
ことの発端のティアがさらりと言った内容に、私と義兄様が顔を見合わせる。そして私達と同じ想像をしていたに違いない兄様が便乗をする。
* * *
スカートの裾が濡れない様に少したくし上げ、準備をする。後は心の準備をするだけだ。
「ツィーリィ、ボヤボヤしてると殿下のお風呂時間終わっちゃうよー。」
「えっ、ちょっと」
ついて来てしまったティアが扉を開けて、私をお風呂に押し込む。勢いによろけて転びそうになるのをなんとか耐える。
「…ツィーリィ?」
湯船に浸かる殿下が驚いた顔で私を見る。
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