上 下
3 / 9
悪が舞い降りた日

3話目 優しい罰

しおりを挟む
リリムはお店へと向かう。

 シックスバリュー。地域密着型のお店だ。

 店内に入って渡されたくしゃくしゃの油付きのメモ用紙を見て

『チッ。素魔法スマホがあるからアプリでお使いお願いしろよな。あのアナログ豚野郎~』

 ため息交じりにブツブツと言った。

 店内は白を基調とした雰囲気で商品はジャンルごとに整理整頓されている。防犯カメラはない。必要がないからだ。

 理由は犯罪が数十年間一件もない。みんな優しいから。助け合って、時には我慢して、譲り合って生きている。警察もいなくなった。世界は統一されたのだ。

 白ジャガイモ、白醤油、白い豚肉…

 リリムはメモ用紙に書かれた商品を手に取りかごに次々と投げ捨てていく。

 店内を我が物顔で歩いて見て回っていると

『…やだ、あの人メモ用紙を持って買い物してる…』

『今時アナログだなんてねぇ。素魔法スマホ持ってないのかしら?』

 遠くから商品棚越しに二人のクソが私を差別するような目で見ている。

 クソA
『メモ用紙ってさぁ古いよわねぇ。まだいたんだ。この時代に』

 クソB
『あなた教えてあげたら?あの子に素魔法スマホの使い方を?』

 クソA
『嫌ぁだ!話かけるだけでも無理よぉ』

 クソB
『そうよね~、ウフッフッフ…』

 遠くだから聞こえてないと思ったのかゲラゲラと喋っている。

 プツッ

 何か引っ張って切れたような感じの音が頭からした。

 聞くために立ち止まって商品を眺めていたフリをしていたリリムは一瞬にして二人組の女に近づいた。

 クソA
 クソB
『ヒェッ?!』

 と目の前に現れたリリムに上半身をのけ反らせた。

『何か私にご用ですか?』

 目は笑顔で瞳は二人を睨み付けてるリリム。格好は仁王立ちに近かった。

『い、いぇ…メモ用紙でお買い物なんてす、素敵だなぁておお思ってね。ね!』

『そそそそうよ!立派、立派!』

 間を置きそれを聞いたリリムはポケットから素魔法スマホを取り出し

『わたし、素魔法スマホが苦手で…使い方教えて頂けないでしょうか?』

 素魔法スマホを顔に近づけニッコリと作り笑いをした。

『?!そ、そそそその素魔法スマホは!』

『あなたっ!し、し、白い素魔法スマホなの?!』

 二人は両手を合わせて仰天した。

『教えて頂けませんか?』

 一歩二人に踏み込むリリム。

『ねぇ教えてよ?』

 低いトーンで良い放つリリム。

『ご、ごめんなさい!私知らなくって!すみません、すみません、すみません!!』

『おおお許し下さいー!い、命だけはお助けを!!』

 二人は涙声に発言すると同時に土下座をし、動悸、息切れ、汗だくになりながら謝罪した。

 周囲が風を受けた木みたいにざわつく。リリムは暫くして満面の笑みで

『じぁあさ、誠意を見せて?』

 と土下座している二人を覗き込むように上半身を左右に揺らしながら言うリリム。体を揺さぶる度に頭には鬼の角のような二つの寝癖がフリフリと動く。

『はい!分かりました!!何をすればよろしいでしょうか?!』

 それを聞いたリリムは履いていたスニーカーの片方を脱ぎ、黒色靴下も片方脱いだ。素肌が露(あらわ)になった左足を二人の頭に向け

『足、舐・め・て♪』

 二人は呆然とした表情でリリムの顔を見上げた。

『は、はいー!!』

 その後二人は躊躇もなくリリムの足に手を添えてむしゃぶりついた。

 リリムは顔面が裂けそうな笑みで

『臭ぇ~だろ?どうだ?あ?』

 二人はただただリリムの足を舐め回す。足の下と二人の顔下には唾液が滴り落ちていた。

 満足したのか

『はい、終わりぃ~。ありがとさん』

 二人のから一方的に足を引き離し靴下、スニーカーを履き始めた。

 この異常な光景でも周囲は何も出来なかった。

 リリムが履き終えて周囲を見渡し

『どなたか私の足を舐めたい人いませんか?』

 と言い放った。すると

『自分も!』

『私も是非とも!!』

『ぼ、ぼ、ボクも!』

 その場にいたお客も店員も一斉にリリムに攻め言った。

 リリムの足に群がる人々を見てリリムは

『今度はくるぶしを舐めてもらおうかなぁ~』

 そう見下しながら言い放った。



 お店の入り口前

『おばあちゃん!今日のご飯は何かなぁ!?』

『何だろうねぇ…。お母さんにお聞き』

『今日はステーキよ。久しぶりにおばあちゃんの退院祝いにね』

『ヤッター!じぁあボクが今日は車椅子押してあげるね♪』

『ありがとねぇ~良い子やねぇ』

 会話に家族は花を咲かせながら店内に入っていった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

苗床の魔女

Ruon
ファンタジー
魔物によって人の住まう領域ではなくなった捨てられた"外の世界"。 そこに捨てられた少女アーシャはオーク族に拾われ魔物として育てられたがオーク族の長はなにか企みがあるようで……? 〘※当作品は異種姦、孕ませ、暴力シーンがあります〙

異世界パチ屋~ギャンブルで異世界をハッピーに!?やれるかやれないか?やるんだよ!〜

音無響一
ファンタジー
チートなんていりません。異世界って日本よりつまんないですよね。 剣?魔法?楽しいんですかそれ? 魔王を倒す? 倒した後どうするんですか? やっぱりつまんないですよね。 神様、だからチートよりパチ屋を作れるようにしてください。 異世界で無双することよりもパチ屋を作りたがる変な男の異世界珍転生。

vamp"D"

物書未満
ファンタジー
ネットの噂をもとに異世界へと繋がる場所へふらりと訪れた主人公。 特に現世に未練のない39歳の男がマイナスステータスを背負い、健康も名前をも犠牲にして代わりにギフトを得て異世界で冒険する。 そんな物語。 (旧題:アラフォーおじさんは闇夜に駆ける-健康を犠牲にギフトを得て異世界冒険ライフを送る様です-)

/// Tres

陽 yo-heave-ho
ファンタジー
 この物語は、大昔の別世界バルハラを舞台に、軍や特権階級から盗みを働き、<三本傷>を残す'義賊'紛いの盗賊の…復讐活劇。  そして、盗賊と出会い、様々な運命に翻弄されながらも真っ直ぐに生き、道を切り開いていく女海賊の軌跡──  修理士キースと代筆屋スタン、そして給仕のエド。偶然出会った三人だが、或る時エドはキースの秘密を知ってしまう。  修理士は表の顔、裏は…バルハラ中で噂される三本傷の盗賊!キースに協力するスタンは情報屋であり、エドも実は女で…しかも海賊!?  三人の出会いと同じく、盗品探しに軍人が動き出す。彼の名はジェラルド、盗んだ張本人のキースと知り合いらしい…??  盗賊・海賊・情報屋・軍人。  四人が行き着く先は亡国アルムガルドの秘宝<王族の時計>──  その秘宝こそキースの復讐の原因であり、ビアンカの運命を握るものだった。 ----- さて、新篇スタートです。 四.五? 否…第四篇'裏'でございます。 終幕を迎えるために、鐘を鳴らしにいくぞ! ※補足 或る人物の名前(正確にはあだ名)について。こちらの世界ではタブーとされているものですが、現実世界の実在人物・団体・歴史などとは一切関係ありません。 名前は名前であり、「/// Tres」の世界では普通の名前ですので、念の為記載致します。 各篇の登場人物は、途中途中で更新しています。 ネタバレとなる場合がありますので、ご注意ください。 遅筆で、各話やや長文ではありますが、楽しんでもらえたら何よりです。 *他掲載サイト エブリスタ、小説家になろう、Nola(一時停止中) *Twitter 陽 @yo_heave_ho *All illustrations by Aoi Nakamura (kawao.psuke@gmail.com) いつもありがとうございます!

【R18】セクスギア 奥にイクほど 気持ちイイ(伝説の冒険者は語る)

蛙壺
ファンタジー
「なんでみんな、ルームでヤるくらいで満足できるんだろうな」 触覚に特化したVRデバイス、通称『セクスギア』。 これを使用するVRMMORPGの中で、その男女はひたすらにダンジョンの最奥をめざしていた。 危険の中でヤるのが大好きだから。 ただ、それだけのために。 ※投稿ガイドラインに沿って執筆しております。

生まれたからにはアイデンティティ壊されたくないよね!

虹の番人兼シチ
ファンタジー
時代は中世。この世界では3つの性がある。男性と女性とそして───無性。 ある島から新しい自分を探すため数少ない財産と食料、船を持ち4人が旅を始めた。島の人達に見送られながらこれから始まる旅に胸を踊らせていたが。 皆さんこんにちは!この物語はファンタジーです!頑張ります!まぁ、ちょっと残酷な部分もあるのでR指定にしました!これからのんびりと書いていこうと思うので応援よろしくお願いします!

【R18】淫魔の道具〈開発される女子大生〉

ちゅー
ファンタジー
現代の都市部に潜み、淫魔は探していた。 餌食とするヒトを。 まず狙われたのは男性経験が無い清楚な女子大生だった。 淫魔は超常的な力を用い彼女らを堕落させていく…

【R18】イキ戻りの姫とカタブツ勇者

蛙壺
ファンタジー
クリスティ姫は『イキ戻り』体質だった。 どんな最悪の事態でも、イッてしまえば時間を巻き戻すことができる。 キスで、事前にセーブした場面まで。 「こんな結果をあなたは許せるのですか? さあ、過去を変えたいならわたしをすぐにイカせなさい。……あ、キスは上書きされるからダメよ」 カタブツ勇者はその要求に応えられるのか? ※投稿ガイドラインに沿って執筆しております。

処理中です...