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僕は死んでないが転生とやらをさせられるそうだ。

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退屈で退屈で仕方がない。

唯一楽しいと思えるのは寝ることと食べることだけ。株や投資で稼いだ金があるから、食べることも寝るところにも困らない。なんて簡単で単純な世界だろうか。

親兄弟もない、天涯孤独の身には可哀想だと同情する奴はいたが手を差し伸べる奴はいない。それも仕方がないことだ。大学まで、きちんと出れるお金を用意してくれていた両親には感謝している。
勉強も別に不自由しなかった。理解すれば簡単なものばかりだった。

「何か楽しいこと、ないかな。」

その日、眠りについた。


「ここが退屈なんだよね?じゃあ、もっと刺激的で、サバイバルな世界に転生させてあげるよ。稼いだお金だけは、あなたのものだ。存分に楽しんでおいで。」

姿の見えない声は、寝ているはずの僕にそう言って楽しそうに笑っていた。


目が覚めたら、体が縮んでしまっていた。

いやいや、違う。
某推理漫画じゃないんだから、直接縮んだわけじゃない。
これは明らかに違う人の体だ。

で、幼児になっていた。
紅葉みたいなプニプニした手に、柔らかいお肉が二の腕についている。地面が物凄く近い。
ありがたいことに鏡の前にいたから状況把握がすぐにできた。見た目4、5歳だろうか。金髪碧眼のまだ可愛らしい男の子といった感じ。将来はそれなりにかっこいいじゃないだろうか。

「…うそぉ…」

声まで高い。低かったらそれはそれで怖いからよしとするが、この体で何をどう楽しめと言うのか。あの声だけの奴。この中の子の意識はどこ行った。

それより、ここはどこだろう。
探ってみることにする。

よたよたと慣れない高さの体で歩き回って、小さな古民家らしいと言うことと、貧しい村の子どもであることを掴めた。

父と母らしき人は、いるにはいた。しかし僕のことを一切見向きもしない。なんだろうか、この育児放棄的な展開。今夜にでも捨てられそうな勢いなんだが。
どうりで、体がガリガリに痩せてた訳だ。

「……最初からサバイバルぅ…」

誰もいないところでボヤくのも仕方ないだろう。
この体の時の意識が無く記憶もないものだから、愛されて生まれて来たのかそうで無いのかすらよくわからん。まぁどうにかなるだろう。

それから一週間ほど過ごした。

どうにかなるだろうという楽観的思考は、よくなかった。

どうやらこの村は、地が痩せていてほとんど農作物が育たないらしく飢餓状態。みんなガリガリに痩せていた。

働き盛りの男がとった野生動物もみんなで小分けだからほとんど腹は満たされない。そして毎回獲れるとも限らない。

農作物が育たないのは、耕したり肥料を使ったりしてないからだろうけど、今の僕が何を言っても彼らは聞いてはくれないだろうし。今の父母は、本当に育児放棄をしているらしく驚く程干渉してこない。イコール食料さえももらえないということなんだが。
見た目4、5歳の僕が、何をしてても怒られないのはありがたいことだけどね。

さすがに何かを食わねば生きてはいけん。二人が働きに行っている間に、こそこそっと外に出て6日ほど前に仕掛けた罠を再利用して野鳥を捕まえておいた。2日から3日置きぐらいに獲れるから僕一人では十分だ。これを家から持ちだしたナイフで捌いて、持ってきた火種で炙って焼く。

血?そんなもの生きる為には仕方ない。慣れだ慣れ。
図太く生きますよ。

父母に分けないのか?
彼らが、食料を分けてくれたことないのに、僕からはあげようって?どんな善人ですか。僕はそんな良い人になるつもりは毛頭ない。

いやはや、案外これが美味い。
余った肉は再び罠に使う。エコだ。さて、こんな生活がいつまで続けられるだろうか。まぁ、なるようになれ、だ。

富永理玖はサバイバルになりそうな家に生まれて来た…いや、転生させられたことだけは確かだった。
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