龍青学園GCSA

楓和

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第3章の1「求めてないです」

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 抹紅中学校との湯飲み茶わん争奪杯を勝利した龍青学園。
その勝利に大きく貢献したGCSAであったが、ゆっくりと学園生活を過ごす間もなく次の魔の手が迫っていた…


 学園都市最南にある中学校、グレート・ジュニア・ハイスクール。
グレーのジャケットに白いシャツ、赤いネクタイに紺のズボンが制服のこの学校は、学園都市内の中学校では唯一の男子校である。

 「ははっ♪斑尾のおっさん達には、はじめから無理だと思ってたよ♪」

音楽室にいた男子生徒が、軽くリズムに乗った話し方でそう言った。女性のような華奢な体格で、その目は大きめ、そしてまつ毛が長い。あごのラインもシャープ。髪もサラサラでやや長め。美男子を絵に書いたような男だ。
だがその外見から想像するような性格ではない事が、並べた机の上に座っている事で分かる。壁に背を付け、足を組んで踏ん反り返っていた。ネクタイは思い切り緩めていてだらしない。左手には音楽プレーヤーを持ち、少し小さめのヘッドホンをしている。

 「オーイエー!音根の予想通りだったネ!」

やかましい白人『マイケル・ブリオ』が、音楽を聞いている男『音根(おとね)利住(としずみ)』に言う。同じ制服を着ている事からもグレートの生徒である事が分かる。音根と違いネクタイはきっちりと着けていた。青い目に金髪…しかし美形ではない。モミアゲと顔が濃く、彫りが深い。音根も背は高い方ではないが、その音根よりも背が低い。

 「GCSAに…川波鏡に勝てるのは、この僕だけだ♪」

音根は笑みを浮かべた。

 「ミーも手を借りマース!」
 「貸す。」

うるさいブリオに突っ込みを入れたのは、ずっと音楽室の角に無言で立っていた黒人の大男『ガーデン・フォーター』である。こちらはネクタイすらしていない。への字の口を開き、一言話した後その口をへの字に戻す。そしてその線のように細い目を一瞬見開き、またすぐに目を細めた。

 「オーっ、そうでした!ハッハァ!」

やはりやかましいブリオ。

 「さぁ行くよ、ブリオ♪フォーター♪奴らを…潰しに。」

リズムにのって華麗に机から降りて音楽室を出る音根と、それに続くブリオとフォーター。この三人、只者ではない…か?


 「何で起こしてくれなかったんだよ!」

着替えながら文句を言う竜沢。ここは竜沢の家である。

 「何言ってんだっ。出掛けるとは聞いてたけど何時にとは聞いてないよ。」

やや強めの口調で言い返しているのは、大きめの黒いシャツに、下半身は下着姿のままでソファに座っている竜沢の姉『竜沢暮巴(くれは)』。顔は竜沢を少しつり目にした感じだが、どちらかというと童顔な竜沢と違いシャープな印象の綺麗系。長い黒髪がその綺麗さを際立たせている。かなり細身で、身長は竜沢と同じくらいだ。華奢な体つきなのに雑な感じがアンバランスな魅力を放つ。

 「うう~遅れるとやばいんだよなー、昼飯おごらされるかもなー。…つーか、なんつーカッコしてんだよっ。」

この日は日曜日、竜沢は鏡達と待ち合わせしていた。

 「お?何、色気づいてんだよ。綺麗なお姉さんをもって幸せだな、おい。…ほれ。」

立ち上ってポーズをとる暮巴。

 「いや、いらない…求めてないです。んじゃ行って来るっ。」
 「ちっ、可愛くない奴。で、晩飯は?」
 「そっちは…多分いる!」

暮巴を軽くあしらい、慌てて出て行く竜沢であった。

 「『多分』ってのが一番面倒なんだよねー。ま、いいか。あいつの分はなかった事にしよ。」

そう言って暮巴はソファに寝転び、テレビを見出した。竜沢の晩飯は間違いなく作らないつもりである。


 真橙中学と抹紅中学の間に位置する、橙紅(とうこう)通り商店街。

 「遅いな。」

甲が呟く。

 「竜沢くんの事ですから寝坊でもしたんでしょう。電話してみましょうか?」
 「…いや、その必要はないようだ。」

甲の目線の先に、走って来る竜沢がいた。

 「悪いっ、寝坊しちまったっ。」

息せき切って謝る竜沢。

 「しょうがないですねぇ、お昼のラーメン一杯で手を打ちましょう。」
 「チャーシュー麺。」
 「だ~、分かったよ!」

やはりこうなったか、と思う竜沢であった。

 「それで?同じ靴を買うとか言っていたが…。」

甲が竜沢に言った。

 「おう。やっぱこの靴がいいんだ。」

竜沢のお気に入りの靴がもうボロボロになり、同じ靴を買いに来たのだ。それがこの商店街にある靴屋で購入した物であった。
甲はというと、商店街を少し外れた所に位置する、鏡の兄『川波(かわなみ)翔(しょう)』が経営するスポーツジム『ガイニナル館』に行きたいと言うのでこのメンバーになったという訳だ。決して隆正を仲間はずれにしている訳ではない。
そして三人は靴を購入してラーメンを食べた後、スポーツジムへ見学に向かった。

 「オー!奴等やっと出てきたネ!」

ラーメン屋から出て来た竜沢達を、ホットドッグを頬張りながら待っていたのはブリオとフォーターであった。

 「コウ・タニズミ。」

一歩前に出ようとしたフォーターをブリオが止めた。

 「ダメネ、目立ちすぎるよ。もっと人の少ない所じゃないとジャマが入るネ。それに…食べたばかりネ。」

口の周りにケチャップをつけて、しかもカッコ付けて言う程のセリフではない。

 「コウ・タニズミ…倒す。」

ボソッと呟く不気味な長身の黒人、フォーターであった。


 スポーツジム・ガイニナル館。

 「あっ!鏡ちゃん!」

扉を開けて入ると、受付の女性が手を振りながら駆け寄ってきた。

 「真琴さん、相変わらず元気ですね。」

この女性は『日向(ひゅうが)真琴(まこと)』。白いタンクトップのトレーニングウェアを着ており、その上に赤のジャケットを羽織っている。銀色に染めた短めの髪をした受付兼ジムトレーナーの、ボーイッシュな雰囲気をした女性である。そして…グラマーである。

 「久しぶりじゃない、どうしたの?」
 「入会希望者を連れて来たんですよ。谷角甲くんです。」

甲を紹介する鏡。

 「偉い!さっすが鏡ちゃん。あの人にも見習ってほしいもんだー。昔はバレー部のキャプテンで周囲からの人望も厚かったらしいけど…。今のグータラっぷりからは想像も出来ないよ。」

そう言って真琴は目線をジムの奥へとやった。その間ずっと竜沢は真琴の胸ばかり見ていた。

 「すいません、兄さんが迷惑かけっぱなしで。」
 「何言ってるのっ。そんな事より、奥に行ってみんなに顔見せてあげて。」
 「はい。では行きましょうか。」

鏡は竜沢達を連れてトレーニングルームへと向かった。もっと真琴の胸を見ていたかった竜沢は後ろ髪を引かれていた。

 「ほう。」

感心する甲。そこには色々な最新のトレーニングマシンがずらりと並び、健康な汗を流す人々が大勢いた。そんな中、一人だけ長椅子に寝転がっている男が…。

 「…兄さん、ちゃんとして下さい。」

寝ている男、川波翔に声をかける鏡。

 「ん?…おおっ、鏡っ!」

翔の大声に、トレーニングしていた人達も一斉に鏡の方を見た。

 「鏡ちゃん!」
 「きゃー!鏡くぅん!」
 「鏡ちゃん!久しぶりやなぁ!」

若い女性からおっさんまで、みんながみんな鏡の方へ近付いて来る。

 「あ、どうも。」

にっこりする鏡。その光景を見ていた竜沢と甲に対し、近くに居たおばちゃんが耳元で言う。

 「鏡ちゃんはねー、その辺のアイドルよか人気あんのよっ。」
 「は、はぁ…知ってます。」

バシッと肩を叩かれる竜沢。甲はうなづいていた。その時、更に隣りのおばちゃんが話し出した。

 「そう言えばこの間、鏡ちゃん並にかわいい顔した子がいたよ。グレーの学生服着た子でね、最近この辺でよく見かける様になったんだけどさぁ。」
 「えっ?どんな子どんな子?」
 「ちょっと何言ってんのよ坂井さん!鏡ちゃん以上の子がいるわけないでしょ!」
 「いや、私だって何も鏡ちゃん以上だなんて言ってないよー。」
 「鏡ちゃん並って言ったじゃないのさぁ!」
 「そうよそうよ!」
 「何言ってやがる!鏡ちゃんが一番に決まってるだろうが!鏡ちゃんは顔だけじゃねぇんだ!心も男前なんだよ!」

おっさんまで加わって、恐ろしい事になってきた。

 「お、おい鏡、止めないでいいのか?なんかエキサイトしてきたぞ。」
 「そうですね。…兄さん。」
 「ん?…おお、そうだな。」

ゆっくりと立ち上がる翔。

 「す~………よーっし!よしよし!そこまでにしよーぜ!」

一度深呼吸をしてから、誰にも負けない大声を出す翔。

 「みんな落ち着こうっ!」

翔の声に、みんな静かになった。

 「我が弟、鏡が美男子なのは分かった。俺も同じくらい男前だが…まぁ鏡が一番美男子だ!はい、鏡が世界一美男子!と、いう事で…みんな、運動再開っ。」

翔の強引さに、みんな散って行った。

 「…ふぅ、これでいいか?」
 「…よくありません。兄さん、他にやり方なかったんですか?」

恥ずかしいセリフを連発され、照れを通り越して怒りとなり、翔を睨み上げる鏡。

 「お、おぉ竜沢!久しぶりだな。で、こっちの彼は?」
 「兄さん、話しを逸らさないで下さい。」
 「う…」

鏡の冷たい視線に後退りする翔。

 「…本当に鏡の兄貴なのか?」

鏡とは似ても似つかない翔という男に、少し呆れ顔の甲。

 〝だがこの男…どこかで…〟

甲は翔に会った事があるように感じていた。


 「オー、グレート!スポーツジムですか!なるほど奴等、こういう所で鍛えてるんですネ!」

メモを取るブリオ。竜沢達をつけて来たブリオ達は、ガイニナル館が入居しているビルの前にいた。

 「さて、この辺なら人も少ないデース。フォーター、出て来たら…いいですネ!」
 「オウ。」

フォーターの、開けてるのか閉じてるのか分からない位細い目がギラリと光りを放つ!


 「これからどうします?」

ブリオたちが待つこと約一時間、鏡達がビルから出て来た。

 「オー!遂にこの時が来ましたネ!」

ブリオの大声に、竜沢達は気付いた。

 「何だ?あのやかましい外人は?」
 「隆正くんとキャラ被ってますね。」

鏡の言葉にうなずく甲。

 「私達はあなた達に攻撃しマース。」

竜沢達の方に近付いて来て、指を差しながら訳の分からない事を言い出すブリオに首を傾げる竜沢達。

 「…来い、コウ・タニズミ。」

大男のフォーターが一歩前に出て甲を睨みつける。

 「…何だか分からんが、俺に用があるのか?」

甲もズイッと前に出た。

 「…フン!」

フォーターはいきなり甲に蹴りを放つ。

 「ぬう!」

甲はその蹴りをかわさずに、咄嗟にフォーターの軸足を狙って蹴りを放つ。
フォーターの蹴りは甲の軸足である左足に、そして甲の蹴りはフォーターの軸足である左足に、それぞれ鈍い音を立てて炸裂した!

 「ヌグッ?!」
 「むうっ?!」

二人は共によろけた。

 「おお、甲と同じ威力とは!」
 「いえ…違いますよ。」

鏡の言葉の後、甲の方が片膝を地についた。

 「オオー!さすがフォーターネ!ハッハァッ!」



 「何だか表が騒がしいけど。何かしら?」

ガイニナル館内の真琴がそう言うと、翔はつまらなそうな顔をして答えた。

 「どっかのバカ共が喧嘩でもしてるんじゃないのかぁ?」
 「ちょっと、何処行くのよ翔?」
 「トイレだよ。」

ジムの玄関横にあるトイレの方に行く翔。



 「甲?!大丈夫か!」

竜沢と鏡は、甲に駆け寄った。

 「さぁ!トドメと行きなさい!フォーター!」
 「ヌ、グ…」

フォーターは、やかましいブリオの言葉に反応しなかった。

 「ホワット?!どうしたフォーター?!」

フォーターはゆっくりと片膝を地についた。

 「ホワーット?!オー!マイガッ!どうしてホワイ?!何故にガッデム!」

ブリオは驚いた。驚いて訳の分からない言葉を連発。

 「やっぱり効いてたのか?」
 「だから言ったでしょ竜沢くん。違うって。」

鏡は『同じ威力ではなく甲の方が上だ』と言っていたのだ。

 「ふん、確かにいい蹴りだが…手負いの熊には及ばんな。」

甲は立ち上がりフォーターに言い放つ。

 「ウ、ヌゥ…」

悔しいが、フォーターは立ち上がれなかった。

 「オー!こうなれば全面戦争ネ!始めからそのつもりデスけど。」
 「何だよこいつは。」

疲れる竜沢。

 「ミスター音根を呼ぶネ!」

スマホを取り出すブリオ。そのブリオの肩を誰かが掴んだ。

 「だれフーッ?!」
 「君ライクスポーツ?」

訳の分からん言葉を発しながら振り向いたブリオにも負けないくらい訳の分からん言葉を発したのは…

 「え?!し、白仮面?!」

驚く竜沢達。

 「ブ、ブラック…?!いや、ホワイトモンスター?!」
 「オオ?!」

ビビる外人二人。しかしモンスターは大げさだ。

 「モンスター?イエス!しかしノー!アイム白仮面!」

親指を立てて自分をアピールする白仮面。

 「鏡、俺ちょっと頭痛い…。」

苦しむ竜沢とは違い、ブリオ達は本気でビビっていた。

 「シ、シカメロン?!」

ブリオは間違っていた。

 「さて、海外人との友好を深めたところで本題に入ろう。」
 「深めてねー。しかも海外人って何?」

竜沢の突っ込みを無視し、話しを進める白仮面。

 「何はともあれこの白仮面、争いを見て見ぬフリは出来ん。若人が競うのならば…スポーツしかあるまい!」

握り拳を作り、熱く話す白仮面。

 「来週の金曜日早朝、龍青学園対グレート・ジュニア・ハイスクールの…マラソン勝負を行う!」
 「いや、何で?」

いきなりで強引な話しに疑問しかない竜沢。しかもブリオ達がグレートの生徒と分かっている白仮面。

 「来週のフライディ?…オー!それなら学園都市南地区の鬼下りごっこと呼ばれるマラソン大会の日ネ!丁度いいですネー!ハッハァッ!」
 「うるさい人の言う通り、確かにその日はマラソン大会ですが…出る選手はもう決まってますよ。今更僕等が出る訳には行きません。」

鏡の言葉に白仮面はうなずき、こう言った。

 「マラソン大会で戦えと行っている訳ではない。君達はマラソン大会が始まる前に、そのコースを逆走するのだ!」

意味の分からない白仮面の提案に、竜沢達はまたも首を傾げる。

 「俺はコウ・タニズミと戦えるなら、何でもいい。」

立ち上がれないまま小刻みに震えているフォーターが言った。かなり悔しい様子。

 「…ふん、俺も構わん。」

甲は、自分を睨むフォーターを見ながら答える。

 「ではそれで行きましょー!まぁよく分かりませんケド!ハッハァッ!」
 「何だよこいつ。それにしても…別にこっちは戦いを挑まれる理由すら分からんし、どうでもいいんだけど。な?鏡。」
 「そうですね。でも白仮面さんは引き下がらないでしょ?それにそこのうるさい人と大きな人も。」

大きくうなずく白仮面。それを見て引きつる竜沢。更にブリオとフォーターを見て、竜沢も納得せざるを得ないと判断。

 「分かったよ、分かりました。」

しぶしぶ納得の竜沢。鏡は詳しく話しを聞く事とした。

 「まず逆走という事ですが…つまり同じ距離を走るという事ですよね?それならかなり早い時間からのスタートになりますよ?それに、メンバーが四人必要になってきますが…。」

ブリオとフォーターを見る鏡。相手が二人だという事だ。

 「オー!問題ないネ!こちらには音根がイマース!」
 「音根?誰だそれ?つーか、そいつ入れても三人だろ?計算デキテマスカー?」

ちょっと失礼な態度の竜沢。

 「ホワーット!」
 「え?…いや、マジで分かってなかった?」

本当に計算できてなかったブリオに対し、竜沢は真顔になっていた。

 「安心したまえ。逆走マラソンは…三対三で行う!」

そう言って、何故か腰に手を置いて胸筋を動かす白仮面に対し、『はぁ?』という表情になる竜沢。

 「四人ではなく三人、ですか…。」

鏡は頭の中で自分と甲、隆正を想像していた。その時、白仮面が口を開く。

 「では発表する。スタート時間は早朝四時!龍青学園、谷角甲、山嵐隆正、川波鏡!グレート・ジュニア・ハイスクール、マイケル・ブリオ、ガーデン・フォーター、音根利住!」
 「オ、オーマイゴッ!」

おおいに驚くブリオ。

 「すげー強引かつスピーディーに話が進んでいる…あれ?」

自分の名前が無かった事に気付く竜沢。と同時に、マラソン勝負であれば、確かに鏡・甲・隆正の布陣が最も適しているとも思った。

 〝音根という奴のフルネームまで知ってる…本当に何者なんだ?〟

竜沢はまた白仮面を見ながら、その正体を考察していた…ら、おもむろに竜沢の方を見る白仮面。

 「ふぅおっ!」

竜沢の視線に応え、筋肉をアピールする白仮面。

 「いや、いらない…求めてないです。」

気分が悪くなる竜沢であった。

 「納得したところで…さらばだ!とう!」

『いや、納得とかじゃねーし』と思う竜沢を無視して白仮面は走り去った。

 「うーん…何も納得できてない状況なんだが…。しかもこれタダ働きだよな。」
 「いいじゃないですか。竜沢くんはメンバーから外されてましたし。」
 「何故かそうだな…。で、そっちはどうなんだ?外人。」

ブリオの方を向く竜沢。

 「ハッハァッー!私達は全然オッケー!何故ならビコーズ!我らは元マラソンランナーだからでーす!シカメロンもそんな事とはつい知らず!」
 「シロカメン。露知らず。」
 「オー!そうでした!サンキューフォーター!ハッハァッ!」

果たして本当にそうか?白仮面は知らなかったのか?竜沢はそんな疑問を持っていたが、『まー、もうどうでもいいか。それよりこの後何処に行こうかな?』という思いの方が強くなっていた。

 「これからどうします?」

鏡の言葉に、待ってましたと竜沢が答える。

 「本屋に行かないか?ちょっと見たい本があってな。」
 「やれやれ、漫画じゃないでしょうね?谷角くん、行きますか?」
 「む。」

うなずく甲。三人はさっさとその場を去って行った。

 「オー……さ、さぁ私達も行きましょーか、フォーター。」
 「…立てない。」
 「…オー…ノー。」

ブリオ達二人はさっさとその場を去りたくても去れなかった。
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