久遠の魔法使いの弟子

つるしぎ

文字の大きさ
上 下
28 / 28
魔法使いとの出会い

   発覚

しおりを挟む
 光る糸を追いかけて行くと、丁度2人がお店から出て来た所に出くわした。

 レナードと話をしていた間に沢山のお店を回ったのか、2人の手には沢山の紙袋が下げられている。

 勢い余って鉢合わせそうになったのを、すんでの所で路地裏に飛び込んだ。

 紙袋を多めに手に持っているダレンは、どこかほくほくとした顔をしている。

「さっきの服買わなくて良かったの? とっても似合ってたのに」

「うーん、ウエストのサイズはピッタリだったんだけど、丈が私には少し短くて。他の人に比べて身長が高いから、中々丁度いい服に出会えないんだよね」

「俺よりも高いもんね。俺が隣を歩くと周りから不釣り合いに見えてるんじゃないかと思って、少し申し訳なく思っちゃうよ」

 ダレンは申し訳なさそうに笑う。

「そう? 大体の人はみんな私より低いか同じかだから、なんとも思わないけど。それに私が誰を連れてようが私の勝手でしょ」

「そうだよね」

 ダレンは少し顔を下げ、嬉しそうに笑う。




 待ち合わせ場所だった噴水広場まで戻ってくると、ナタリーはダレンの方へと振り返る。

 陽が沈みだした辺りには、オレンジ色の光が差していた。

「じゃあ、私そろそろ帰る時間だから。完全に私の好みで服選んじゃったけど、結構似合ってたから、これで大丈夫だと思うよ」

 そう言うと、ナタリーは手に持っていた紙袋をダレンの方へと差し出す。

 ダレンは紙袋を受け取ると、何かを迷うように視線を左右に振り、息を吸って言葉を発した。

「よ、良かったらさ、この後僕の家に来ない?」

「は?」

 ナタリーは首を傾げる。

 

ダレンの言葉に、話を聞いていたアーロンは驚き、口をパクパクとしている。

 アーロンが勢い余って飛び出したりしないか見張っていた時、自分たちのすぐ近くから囁き声が聞こえる事にロボは気が付いた。



 ダレンはハッとしたような顔をして、慌てて訂正する。

「あ! いや違くて、今日選んだ服を着ているところを見て欲しくて。全部着てみないと似合ってるかいまいちわかんないし、この辺りだと着替えるところないなと思って」

「ああ、なるほど」

 ナタリーは考えるように顔をして、胸元のネックレスをチラリと見た。

 「ごめん、今日はもう帰らなきゃいけないから。今度またお店に来るときにでも着て来てよ。告白の成果報告でもいいしさ」

 そう言ってその場を去ろうとした時、ナタリーは何かに気が付いたような顔をして突然その場に蹲った。

 突然の事に、ダレンは驚きオロオロとしだす。

「ど、どうしたの?」

 そう言って蹲るナタリーの側に座り込み顔を覗き込もうとした時、ダレンの身体をナタリーが押しのけた。

「大丈夫だから、今は近づかないで」

 胸元を手で抑え込み、顎下まで伸びる髪を垂らして顔を覆うナタリーの表情は読み取れない。

 異変に気付いたアーロンが立ちあがった時、高い鈴の音が聞こえた。

 慌てた様子でアーロンは懐から何かを取り出した。

 手の平には指でつまめる程の小さい鈴がフルフルと震えている。

 ふとナタリーの方を向いた時、ナタリー達は音の出所であるロボとアーロンの方を見ていた。

 ナタリーの手にもアーロンの持つ物と同じ鈴が握られ、震えていた。


 髪の隙間から除くナタリーの目は、驚きの目をしているように見える。
 アーロンは取り繕うように、取り敢えず笑って見せた。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない… そんな中、夢の中の本を読むと、、、

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...