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国際問題?
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「順調?何が?」
「ナンデモナイヨ」
「?」
「Mizuho?Me gusta Hikari?」
「tal vez…el es amable no me desagrada」
「En realidad Está bien tomarlo con calma」
「Sí」
2人して、何言ってるの?
って言うか、爺ちゃんスペイン語話せるんだ。
「ふむ。まだ4~5日だと思うが、そんな感じならまぁ良いか。おい、光!」
「なんですか?」
「俺はお前らの邪魔するつもりは無いんだがなぁ。これは謝らなきゃならないようだ。」
「はぁ。」
「今回のは姉貴の悪戯だろう。あいつはなんでも面白がる女だからな。」
姉弟揃って、そっくりじゃねぇか。
「日本国内の騒ぎは、俺の孫が後藤に勝った事が始まりの、ある意味俺の知名度と後藤の知名度のせいと、お前自身のせいだけどな。」
「僕のせいなの?」
「ただ今回のは、ちと不味いかもな。マルティナ、あいつ貴族なんだわ。」
「………は?」
スペインには貴族制度が残っているのは知ってたよ。
立憲君主制で王様がいるあたりは、イギリスと同じだよね。
でも、系統的にはフランスのブルボン王朝の流れを汲んでいるんだっけ。
けど、ねぇ。
「まぁ日本の旧華族制度みたいなもんで、政治にそこまでの影響力は持っていないが、いわゆる上流階級って奴には間違いない。」
「はぁ。」
「マルティナは、貴族社会ではいずれ騎士団に推挙されると評判の若手でな。」
「騎士団?」
「騎士団って言っても、歴史的な役割を終えて、名誉職で受勲対象にされる、別にスピアを持って国王を守る様な役割はない。ただ、その騎士団に所属する事は、スペイン人にとって最高の栄誉だ。」
なるほどねぇ。
そんな人なら、たしかにVIP待遇だ。
そのVIP待遇を無視して、僕の家に押しかけて大暴れして行ったわけですね。
「馬鹿婆ぁは、ぶん殴りにいくとして、光、お前今後はもっと面倒くさくなるぞ。」
「なんで?」
「そりゃスペインの英雄もいいとこだぞ、マルティナは。次のオリンピックじゃメダル確定とも言われてるスペイン代表をけちょんけちょんにした上で、奴の女まで奪いやがった。」
ちょっと待て?
「スペイン王国と国際問題になるかもなぁ。因みにその騎士団、日本の上皇陛下も団員だから。」
「あぁもう。なんなんだよ。」
「だから俺は、元凶の糞姉貴をぶん殴りに行くついでに、''そっち''方面はなんとかしてくるよ。お前はお前と瑞穂の身を護れ。」
なんなんだよ?
なんなんだよ?
「さすがに他国の学生に殴りこみに行く大人はいないだろうけど、どこの国にも変な奴はいるからなぁ。」
こら待て、クソジジイ。
……何やら物騒な予言を残して、祖父は帰ってしまった。
なんなのよ?
★ ★ ★
余計なこと、考えるの辞めた。
いや、どう考えても僕は被害者だもん。
ここで、僕なり瑞穂くんなりに何かあったとしたら、民間人の日本人である僕らに何かあったら。
それは日本政府とスペイン政府の責任だ。
祖父は何やら考えている様だけど、彼はある意味で警察庁OB、公安警察OBなわけだから、スペインまで瑞穂くんの祖母をどやし付けに行くならば、それは「祖父のルート」で動くって意味だろう。
だとしたら、僕が出来る事は、何か。
ぶっちゃけてしまえば、「得物」を持たせてくれるなら、飛び道具相手で無い限り勝つ自信がある。
街中で格闘されたら困るけど、まさかそんな真似をする貴族様はいないだろう。
少なくとも「大学が始まるまでは」、僕が瑞穂くんの側に居れば瑞穂くんを守れるだろう。
問題は、大学生になった以降の事だけど、そのくらいは祖父に任せてしまおうかな。
さて、そうと決まればお昼を作ろうかな。何を作ろう。
蕎麦でも茹でるかな。
★ ★ ★
「マルティナが見つかりました。日本の警察に保護されて、現在東京に向かっています。」
「そうか。やれやれ。あのお姫様にも困ったものだ。…なんだ?観光でもしてたのか?」
「日本の学生に決闘を申し込んで、負けたそうです?」
「なんだ?カードか?パチルスか?」
「いえ。フェンシングです。」
「はぁ?姫がフェンシングで負けたのか?彼女は今季負けなしだぞ?しかも学生にだと?」
「相手の学生は、剣道で応対した様ですね。」
「ケンドーか、日本の武術だな。確かにフェンシングほどの優美さは無いが、力強さでは上の武道だ。ジュンイチローのサムライ剣を見た事があるが、あれは極めれば敵うのは重装歩兵くらいだろう。」
「マルティナが対戦したのは、そのジュンイチロー氏のお孫さんです。」
「はぁ?」
都心のとあるビルの一室で、部下の女性なら報告を受けていた、とある男性がわかりやすく動揺する。
「それはあれか?先日ジュンイチロー氏を練習試合で破ったという…。」
「立ち会った日本協会の話では、マルティナは一方的にやられてしまい、動けなくなった様ですね。因みにその決闘で、ジュンイチロー氏のお孫さんは、1本もマルティナには触れていません。ただ、その度にマルティナは空を飛んだそうです。終了後は、混乱したまま倒れてしまったそうです。」
「…まったく。化け物の孫は更なる化け物か。」
「そのジュンイチロー氏から、日本政府経由で連絡が来ています。''俺はこれからスペインに飛ぶ。光とその家族にもしもの事があったら、覚悟しておけ“とあります。」
途端に男性は余裕をなくして立ち上がった。
「マドリード及び王宮に緊急連絡だ!日本から来る剣士を最恵待遇で迎えろ!航空便がいつどこかは追って伝える。金羊毛騎士団本部に報告。全ては秘密裏に行え。桜田門にも連絡を取ってくれ。」
「畏まりました。」
全ての指示を記憶した女性が部屋から出て行くのを見送ると、男性は煙草に火をつけた。
「…よりによって、日本の爆弾の孫に絡みに行ったか。あの馬鹿。まったく、ここまで平穏無事に日本滞在期間を過ごしてこれたのに。」
男性は日本の1番キツいとされている平和を意味する煙草を、肺の奥まで吸い込むと、窓の外を見下ろした。
少し離れた緑の中は、我が金羊毛騎士団に所属する、この国のエンペラーの父君が暮らしている場所だ。
王政を維持する国家として、無用なトラブルは絶対に避けねばならない。
そのために私はいる。
「でも、そのマルティナを破った学生は何者なんだ?ジュンイチローの孫と言うが、是非1度会ってみたいものだ。…………。」
しばらくして男性は、その厳しそうな外見に似合わず、まるで50年前の自分が少年だった頃の様な笑顔を浮かべる。
「ジュンイチロー''師匠''の怒りが収まったら、お願いしてみようか。」
「ナンデモナイヨ」
「?」
「Mizuho?Me gusta Hikari?」
「tal vez…el es amable no me desagrada」
「En realidad Está bien tomarlo con calma」
「Sí」
2人して、何言ってるの?
って言うか、爺ちゃんスペイン語話せるんだ。
「ふむ。まだ4~5日だと思うが、そんな感じならまぁ良いか。おい、光!」
「なんですか?」
「俺はお前らの邪魔するつもりは無いんだがなぁ。これは謝らなきゃならないようだ。」
「はぁ。」
「今回のは姉貴の悪戯だろう。あいつはなんでも面白がる女だからな。」
姉弟揃って、そっくりじゃねぇか。
「日本国内の騒ぎは、俺の孫が後藤に勝った事が始まりの、ある意味俺の知名度と後藤の知名度のせいと、お前自身のせいだけどな。」
「僕のせいなの?」
「ただ今回のは、ちと不味いかもな。マルティナ、あいつ貴族なんだわ。」
「………は?」
スペインには貴族制度が残っているのは知ってたよ。
立憲君主制で王様がいるあたりは、イギリスと同じだよね。
でも、系統的にはフランスのブルボン王朝の流れを汲んでいるんだっけ。
けど、ねぇ。
「まぁ日本の旧華族制度みたいなもんで、政治にそこまでの影響力は持っていないが、いわゆる上流階級って奴には間違いない。」
「はぁ。」
「マルティナは、貴族社会ではいずれ騎士団に推挙されると評判の若手でな。」
「騎士団?」
「騎士団って言っても、歴史的な役割を終えて、名誉職で受勲対象にされる、別にスピアを持って国王を守る様な役割はない。ただ、その騎士団に所属する事は、スペイン人にとって最高の栄誉だ。」
なるほどねぇ。
そんな人なら、たしかにVIP待遇だ。
そのVIP待遇を無視して、僕の家に押しかけて大暴れして行ったわけですね。
「馬鹿婆ぁは、ぶん殴りにいくとして、光、お前今後はもっと面倒くさくなるぞ。」
「なんで?」
「そりゃスペインの英雄もいいとこだぞ、マルティナは。次のオリンピックじゃメダル確定とも言われてるスペイン代表をけちょんけちょんにした上で、奴の女まで奪いやがった。」
ちょっと待て?
「スペイン王国と国際問題になるかもなぁ。因みにその騎士団、日本の上皇陛下も団員だから。」
「あぁもう。なんなんだよ。」
「だから俺は、元凶の糞姉貴をぶん殴りに行くついでに、''そっち''方面はなんとかしてくるよ。お前はお前と瑞穂の身を護れ。」
なんなんだよ?
なんなんだよ?
「さすがに他国の学生に殴りこみに行く大人はいないだろうけど、どこの国にも変な奴はいるからなぁ。」
こら待て、クソジジイ。
……何やら物騒な予言を残して、祖父は帰ってしまった。
なんなのよ?
★ ★ ★
余計なこと、考えるの辞めた。
いや、どう考えても僕は被害者だもん。
ここで、僕なり瑞穂くんなりに何かあったとしたら、民間人の日本人である僕らに何かあったら。
それは日本政府とスペイン政府の責任だ。
祖父は何やら考えている様だけど、彼はある意味で警察庁OB、公安警察OBなわけだから、スペインまで瑞穂くんの祖母をどやし付けに行くならば、それは「祖父のルート」で動くって意味だろう。
だとしたら、僕が出来る事は、何か。
ぶっちゃけてしまえば、「得物」を持たせてくれるなら、飛び道具相手で無い限り勝つ自信がある。
街中で格闘されたら困るけど、まさかそんな真似をする貴族様はいないだろう。
少なくとも「大学が始まるまでは」、僕が瑞穂くんの側に居れば瑞穂くんを守れるだろう。
問題は、大学生になった以降の事だけど、そのくらいは祖父に任せてしまおうかな。
さて、そうと決まればお昼を作ろうかな。何を作ろう。
蕎麦でも茹でるかな。
★ ★ ★
「マルティナが見つかりました。日本の警察に保護されて、現在東京に向かっています。」
「そうか。やれやれ。あのお姫様にも困ったものだ。…なんだ?観光でもしてたのか?」
「日本の学生に決闘を申し込んで、負けたそうです?」
「なんだ?カードか?パチルスか?」
「いえ。フェンシングです。」
「はぁ?姫がフェンシングで負けたのか?彼女は今季負けなしだぞ?しかも学生にだと?」
「相手の学生は、剣道で応対した様ですね。」
「ケンドーか、日本の武術だな。確かにフェンシングほどの優美さは無いが、力強さでは上の武道だ。ジュンイチローのサムライ剣を見た事があるが、あれは極めれば敵うのは重装歩兵くらいだろう。」
「マルティナが対戦したのは、そのジュンイチロー氏のお孫さんです。」
「はぁ?」
都心のとあるビルの一室で、部下の女性なら報告を受けていた、とある男性がわかりやすく動揺する。
「それはあれか?先日ジュンイチロー氏を練習試合で破ったという…。」
「立ち会った日本協会の話では、マルティナは一方的にやられてしまい、動けなくなった様ですね。因みにその決闘で、ジュンイチロー氏のお孫さんは、1本もマルティナには触れていません。ただ、その度にマルティナは空を飛んだそうです。終了後は、混乱したまま倒れてしまったそうです。」
「…まったく。化け物の孫は更なる化け物か。」
「そのジュンイチロー氏から、日本政府経由で連絡が来ています。''俺はこれからスペインに飛ぶ。光とその家族にもしもの事があったら、覚悟しておけ“とあります。」
途端に男性は余裕をなくして立ち上がった。
「マドリード及び王宮に緊急連絡だ!日本から来る剣士を最恵待遇で迎えろ!航空便がいつどこかは追って伝える。金羊毛騎士団本部に報告。全ては秘密裏に行え。桜田門にも連絡を取ってくれ。」
「畏まりました。」
全ての指示を記憶した女性が部屋から出て行くのを見送ると、男性は煙草に火をつけた。
「…よりによって、日本の爆弾の孫に絡みに行ったか。あの馬鹿。まったく、ここまで平穏無事に日本滞在期間を過ごしてこれたのに。」
男性は日本の1番キツいとされている平和を意味する煙草を、肺の奥まで吸い込むと、窓の外を見下ろした。
少し離れた緑の中は、我が金羊毛騎士団に所属する、この国のエンペラーの父君が暮らしている場所だ。
王政を維持する国家として、無用なトラブルは絶対に避けねばならない。
そのために私はいる。
「でも、そのマルティナを破った学生は何者なんだ?ジュンイチローの孫と言うが、是非1度会ってみたいものだ。…………。」
しばらくして男性は、その厳しそうな外見に似合わず、まるで50年前の自分が少年だった頃の様な笑顔を浮かべる。
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