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僕は全力で突っ走る!

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「もう少し近寄れない?」

抱き抱えてくれている親父に、頼んでみれば何故だかうきうきしていそうなファルクが任せとけ、と走り出した。

「うぶっ」

また舌噛んだ…。
だから、速いって…。

「よし、ここぐらいでいいか?」

気付いた時には、ワイバーンの目の前にいた。

ふわあぁぁ。でけぇーー。

思わず当たり前な感想が浮かぶ。
全長約10メートルぐらいはあるんだろうか。これぐらいのワイバーンって大きいのか小さいのかすらわからないけど、建物はゆうに超えている。

「下ろして」

「怪我すんなよ」

ワイバーン相手に怪我すんなよ、は無理な話だとも思うけど、一応頷いておく。僕はまだ(見た目)四、五歳だからね!剣だって持てないし。短剣なら持てるけど。

「ワイバーンの丸焼き~焼き鳥?牛肉?それとも豚さん?美味しいかな~~?」

あー、それしか考えられなくなってきた。

「…おい、リク。まさか食うためにワイバーン倒すのか」

「うん!」

当たり前じゃないか。こいつのせいで(違うけど)初の食事が…っ!!食べ物の恨みは怖いんだぞ!!

「………そうか、気をつけてな」

何故だか哀愁漂う親父に手を振ってクッキン…打倒ワイバーン!!

「蔦!!」

グルルルァッ!!!と激憤の雄叫びを上げるワイバーンは、でかい翼を広げて空高く飛び上がりそこから猛スピードで地面にいるリク目掛けて激突しようとした。

「罠に突っ込んでくれてありがとう!!」

側に生えていた雑草を魔力に物を言わせて増殖させ、巨大な網目の蔦を自身の上部に作ったリクは、首を突っ込んで罠の網に首を絞められたワイバーンにお礼を言う。
ワイバーンは、まだ苛烈に闘志を見せていたがにっこりと笑っている幼児を見てギョェーーーと情けない声をあげた。

「えぇ~?どうしたのさ~?」

ワイバーンはこれでも食物連鎖の中にいる敏感な生き物。これ以上抵抗すれば何をされるかわからないと悟ったのだが、魔力を使いすぎてテンションがハイになったリクには伝わらない。

「もっと遊ぶよー!!」

グルァァョェーーー!!!!?

もうやめてくれ。か、まだやるの?!かはわからないがワイバーンにとって不運なのは確かだ。


「…なんだ、この図。幼児にワイバーンが遊ばれてる図…のはずなんだが…笑えん」

後ろで見ていたファルクは、顔を引きつらせて頭を抱えた。
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