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第二十三章
空港からホテルへの移動みたいな
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乗用蛇、という名前で察しはついていたが彼女が呼び止めたのは人間やエルフが腰掛ける為の駕籠を背負った、巨大な蛇だった。
「ようこそ、美しいお嬢さん。どちらまで?」
「ザ・ウォーマー・ワンまで2名、お願いします」
しかもその蛇は流暢にエルフ語を話した。地球の観光地で乗る象等と違って御者はいない。本蛇が運搬とガイドを行える様だ。
「ショウキチさん? 行きましょう」
「あ、はい。宜しくお願いします」
俺はこちらをじっと見る乗用蛇さんに頭を下げ、ダリオさんに次いで背中の駕籠へ入った。屋根もありクッションのふかふかな座席もある、なかなか立派な作りだ。
「まもなく出発します。ご案内はどうしましょう?」
「結構です、ありがとう」
出発前の確認に振り返った蛇さんにそう返し、ダリオさんは何枚かのコインを彼の首から下がる鞄の中へ落とした。いつぞやのワイバーン、それにスワッグもたまに使っている首下げ鞄だが、こんなにバリエーションがあるとは思ってもいなかった。地球にいた時に見たその手のモノって、大きな災害救助犬が首から下げてる酒の入った樽くらいだったからなあ。
「それでは参ります~」
ダリオさんが入れたコインは正規料金にプラス、たっぷりのチップだったのであろう。乗用蛇さんは機嫌良く声を出してから進み出し、非常に滑らかかつ丁寧に透明なチューブの中を這って行く。
「すご……ぜんぜん揺れない」
俺は驚きの声を漏らした。街の空中を走る道路、SF的雰囲気のギミックかと思っていたがその中を走る? のが蛇だと考えれば非常に合理的だ。
「ええ。しかも速くて、ザ・ウォーマー・ワンまでですと確か……10分ほどで着きますね」
ダリオさんが少し上を見上げ記憶を呼び起こしながら言った。因みに彼女が何度か口にしている『ザ・ウォーマー・ワン』が俺たちの目的地であり、ゴルルグ族と対戦するアウエィチームが必ず泊まる事になっている全種族対応型の宿舎である。
宿舎名はそのまま暖かいやつら、つまり温血種族を意味する。察しの通りゴルルグ族は冷血種族かつ芸能人のローランドさん――柏レイソルのアカデミーにいたんだってね――の様な
「俺か、俺以外か」
精神の持ち主なので、自分たち以外はウォーマー呼びなのだ。いやインセクターみたいな種族もいるんだけど。
「それは良かった。乗り物酔いする暇もありませんね。ちょっと残念だけど」
サッカー選手と移動は切っても切れない関係で、それはこの世界のサッカードウ選手でも同じだ。俺はそこに注力して色々と改善してきたが、ここの様に何もしなくて良いのは楽であり、残念でもある。
「残念ですか? つまりショウキチさんはもっと揺れた方が良いと?」
ダリオさんが赤い眼鏡の中の目尻を下げて訊ねる。
「そういう意味じゃないです! そもそも揺れてどうするんです!?」
「だって、ショウキチさんがチラチラ見ているここですが……あっ」
その時、彼女の背中側から
「ぷつん!」
という可愛くも凶悪な音が聞こえた。
聞こえた、というのは空耳とか俺の心の耳だったかもしれない。
「ブラジャーの留め具が外れてしまいました……」
だが彼女の呟きは幻聴でも何でもなくリアルだった。
「え!? 冗談ですよね? そんな訳ありませんよね!?」
と聞いてはみたものの、頬をピンクに染めて胸を隠すダリオさんの姿が何も語らずとも物語っていた。
「やっぱりレイさんのでは少し無理があったようです」
「え? 何でまだ着けていたんですか?」
「いや今は着けているとは言えない状況ですね」
いやそうだけどそうじゃなくてですね!
「お客様、どうされまし……」
「こっち見ないで!」
「見ないで下さい!」
俺とダリオさんは、親切な乗用蛇さんが心配して振り返りそうなのを慌てて止めた。
「あ、はい! すみません!」
「ショウキチさん、カーテンを……」
彼女の指示で屋根にカーテンがかかっているのに気づき、俺はそれをさっと下げる。とりあえずこれで乗用蛇さんや周囲の視線は防げるな!
「ありがとうございます」
「えっと、何でレイさんのを着けたまま蛇に乗ったんです?」
今度は自分の視線が問題だ。俺は顔を背けて質問をし直した。
「何でって、着て見せた後にわざわざ外すのも不自然ですし」
うっ……確かにそうかもしれない。
「どうしましょう?」
「ショウキチさん、留めて貰えますか?」
ダリオさんはそう言ってこちらに背を向けた。やっぱりそうなりますよねー!
「あ、はい……」
何だかこの状況、初めてじゃない気がする。あ、水着の試着の時だ! あの時、水着を試し終わった彼女の服の背中を留めたっけ。
「(二度目なんだから、焦ることは無いよな!)」
俺は心の中で自分にそう言い聞かせながら視線を上げ、前回との違いに気づいた。
「あの、これって……?」
あの時は既に背中が開いていて、俺はそれを閉めただけだ。だが今回はまず自らの手でドレスの留め具を外し、次にブラジャーの方を探して繋ぎ、再びワンピースの背中を現状復帰して返さないといけない。
「あ、分かります? 上の三カ所ほどを外せばお尻の上まで勝手に開けますので」
「なるほど。それは」
助かった、と口にしかけて俺は息を呑んだ。ダリオさんの言うとおり上を解放するだけでドレスの背中は開いた。開いたのだが、少し開き過ぎて彼女の尾てい骨の辺りと、その下にある紐より少し太いだけの、真っ黒なショーツが目に入ってしまったのである!
「ようこそ、美しいお嬢さん。どちらまで?」
「ザ・ウォーマー・ワンまで2名、お願いします」
しかもその蛇は流暢にエルフ語を話した。地球の観光地で乗る象等と違って御者はいない。本蛇が運搬とガイドを行える様だ。
「ショウキチさん? 行きましょう」
「あ、はい。宜しくお願いします」
俺はこちらをじっと見る乗用蛇さんに頭を下げ、ダリオさんに次いで背中の駕籠へ入った。屋根もありクッションのふかふかな座席もある、なかなか立派な作りだ。
「まもなく出発します。ご案内はどうしましょう?」
「結構です、ありがとう」
出発前の確認に振り返った蛇さんにそう返し、ダリオさんは何枚かのコインを彼の首から下がる鞄の中へ落とした。いつぞやのワイバーン、それにスワッグもたまに使っている首下げ鞄だが、こんなにバリエーションがあるとは思ってもいなかった。地球にいた時に見たその手のモノって、大きな災害救助犬が首から下げてる酒の入った樽くらいだったからなあ。
「それでは参ります~」
ダリオさんが入れたコインは正規料金にプラス、たっぷりのチップだったのであろう。乗用蛇さんは機嫌良く声を出してから進み出し、非常に滑らかかつ丁寧に透明なチューブの中を這って行く。
「すご……ぜんぜん揺れない」
俺は驚きの声を漏らした。街の空中を走る道路、SF的雰囲気のギミックかと思っていたがその中を走る? のが蛇だと考えれば非常に合理的だ。
「ええ。しかも速くて、ザ・ウォーマー・ワンまでですと確か……10分ほどで着きますね」
ダリオさんが少し上を見上げ記憶を呼び起こしながら言った。因みに彼女が何度か口にしている『ザ・ウォーマー・ワン』が俺たちの目的地であり、ゴルルグ族と対戦するアウエィチームが必ず泊まる事になっている全種族対応型の宿舎である。
宿舎名はそのまま暖かいやつら、つまり温血種族を意味する。察しの通りゴルルグ族は冷血種族かつ芸能人のローランドさん――柏レイソルのアカデミーにいたんだってね――の様な
「俺か、俺以外か」
精神の持ち主なので、自分たち以外はウォーマー呼びなのだ。いやインセクターみたいな種族もいるんだけど。
「それは良かった。乗り物酔いする暇もありませんね。ちょっと残念だけど」
サッカー選手と移動は切っても切れない関係で、それはこの世界のサッカードウ選手でも同じだ。俺はそこに注力して色々と改善してきたが、ここの様に何もしなくて良いのは楽であり、残念でもある。
「残念ですか? つまりショウキチさんはもっと揺れた方が良いと?」
ダリオさんが赤い眼鏡の中の目尻を下げて訊ねる。
「そういう意味じゃないです! そもそも揺れてどうするんです!?」
「だって、ショウキチさんがチラチラ見ているここですが……あっ」
その時、彼女の背中側から
「ぷつん!」
という可愛くも凶悪な音が聞こえた。
聞こえた、というのは空耳とか俺の心の耳だったかもしれない。
「ブラジャーの留め具が外れてしまいました……」
だが彼女の呟きは幻聴でも何でもなくリアルだった。
「え!? 冗談ですよね? そんな訳ありませんよね!?」
と聞いてはみたものの、頬をピンクに染めて胸を隠すダリオさんの姿が何も語らずとも物語っていた。
「やっぱりレイさんのでは少し無理があったようです」
「え? 何でまだ着けていたんですか?」
「いや今は着けているとは言えない状況ですね」
いやそうだけどそうじゃなくてですね!
「お客様、どうされまし……」
「こっち見ないで!」
「見ないで下さい!」
俺とダリオさんは、親切な乗用蛇さんが心配して振り返りそうなのを慌てて止めた。
「あ、はい! すみません!」
「ショウキチさん、カーテンを……」
彼女の指示で屋根にカーテンがかかっているのに気づき、俺はそれをさっと下げる。とりあえずこれで乗用蛇さんや周囲の視線は防げるな!
「ありがとうございます」
「えっと、何でレイさんのを着けたまま蛇に乗ったんです?」
今度は自分の視線が問題だ。俺は顔を背けて質問をし直した。
「何でって、着て見せた後にわざわざ外すのも不自然ですし」
うっ……確かにそうかもしれない。
「どうしましょう?」
「ショウキチさん、留めて貰えますか?」
ダリオさんはそう言ってこちらに背を向けた。やっぱりそうなりますよねー!
「あ、はい……」
何だかこの状況、初めてじゃない気がする。あ、水着の試着の時だ! あの時、水着を試し終わった彼女の服の背中を留めたっけ。
「(二度目なんだから、焦ることは無いよな!)」
俺は心の中で自分にそう言い聞かせながら視線を上げ、前回との違いに気づいた。
「あの、これって……?」
あの時は既に背中が開いていて、俺はそれを閉めただけだ。だが今回はまず自らの手でドレスの留め具を外し、次にブラジャーの方を探して繋ぎ、再びワンピースの背中を現状復帰して返さないといけない。
「あ、分かります? 上の三カ所ほどを外せばお尻の上まで勝手に開けますので」
「なるほど。それは」
助かった、と口にしかけて俺は息を呑んだ。ダリオさんの言うとおり上を解放するだけでドレスの背中は開いた。開いたのだが、少し開き過ぎて彼女の尾てい骨の辺りと、その下にある紐より少し太いだけの、真っ黒なショーツが目に入ってしまったのである!
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