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第十五章
スターシステム
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「結果を見れば大勝ですが、勝負を決めたのはディティール、小さな部分でした。コーチ陣がそういった細部まで気を配り準備をし、キャプテンやベテラン陣がその指示を伝え、選手が遵守し実行した。それに尽きると思います。チーム力の勝利です」
今度はエルフ体表側の記者会見だ。俺は先に総括を求められてそう応えた。
「チーム力とのことですが、仕上がりはいかほどですか? 開幕戦に照準を合わせたので?」
「特殊なセットプレイによって連続得点を上げましたが、ああいうものはまだまだあるんですか?」
「後半、個人の力で勝負を決めたように見えましたがそれも監督の意図でしたか?」
俺が言い終わるのを待って、質問が次々と飛んだ。主に自国、エルフの記者さんからだが、抜け目なくセットプレーに言及したのはゴルルグ族の記者さんのようだ。細い蛇の目がキラリと光った。
「開幕戦と言ってもリーグ戦の一試合に過ぎません。ですが正直に言って、一つのチームの対策……研究やセットプレイの準備を一ヶ月近く時間をかけてできる機会は滅多にありません。なので、ええ、開幕戦と言うかオーク代表対策に時間をかけたのは事実です。一方でコンディションやチームのポテンシャルで言えば、ここでピークを迎えてしまうとリーグ戦の半ばくらいで落ちてしまう。なので仕上がりはまだまだです」
俺がそう言い切ると何人かの記者さんがほう、と感心しながらメモに筆を走らせた。好印象を与えられたらしい。ってコーチ陣に説明したのと同じ内容だからスラスラ言えたんだけどね。
「セットプレイに関しては……そうですね、まだまだあります。今回はオーク代表戦において有効であろうものをセレクトしましたが。一方で普通の、と言ってはなんですが直接FKも大事にしたいです。ウチはルーナ、ポリン、アイラ、ダリオ、と優秀なキッカーがいますし、ガニア、クエン、リスト、ムルトと言った空中戦に強いターゲットも揃っている。だから誰かに合わせる形も重要な武器になると思っています」
今度もまたオタク特有の早口でスラスラと言う。これは半ば意図的なものだ。俺に探りを入れているであろうゴルルグ族に的を絞らせたくないのだ。なので選手の名前もバラバラにした。
「あと最後のは……何でしたっけ?」
「個の力、特にそこのレイ選手です!」
「えっ!? ウチ?」
記者さんに指名された、俺の右側に座るレイさんが驚きながら自身を指さした。
「現役の学生と言うのは本当ですか?」
「将来、自分がエルフのサッカードウ史上最高の選手になると思いますか?」
「大洞穴のサッカードウと比べて、地上のレベルはどう感じられましたか? 率直に聞かせてください!」
それを合図にしたか、複数の種族、記者さんたちから次々と質問が浴びせかけられる。
「(来たかスターシステム……!)」
俺は手を挙げて注目をレイさんから逸らしながら、密かに唾を呑みこんんだ。
スターシステム。創作界では『人気のある特定のキャラを複数のシリーズを跨いで登場させる』ことを言ったりもするが、この場ではもちろん違う意味で使っている。
サッカー界、いやスポーツメディア全般で見られる『メディアが意図的に注目する事で若手をスターに祭り上げ、ニュースバリューのある存在を作り上げる』システムの事である。
チームとメディアとは本来、協力体制にある。極端な言い方をすれば報道陣という存在は基本的には何も作らない。何か価値のあるモノの情報を仕入れてバラ撒いているだけである。元々『価値のあるモノ』が存在しなければ何も出来ない。この場合、チームがそれである。
一方、メディアがチームの存在や活躍、魅力を様々な手段で大衆に届けてくれるからこそ、チームの人気も出るし入場料グッズ売り上げなど収入もあがる。
両者はそんな関係ではあるが、稀にメディアが価値のあるモノを半分くらい自前で作ってしまおうとする時があるのだ。
例えば……まだ成長途中にある若い選手の実力、特徴を誇張して報道する事によって人気者に仕立て上げるとか。
前述した通り、悪いことばかりではない。メディアが伝えてくれるから大衆が興味を持ち、応援し、金を払ってくれるのである。もちつもたれつなのである。何より、こっちだって『若き天才、ヨミケの太陽』などマスコミ受けしそうなキャッチフレーズを選手につけている。
しかし、である。注目を浴びることでヤル気を出せば良いが、プレッシャーになる事もある。高く評価されることで自信を持って更に実力をつける場合もあれば、天狗になって成長が止まってしまう危険もある。
前者であれば良いが後者になったらどうか? 多くの場合、折角の才能を腐らせてしまうの。そうなってもメディアは責任をとってはくれない。さっさと次の目標を探すだけだ。残された本人とその選手を預かるチームとしてはたまったものではない。
最終的にはケースバイケースではあるが、このスターシステムというブツ、非常に取り扱い注意なのだ。
今度はエルフ体表側の記者会見だ。俺は先に総括を求められてそう応えた。
「チーム力とのことですが、仕上がりはいかほどですか? 開幕戦に照準を合わせたので?」
「特殊なセットプレイによって連続得点を上げましたが、ああいうものはまだまだあるんですか?」
「後半、個人の力で勝負を決めたように見えましたがそれも監督の意図でしたか?」
俺が言い終わるのを待って、質問が次々と飛んだ。主に自国、エルフの記者さんからだが、抜け目なくセットプレーに言及したのはゴルルグ族の記者さんのようだ。細い蛇の目がキラリと光った。
「開幕戦と言ってもリーグ戦の一試合に過ぎません。ですが正直に言って、一つのチームの対策……研究やセットプレイの準備を一ヶ月近く時間をかけてできる機会は滅多にありません。なので、ええ、開幕戦と言うかオーク代表対策に時間をかけたのは事実です。一方でコンディションやチームのポテンシャルで言えば、ここでピークを迎えてしまうとリーグ戦の半ばくらいで落ちてしまう。なので仕上がりはまだまだです」
俺がそう言い切ると何人かの記者さんがほう、と感心しながらメモに筆を走らせた。好印象を与えられたらしい。ってコーチ陣に説明したのと同じ内容だからスラスラ言えたんだけどね。
「セットプレイに関しては……そうですね、まだまだあります。今回はオーク代表戦において有効であろうものをセレクトしましたが。一方で普通の、と言ってはなんですが直接FKも大事にしたいです。ウチはルーナ、ポリン、アイラ、ダリオ、と優秀なキッカーがいますし、ガニア、クエン、リスト、ムルトと言った空中戦に強いターゲットも揃っている。だから誰かに合わせる形も重要な武器になると思っています」
今度もまたオタク特有の早口でスラスラと言う。これは半ば意図的なものだ。俺に探りを入れているであろうゴルルグ族に的を絞らせたくないのだ。なので選手の名前もバラバラにした。
「あと最後のは……何でしたっけ?」
「個の力、特にそこのレイ選手です!」
「えっ!? ウチ?」
記者さんに指名された、俺の右側に座るレイさんが驚きながら自身を指さした。
「現役の学生と言うのは本当ですか?」
「将来、自分がエルフのサッカードウ史上最高の選手になると思いますか?」
「大洞穴のサッカードウと比べて、地上のレベルはどう感じられましたか? 率直に聞かせてください!」
それを合図にしたか、複数の種族、記者さんたちから次々と質問が浴びせかけられる。
「(来たかスターシステム……!)」
俺は手を挙げて注目をレイさんから逸らしながら、密かに唾を呑みこんんだ。
スターシステム。創作界では『人気のある特定のキャラを複数のシリーズを跨いで登場させる』ことを言ったりもするが、この場ではもちろん違う意味で使っている。
サッカー界、いやスポーツメディア全般で見られる『メディアが意図的に注目する事で若手をスターに祭り上げ、ニュースバリューのある存在を作り上げる』システムの事である。
チームとメディアとは本来、協力体制にある。極端な言い方をすれば報道陣という存在は基本的には何も作らない。何か価値のあるモノの情報を仕入れてバラ撒いているだけである。元々『価値のあるモノ』が存在しなければ何も出来ない。この場合、チームがそれである。
一方、メディアがチームの存在や活躍、魅力を様々な手段で大衆に届けてくれるからこそ、チームの人気も出るし入場料グッズ売り上げなど収入もあがる。
両者はそんな関係ではあるが、稀にメディアが価値のあるモノを半分くらい自前で作ってしまおうとする時があるのだ。
例えば……まだ成長途中にある若い選手の実力、特徴を誇張して報道する事によって人気者に仕立て上げるとか。
前述した通り、悪いことばかりではない。メディアが伝えてくれるから大衆が興味を持ち、応援し、金を払ってくれるのである。もちつもたれつなのである。何より、こっちだって『若き天才、ヨミケの太陽』などマスコミ受けしそうなキャッチフレーズを選手につけている。
しかし、である。注目を浴びることでヤル気を出せば良いが、プレッシャーになる事もある。高く評価されることで自信を持って更に実力をつける場合もあれば、天狗になって成長が止まってしまう危険もある。
前者であれば良いが後者になったらどうか? 多くの場合、折角の才能を腐らせてしまうの。そうなってもメディアは責任をとってはくれない。さっさと次の目標を探すだけだ。残された本人とその選手を預かるチームとしてはたまったものではない。
最終的にはケースバイケースではあるが、このスターシステムというブツ、非常に取り扱い注意なのだ。
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