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第十章
悪者になれない
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「これって……」
大きな分類で言えばビキニなんだろうが、角のある獣の頭部が鼠蹊部に鎮座し細い紐が腰を回って後ろで結ばれている。一方、胸の方は4本指の爪のある手が下から胸を鷲掴みにしているかのよう。
白い骨とレイさんの藍色の肌がある意味お互いに映える関係になっているが正直、禍々しい。
「昔の特撮の色っぽい悪の幹部かよ!」
俺は思わずそう叫んだ。
「えっ、このタイミングでその指摘!?」
レイさんが彼女の立場としては正当な突っ込みを入れる。
「何ですか、特撮って?」
ダリオさんが不思議そうに俺に訊ねる。
「えっと、地球で流行ってる物語で……説明難しいな。でもレイさんは知ってるんですね」
「まあ……ヨミケにあったから」
レイさんはいまさら恥ずかしくなったのか、胸元を隠し照れた表情になりながら応える。
「ああ、支部長の所にソフビとかもありましたもんね。とは言えそのチョイスはどうなんすか?」
レイさんはスタイル良いし骨水着そのものはセクシーだ。だがこの手の格好はもう少し年上のお姉さんタイプが着てこそのもので、彼女に合っているとは言い難い。
「だって! 姫様はリボンみたいな紐やし、シャマーねえさんは葉っぱビキニやん? それを上回るセクシーさとオチに足るボケを出さなアカンと思ったら……」
レイさんは選択時の混乱を思い出すように言う。
「ウチかて迷走してるとは思たもん! でもショーキチにいさん今日は攻めてるし……」
いやだからそれはレイさんが自分で勝手に決めた障害だって!
「別に攻めては……。あれ? 『リボンみたいな紐』と『葉っぱビキニ』って何すか?」
ふとレイさんの言葉の中の不穏な単語に気づき訊ねる。
「支払いしてきたー。どうしたのみんな?」
そこへシャマーさんが帰ってくる。
「お帰りなさい、シャマー。そうだ、ショウキチさんが私たちの水着も確認したいみたいですよ?」
いやそう言ったつもりはないんだが……と否定するより先に、ダリオさんとシャマーさんはそれぞれの荷物の中から何かを取り出した。
ダリオさんは赤いリボンでシャマーさんは葉っぱだ。いや違う、正確に言えばリボンで肝心な部分だけ隠すタイプの過激な水着と、同じく葉っぱで肝心な部分だけ隠すタイプの危ない水着だった。
「もしかして、お二方はサッカードウの試合で負けた場合は、それを着てセンシャをするつもりでいらっしゃる?」
「ええ。ショウキチさんも称賛して下さった可愛い水着ですし」
「別にセンシャだけじゃなくて、お願いしてくれたらこれでショーちゃんの部屋を掃除してあげても良いけど?」
ダリオさんとシャマーさんは何を当たり前の事を? と言った表情でそう応えた。
「えっと、誰が称賛と?」
「ショウキチさんが」
「ショーちゃんが」
「僕が?」
「ええ」
「うん」
そう言われてみれば俺がしたんだよな。実際は見もせずに。
「で、レイさんはそれを越えるインパクトを出そうとして、それを?」
「分かってるて! 滑ってんのやろ! もう恥ずかしいから脱ぐ!」
自暴自棄になったレイさんはそう叫ぶとそのまま上の手から脱ぎ捨てようとする。
「あわわ、ストップストップ!」
「レイちゃん落ち着いて!」
「ショウキチさん、謝って下さい!」
三名の人間とエルフの大人は慌てて未成年のエルフを宥めにかかった。
「ごめんレイさん! 古いけど悪役っぽくて良いですよ!」
「私はさっきからスタイリッシュだと思うと!」
「ショーちゃんもダリオも死体蹴りはやめー!」
俺達の言葉により表情を歪ませたレイさんを見て、シャマーさんが止めに入る。
「すみませんレイさん! 俺、実は競泳水着の方が好きです!」
こうなったのは俺のせいだ。全く見ずに褒める事でこの難局を乗り越える……という安直な手に走った俺の。
「え? そうなん?」
なので、恥を忍んで本当の好みを伝える事にした。
「はい。レイさんみたいな引き締まったボディには、白い競泳水着が似合うと思います。それは辞めて、白競泳にしましょう!」
ダリオさんシャマーさんが
「あら、まー大胆ねー」
という表情で笑いを堪える中、そう言ってレイさんの表情を伺う。
「そうなんやー。ウチのボディ、引き締まってる?」
レイさんはからかうような口調でそう訊ねてきた。
「はい、引き締まってます」
「いつの間に見たん?」
「まあ、ぼちぼちと」
今やレイさんは全開で楽しそうで、俺は羞恥で真っ赤だ。
「ウチの競泳水着姿、見たい?」
「すっごく見たいです」
恥ずかし過ぎて目は合わせられない。だがレイさんの機嫌が治っているのは分かる。
「そうかー。しゃーないなあ。じゃあそっちにしたるわ」
「はい、そうして下さい」
いや正直、秒で機嫌が治るのは助かるが。
「ほな一番、格好良い競泳水着とってこよっと」
レイさんは悪役骸骨水着姿のまま、売場へ向かった。もう突っ込む気力はない。
「あ、私もー」
「私もそうします。両方買えば良いですね」
その姿を追ってシャマーさんとダリオさんも続いた。結局、その後は全員の競泳水着選びとその鑑賞会につき合わされる事となった……。
大きな分類で言えばビキニなんだろうが、角のある獣の頭部が鼠蹊部に鎮座し細い紐が腰を回って後ろで結ばれている。一方、胸の方は4本指の爪のある手が下から胸を鷲掴みにしているかのよう。
白い骨とレイさんの藍色の肌がある意味お互いに映える関係になっているが正直、禍々しい。
「昔の特撮の色っぽい悪の幹部かよ!」
俺は思わずそう叫んだ。
「えっ、このタイミングでその指摘!?」
レイさんが彼女の立場としては正当な突っ込みを入れる。
「何ですか、特撮って?」
ダリオさんが不思議そうに俺に訊ねる。
「えっと、地球で流行ってる物語で……説明難しいな。でもレイさんは知ってるんですね」
「まあ……ヨミケにあったから」
レイさんはいまさら恥ずかしくなったのか、胸元を隠し照れた表情になりながら応える。
「ああ、支部長の所にソフビとかもありましたもんね。とは言えそのチョイスはどうなんすか?」
レイさんはスタイル良いし骨水着そのものはセクシーだ。だがこの手の格好はもう少し年上のお姉さんタイプが着てこそのもので、彼女に合っているとは言い難い。
「だって! 姫様はリボンみたいな紐やし、シャマーねえさんは葉っぱビキニやん? それを上回るセクシーさとオチに足るボケを出さなアカンと思ったら……」
レイさんは選択時の混乱を思い出すように言う。
「ウチかて迷走してるとは思たもん! でもショーキチにいさん今日は攻めてるし……」
いやだからそれはレイさんが自分で勝手に決めた障害だって!
「別に攻めては……。あれ? 『リボンみたいな紐』と『葉っぱビキニ』って何すか?」
ふとレイさんの言葉の中の不穏な単語に気づき訊ねる。
「支払いしてきたー。どうしたのみんな?」
そこへシャマーさんが帰ってくる。
「お帰りなさい、シャマー。そうだ、ショウキチさんが私たちの水着も確認したいみたいですよ?」
いやそう言ったつもりはないんだが……と否定するより先に、ダリオさんとシャマーさんはそれぞれの荷物の中から何かを取り出した。
ダリオさんは赤いリボンでシャマーさんは葉っぱだ。いや違う、正確に言えばリボンで肝心な部分だけ隠すタイプの過激な水着と、同じく葉っぱで肝心な部分だけ隠すタイプの危ない水着だった。
「もしかして、お二方はサッカードウの試合で負けた場合は、それを着てセンシャをするつもりでいらっしゃる?」
「ええ。ショウキチさんも称賛して下さった可愛い水着ですし」
「別にセンシャだけじゃなくて、お願いしてくれたらこれでショーちゃんの部屋を掃除してあげても良いけど?」
ダリオさんとシャマーさんは何を当たり前の事を? と言った表情でそう応えた。
「えっと、誰が称賛と?」
「ショウキチさんが」
「ショーちゃんが」
「僕が?」
「ええ」
「うん」
そう言われてみれば俺がしたんだよな。実際は見もせずに。
「で、レイさんはそれを越えるインパクトを出そうとして、それを?」
「分かってるて! 滑ってんのやろ! もう恥ずかしいから脱ぐ!」
自暴自棄になったレイさんはそう叫ぶとそのまま上の手から脱ぎ捨てようとする。
「あわわ、ストップストップ!」
「レイちゃん落ち着いて!」
「ショウキチさん、謝って下さい!」
三名の人間とエルフの大人は慌てて未成年のエルフを宥めにかかった。
「ごめんレイさん! 古いけど悪役っぽくて良いですよ!」
「私はさっきからスタイリッシュだと思うと!」
「ショーちゃんもダリオも死体蹴りはやめー!」
俺達の言葉により表情を歪ませたレイさんを見て、シャマーさんが止めに入る。
「すみませんレイさん! 俺、実は競泳水着の方が好きです!」
こうなったのは俺のせいだ。全く見ずに褒める事でこの難局を乗り越える……という安直な手に走った俺の。
「え? そうなん?」
なので、恥を忍んで本当の好みを伝える事にした。
「はい。レイさんみたいな引き締まったボディには、白い競泳水着が似合うと思います。それは辞めて、白競泳にしましょう!」
ダリオさんシャマーさんが
「あら、まー大胆ねー」
という表情で笑いを堪える中、そう言ってレイさんの表情を伺う。
「そうなんやー。ウチのボディ、引き締まってる?」
レイさんはからかうような口調でそう訊ねてきた。
「はい、引き締まってます」
「いつの間に見たん?」
「まあ、ぼちぼちと」
今やレイさんは全開で楽しそうで、俺は羞恥で真っ赤だ。
「ウチの競泳水着姿、見たい?」
「すっごく見たいです」
恥ずかし過ぎて目は合わせられない。だがレイさんの機嫌が治っているのは分かる。
「そうかー。しゃーないなあ。じゃあそっちにしたるわ」
「はい、そうして下さい」
いや正直、秒で機嫌が治るのは助かるが。
「ほな一番、格好良い競泳水着とってこよっと」
レイさんは悪役骸骨水着姿のまま、売場へ向かった。もう突っ込む気力はない。
「あ、私もー」
「私もそうします。両方買えば良いですね」
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