異世界をつなぐ契約者

楓和

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第2章・第4話「そして知ったんだ」

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俺はネネコに場所を聞いたチュウガン村まで、何度もジャンプを繰り返して向かっていた。
だが…

 《…着いた後の事はついてから考えたら?》
 「はははっ、ごもっとも。」

冷静な奴だな、リョクヒは。だが確かに言う通りだ。
今は何も考えず、出来る限り早く到着するんだ。


 朝日…か。夜だったから道が分かり辛くて時間掛かっちまったな。

 《ネネコの話しだと、もっと端の方ねー》

チュウガン村と思われる所に着き、早速俺達はザンジーの家を探した。そして…

 「これか。」

それはネネコから聞いた通り、赤茶色い屋根の上に風車がある家だった。
早速カギを壊して中に入ったんだが…埃くせぇ。ゆっくり動かないと、埃が舞い上がって目と喉が痛くなるな。

 《分担して調べよう》

カウムが出て来た。が…お前なぁ、ゆっくり動けって言わなかったか?

 「げほっ!」
 《がんばろー》
 《おー》

リクウとリョクヒも出て来たんだが…だからお前ら、ゆっくりって…

 「がはっ!げふっ!」
 《大丈夫~?》

リクウ…分かっててやったな…。
口と鼻を覆う様に手拭いを巻いておこう。…始めから巻いときゃ良かった。

 「とにかく俺が片っ端から本を出していくから、お前らは中を見てくれ。」

こうして俺達の作業が始まった。


 あまりに多い本の数…もう昼は過ぎてる。少し腹も減って来たが…あいつらも真剣に調べてる。もう少しやるか。

しかし………ロックの症状を改善する記述どころか、ロックの様な状況になった記述すら見付からなかった。

 「くそっ。」

焦っても仕方がないが…ただ時間だけが過ぎて行くのはキツい。
ロックの方はどうなってるか…もしかしたら…いや、駄目だ。最悪の事まで考えてしまう。

 《……妙だ》

カウム?

 《リクウ、リョクヒ…契約に関する本はあったか?》
 《うーん…精獣と契約出来るって事が書いてあるのは見たけど、契約について細かく載ってた本は見てないよー》
 《同じく》
 「ん?どういう事だ?」
 《ロックはザンジーから契約については詳細に聞いていた。しかし…》
 《契約についての細かい記述の本が無いねー》

カウム達がいう通り、そうなると確かに妙だな。

 「じゃあ、ザンジーはどこかで集めた情報からそう考えただけなんじゃ…」
 《いや、ザンジーは契約の文言や契約の条件について詳しすぎる。恐らくは文献、最低でもメモがあるはずだ。だがそれが一切無い》
 「つまり…」
 《どこかに隠されている。あと、過去にどこかの王が精獣の力を悪用したという話しをしていたが、そんな本も無い》
 「じゃあ、それらの本はどこかに隠されている…そういう事か。」

どこに?いや、ここに無い可能性だってあるのか。どうすれば…

 《落ち着け。元より、ロックが陥った症状についての本など、有るか無いかも分からずに来たのだ。無くて当然、有れば幸運…そんな思いで来たんだろうが》

それは…そうだが。

 《ジュウビ、少し外の空気を吸おーよ》

気分転換か…悪くない案だな。


 俺達は外に出て、太陽の光を浴びた。
しかし、こうしてる間もロックが苦しんでいると思うと…また直ぐに家の中に入ろうと考えてしまう。
そんな時だ。

 《待て》

カウムが俺を止めた。

 「どうしたカウム。まだ日向ぼっこがしたいのか。」
 《もー、子どもだねぇカウム》
 《俺の方が数日年上だ》

マジで返すカウムに、リクウはデカい口を薄っすら開いて苦笑いだ。

 《俺がいいたいのは…あれだ》
 「あれ?」

俺達はカウムが首を上げて示した方向に目をやった。

 「……………これは?」

しばらくして、やっと気付いた。この家の大きさが奇妙な事に。

 《奥に…もう一部屋あるね》

リョクヒの言葉に、皆がうなずく。

 「…行くぞ。」

俺達は再び家に入り、一番奥の部屋へ移動した。
それから部屋の突き当りにある本棚を調べたら…本棚の一番下に並べられている本の題名に気付いたんだ。

 「みんな、これを見てくれ。一番下の本…頭文字を右から順に読んだらどうなる。」
 《『裏』と『秘密』…の意味になるな》

俺は本を除け、奥を見た。そこには穴が見えた。更に上の段とさらにその上の段の本も除け、棚を取り除けば…少し小さいが扉が露わになった。
扉を開けると奥は真っ暗だったんで、カウムが鼻先に小さな火を灯し、先頭になって入った。

 「これは…」

俺達も後に続いた。
そこにはまた、本がギッシリ詰まった本棚が並んでいた。あと、テーブルがいくつか並んでいて、その上には奇妙なアイテムが数多くあった。

 《何か役に立つような特殊な物があるかもしれん》
 《探索開始ー》

こいつらってホント元気だよな。

 《そう言いながら空腹でも頑張るジュウビ》

うるさいぞ、リョクヒ。

 「とにかく急ごう。」

俺達は部屋の中にある、ありとあらゆる物を調べた。
そして知ったんだ。俺達も知らない、精獣についての数々の事柄を…。
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