上 下
7 / 9
悪が舞い降りた日

7話目 能力

しおりを挟む
 リリム、ビアンカはそれぞれ自分の素魔法スマホ能力アプリをタップし開き、オンにして戦闘態勢になる。戦闘時には自分の武器や体に素魔法スマホを付けたりすることで能力が発動する。

 異形の女は二人の殺気に気付いたのか両手を止める。
『なぁにぃ?なんでぇ?なんでなのぉおお?!ワタシはぁマジメにオシゴトォしてるじゃあないいいいい!!』

 異形の女は殺気に気づきビアンカ達を見て泣き叫ぶ。細長い両手で顔を覆い天を見上げる。膨れたお腹には入りきれなかった男性の両足が垂れていた。

『しね、しね、しねぇえ……。ぇしねぇえええええ!!』

 叫ぶと同時に異形の女はビアンカ、リリムに向かって突進し手を叩きつけた。二人は間一髪それぞれ左右に避ける。叩きつけた衝撃で地面がひび割れていた。

 置き去りにされた沢山の人が入っていて、見ると何人かはかろうじて生きている人がいるカート、異形の女のパンパンに詰まったお腹に入ってる人を見て避けたリリムは首を傾げる。

『チッ。肉弾戦か。いいねぇ、いいねぇ!』

『リリム!大丈夫?!ってかなぜ首を傾げるていの?』

 リリムと反対側に避けたビアンカが心配する。

『あ?!いや、人沢山集めて気持ち悪りぃな!何か仕事してるのか?それともしているつもりなのかぁ?訳分かんねぇ奴だぜ』

 そう言うとリリムは左手に装着してある素魔法スマホ能力アプリを開きタップしてオンにした。

『憂闇』

 するとリリムから白い煙みたいなオーラが出始めた。

『凝黒!』

 リリムはそう言うと白いオーラが左手に集まって棘のついた棍棒を出現させた。

 憂闇ゆうやみ。リリムの能力アプリ。闇に関連する攻撃、行動を行う事が出来る。なぜ闇なのに白色なのかは分からない。

『さぁバトルの開始だっ!』

 リリムは目を輝かせ異形の女に正面から突っ込む。

『イイコだからぁね。そぉれぇ髪射はっしゃあぁぁ』

 異形の女は向かって来るリリムに右手の人差し指を差す。すると黒い何かが太い一本の束となりリリムに向かって来る。

『リリム!!気をつけて!あの化け物、能力アプリ使ってるわよ!!』

 ビアンカはリリムに向かって叫んだ。

 リリムはビアンカの声に反応したもののリリムの右足に黒いものが巻きついた。リリムは足を取られ正面から倒れた。

『ってぇ~な!おいっ!!あぁ?……何だこれ?毛か?』

 鼻血をだしながら右足に目を向けると髪の毛が強く締め付けていて血が出ていて滴り落ちる。リリムは右足を締め付けている髪の毛を引きちぎる。


『オアソビのぉおじかんよぉおおお!おいでぇかみぉ』

 異形の女は床まで続いている髪の毛を手で引きちぎり空に向けて広範囲にばらまいた。するとばら撒いて地面に落ちた髪の毛から人の子供ような形をしたものが大量に形成される。

『ちょっとリリム大丈夫なの?!出血してるじゃない!!』

 ビアンカが倒れているリリムに駆け寄り膝をつく。

『あ?イケるイケる。しっかしスゲー数だな、あれ。どーするよ?』

『どうやらあの化け物は髪の毛を使った能力アプリのようね。あれを見て。お腹の中に素魔法スマホがあるわ』

 ビアンカは異形の女の裂けたお腹に指を差す。

『はぁい!あのコらがオニさんたちよぉお!スタートぉおおおおぉおおお!!』

 異形の女が手を叩くと髪の毛で出来た子供達が一斉にリリム達に四方八方襲いかかる。

『チッ!!おい、大丈夫だよな??!』

『任せてといて!大丈夫よっ!!!!』

 ビアンカはその場で剣を空に向けてかざす。しかし何も起こらない。ビアンカの額には汗が光る。

『おいおいおいおいおいおい!!どうなってるんだ?ビアンカさんよ!』

 リリムは叫んだ。

『大丈夫だから!』

 まさに髪の毛で出来た子供達が襲いかかる寸前だった。

 その時


 地中から草で出来た人の形をしたのがビアンカ達の周りから沢山出現した。

『ビアンカサマハワレラガマモル……』

 人の形をした草の一人がビアンカに語りかけた。すると出現した人の形をした草達は異形の女が出現させた髪の毛で出来た子供達と戦いを始める。

『お?ようやく発動したか。ヒヤヒヤさせやがって。ったくお前の能力アプリは面倒臭ぇよな。草が生えるわ!』

 リリムはビアンカの頭を割と本気で叩いた。

『痛っ?!何で強く叩かれなきゃいけないのよ?!これはおかしいでしょうよ!!』

 ビアンカは顔を真っ赤にしツインテールを鬼の角のように逆立てて冗談半分で叩いた嘲笑うリリムを睨みつける。

 王女の資質。ビアンカの能力アプリ。地面から『優民』を召喚出来る。『優民』は日々の行いが良いとピンチの時に自動で出現し守ってくれる。召喚に応えた後はビアンカの寸分の狂いも無く思いのまま操る事が出来る。『優民』は地面から出来ていて、その時の地面の性質で攻撃方法等が変化する。
 
『エ?ナニィ?ナンなのよぉぉぉお!!』

 それを見た異形の女は叫びながら両手で顔を覆いその場で崩れ落ちた。

『ビアンカ。ここは任せるぜ。私は奴の玉ぁ取ってくる』

 リリムはビアンカの返事を聞く前に戦闘中の草の兵士達と髪の子供達を避けながら奥にいる異形の女に向かって突っ込む。

 向かって来るリリムに気づいた異形の女は右手人差し指をリリムに向ける。

『はあぁい。髪射はっしゃぁぁ』

 髪の毛が太い一本の束となりリリムへ向かって来る。

『へっ!2回は喰らわねえっ!!』

 リリムは右に避けようとする。 

 しかし

『ひらいてええぇぇ♪』

 束となっていた髪の毛が広がり避けようとしたリリムを包み込んだ。

『リリムッ!!』

 ビアンカは叫ぶ

 異形の女はリリムが入った髪の毛の根元部分を持って鉄球のように振り回し始める。

『結んでぇえひらいてぇええ~……♪』

 ドゴッッ!!!

 震えた声で歌いながらリリムを包んだ髪の毛を地面に叩きつけた。その風圧で地面に生えていた草が宙を舞う。

『うぅ……イイコだからぁね』

 異形の女はリリムを捉える為にペタペタと足音をたてながら近づきリリムを包み込んだ髪の毛を解こうとする。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

苗床の魔女

Ruon
ファンタジー
魔物によって人の住まう領域ではなくなった捨てられた"外の世界"。 そこに捨てられた少女アーシャはオーク族に拾われ魔物として育てられたがオーク族の長はなにか企みがあるようで……? 〘※当作品は異種姦、孕ませ、暴力シーンがあります〙

異世界パチ屋~ギャンブルで異世界をハッピーに!?やれるかやれないか?やるんだよ!〜

音無響一
ファンタジー
チートなんていりません。異世界って日本よりつまんないですよね。 剣?魔法?楽しいんですかそれ? 魔王を倒す? 倒した後どうするんですか? やっぱりつまんないですよね。 神様、だからチートよりパチ屋を作れるようにしてください。 異世界で無双することよりもパチ屋を作りたがる変な男の異世界珍転生。

vamp"D"

物書未満
ファンタジー
ネットの噂をもとに異世界へと繋がる場所へふらりと訪れた主人公。 特に現世に未練のない39歳の男がマイナスステータスを背負い、健康も名前をも犠牲にして代わりにギフトを得て異世界で冒険する。 そんな物語。 (旧題:アラフォーおじさんは闇夜に駆ける-健康を犠牲にギフトを得て異世界冒険ライフを送る様です-)

/// Tres

陽 yo-heave-ho
ファンタジー
 この物語は、大昔の別世界バルハラを舞台に、軍や特権階級から盗みを働き、<三本傷>を残す'義賊'紛いの盗賊の…復讐活劇。  そして、盗賊と出会い、様々な運命に翻弄されながらも真っ直ぐに生き、道を切り開いていく女海賊の軌跡──  修理士キースと代筆屋スタン、そして給仕のエド。偶然出会った三人だが、或る時エドはキースの秘密を知ってしまう。  修理士は表の顔、裏は…バルハラ中で噂される三本傷の盗賊!キースに協力するスタンは情報屋であり、エドも実は女で…しかも海賊!?  三人の出会いと同じく、盗品探しに軍人が動き出す。彼の名はジェラルド、盗んだ張本人のキースと知り合いらしい…??  盗賊・海賊・情報屋・軍人。  四人が行き着く先は亡国アルムガルドの秘宝<王族の時計>──  その秘宝こそキースの復讐の原因であり、ビアンカの運命を握るものだった。 ----- さて、新篇スタートです。 四.五? 否…第四篇'裏'でございます。 終幕を迎えるために、鐘を鳴らしにいくぞ! ※補足 或る人物の名前(正確にはあだ名)について。こちらの世界ではタブーとされているものですが、現実世界の実在人物・団体・歴史などとは一切関係ありません。 名前は名前であり、「/// Tres」の世界では普通の名前ですので、念の為記載致します。 各篇の登場人物は、途中途中で更新しています。 ネタバレとなる場合がありますので、ご注意ください。 遅筆で、各話やや長文ではありますが、楽しんでもらえたら何よりです。 *他掲載サイト エブリスタ、小説家になろう、Nola(一時停止中) *Twitter 陽 @yo_heave_ho *All illustrations by Aoi Nakamura (kawao.psuke@gmail.com) いつもありがとうございます!

【R18】セクスギア 奥にイクほど 気持ちイイ(伝説の冒険者は語る)

蛙壺
ファンタジー
「なんでみんな、ルームでヤるくらいで満足できるんだろうな」 触覚に特化したVRデバイス、通称『セクスギア』。 これを使用するVRMMORPGの中で、その男女はひたすらにダンジョンの最奥をめざしていた。 危険の中でヤるのが大好きだから。 ただ、それだけのために。 ※投稿ガイドラインに沿って執筆しております。

生まれたからにはアイデンティティ壊されたくないよね!

虹の番人兼シチ
ファンタジー
時代は中世。この世界では3つの性がある。男性と女性とそして───無性。 ある島から新しい自分を探すため数少ない財産と食料、船を持ち4人が旅を始めた。島の人達に見送られながらこれから始まる旅に胸を踊らせていたが。 皆さんこんにちは!この物語はファンタジーです!頑張ります!まぁ、ちょっと残酷な部分もあるのでR指定にしました!これからのんびりと書いていこうと思うので応援よろしくお願いします!

【R18】淫魔の道具〈開発される女子大生〉

ちゅー
ファンタジー
現代の都市部に潜み、淫魔は探していた。 餌食とするヒトを。 まず狙われたのは男性経験が無い清楚な女子大生だった。 淫魔は超常的な力を用い彼女らを堕落させていく…

【R18】イキ戻りの姫とカタブツ勇者

蛙壺
ファンタジー
クリスティ姫は『イキ戻り』体質だった。 どんな最悪の事態でも、イッてしまえば時間を巻き戻すことができる。 キスで、事前にセーブした場面まで。 「こんな結果をあなたは許せるのですか? さあ、過去を変えたいならわたしをすぐにイカせなさい。……あ、キスは上書きされるからダメよ」 カタブツ勇者はその要求に応えられるのか? ※投稿ガイドラインに沿って執筆しております。

処理中です...