龍青学園GCSA

楓和

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第4章の14「今までの戦いは何だったんだ?!」

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 白仮面対ブラックマスクの恐ろしいビリヤード対決が繰り広げられた日の晩。
竜沢は七月と電話で話していた。

 「白仮面が勝ったみたいだったが…結局何がどうなったのかよく分からなかったな。」
 「魂抜けてたもん。何となーく覚えてる会話から想像すると、白仮面とブラックマスクは昔の知り合いって感じだったよね。」
 「それは確かに。しかも仲悪そうというか、ブラックマスクが一方的に嫌ってたというか…」
 「そんな感じだったね。」

実は竜沢、話しながらずっと構えていた。七月が『私も行く』と言い出すと思っているからだ。

 〝おかしいな?触れてこない〟

しかし何故か一言も出て来ない。

 「あ、そうだ…神ちゃん。」
 〝き、きたか…〟

竜沢はどう諦めさせるかを考えていた。七月は確かに強い。流香も学美も強い。それこそ自分と比べても遜色無いだろう。しかし、それでも女の子を危険だと分かっている場所に連れて行くのは、竜沢には受け入れ難いのだ。

 〝どうにかして諦めさせねば〟

七月を抑えられるか、竜沢!

 「やっぱり深雪先生のこと、助けたい?」
 「へ?!」

想像と違った。

 「深雪先生、綺麗だもんねー。」
 「はぁ?あー…いや、まぁ…」

竜沢は予想を遥かに超越した七月の言葉に対し、戸惑いを見せながらも何とか答えようとする。が…普通に答えて、もし七月が『深雪先生の事が好きなんだ』と誤解したらどうしよう?と思い始めた。

 〝こ、これはこれで迂闊に答えられんぞ!〟

七月に対する想いを伝えるかどうかで迷っている竜沢だが、それ以前に『綺麗なら誰でも良い』的な感じに捉えられても困る。ただでさえ日頃そんなキャラなので誤解され易い。しかし…

 〝いや、別に伝える気がないならどう捉えられても構わないのでは?誤解されようが何だろうが関係ないのでは?…いやいや、やっぱり何か嫌だ〟

竜沢は、迷い道妖怪に迷路に閉じ込められる一歩手前。

 〝こ、甲がやってたゲームに出てくる迷い道妖怪か?!くそっ!〟

勝手に妄想の世界で迷い道妖怪と対峙する竜沢。緑色の肌に曲がり尖った角が二本、鋭い目で竜沢を睨み、『ケケケ』と笑う迷い道妖怪。

 〝くっ、こいつ…強い!〟

迷路に閉じ込められました。

 〝こ、こうなりゃここでいっそ伝えるか、気持ちを!〟

深雪先生よりお前の方が綺麗だぞ……………一瞬でもアホなセリフを思い浮かべた自分を心で殴る竜沢。目前には迷い道妖怪。

 〝だ、駄目だ!迷い道妖怪に侵されているんだ!〟

いや、勝手に奈落に落ちている。

 〝何をどう言えば良いのか分からんようになってきた!ちっ、パニックになるな竜沢神侍!それこそ迷い道妖怪の思うツボだ!〟

もう十分思うツボである。いや、そもそも迷い道妖怪は居ない。

 「まぁ、あそこで神ちゃんが深雪先生の事を放っておくなんて言ってたら、それはそれで嫌だったけどね。」

竜沢が迷い道妖怪と戦っている間に話しは進んだ。

 「お、おうぅ…」

中途半端な返事になってしまう竜沢。

 「ん?何か変だよ?どうしたの神ちゃん。」
 「ん?何か変?」

オウム返しっぽくなってしまった。しかし竜沢は思った。これでもう迷い道妖怪と戦う事もないだろう。
さて、後は七月がどう出るか。『私も黒点塾に行く』と言ってきたらどうやって回避するか…それだけである。

 「ん~…さては神ちゃん、深雪先生の事が好きだったり…とか?」
 〝な、何でそうなる?!〟

再び迷い道妖怪が竜沢の前に現れた。『ケケケ』と笑う迷い道妖怪。

 〝くそ!今までの戦いは何だったんだ?!〟

初めから無駄です。いや、そもそも戦ってなどいない。

 「なら、明日頑張って深雪先生を助けるんだよ?じゃあ、おやすみー。」

プチ。

 「…………………え?」

竜沢は色んな意味で呆けた。

 「ん?おい、顔が土みたいな色になってんぞ?どした?」

立ち尽くす竜沢に声を掛ける暮巴。竜沢は黒点塾との戦いの前に、迷い道妖怪に敗れた…。

 明朝六時、黒点塾に突撃するメンバーは竜沢、甲の二人。甲は鏡との試合で複数の打撲を負っているが、ダメージ的には軽い。隆正は左腕の骨折に加え右足を捻挫、鏡はブラックマスクに左腕をやられている。だから竜沢は甲と二人で行くつもりだった。だが、竜沢は今かなりの精神的ダメージを受けた…。
いよいよ黒点塾との最終決戦だが…こんなんで大丈夫か?!竜沢よ!
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