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マックの剣の実力とアルの実力
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何度かアルからポン刀を受け取ろうとするけど、その度にアルは身を躱す。なんかアレだ、スペインの闘牛になった気分なんだけど。
「……シンディ。僕は興奮しているんだ。こんな武器は見たことがない」
そりゃね、この世界観のゲームに日本刀はないよね。
「武器自体も見たことがないけれど、古代文字が彫られた武器なんて見たことがない。しかも! この僕が読めないなんて!」
「古代文字? 魔法協会で似たような文字を見たけど?」
闘牛役に疲れたあたしは疑問を口にした。
「あれも古代文字と言えば古代文字なんだけど、魔法を文字にしたものとでも言えばいいかな……説明が難しいな」
なんて言いながらもアルはポン刀から目を離さない。
「なぁアル! 俺の武器も早く見てくれよ!」
放置されっぱなしだったマックがしびれを切らして叫んだ。そのマックを横目でチラリと見たアルはため息を吐きながら刀身を鞘に収めてようやくあたしに渡してくれた。本物の日本刀ならズシリと重いはずなのに、受け取った『魔徹』は思ったほど重くはなかった。鍛えたからかな?
「まず剣を抜いて。どれくらい成長したか見せてよ?」
挑発的にアルはそう言い、イラッとした顔をしたマックは言われた通り剣を抜く。マックの剣はファンタジーとかRPGで見かけるような長めで幅広の剣だ。マックは剣を握りしめて集中している。多分、魔力を込めているんだろう。
「……全然ダメ。貸して」
アルがマックから剣を受け取り両手で握っただけで刀身が燃えた。
「え!? 何それ! すごっ! 燃えてるんだけど!」
あたしが騒ぐとアルはいたずらっぽく微笑む。
「持ち主の魔力によって燃える剣なんだ。だから燃やせないマックはまだまだ。そして僕もまだ本気じゃないよ?」
悔しがるマックにアルは一度剣を手渡す。
「魔法学校を卒業してからより魔力を高めようとしてね。量は増えたんだけど質は変わらなかった」
腕をまくったアルだけど、その腕には古代文字? のタトゥーが彫られている。
「タトゥー? 痛くないの?」
「痛かったけどそれよりも魔力が欲しかったんだ。身体にも彫っているけど、見る?」
アルがそう言うとマックが叫ぶ。
「ダメに決まってるだろ! それにシンディはもう俺の裸を見てるし」
どうしてマックが勝ち誇った顔をしているのか分かんなくて「パンツは履いてたよ」と言うとアルは落ち着いた。何なんだこの二人は。
「まぁいいや。僕の魔力を見せてあげるよ」
そう言いながら少し長めの髪を耳にかけると両耳に大量のピアスが付いている。タトゥーにピアスに美少年顔とかV系かよ! あ、なんかV系でしっくりくるかも。なんて思っていると器用にピアスを外していき、なんか周囲の空気が変わっていく。
「魔石のピアスで抑えてないと家族にすら迷惑がかかるからさ」
そう言うアルの周りには色とりどりの光が舞っている。
「今は自力で抑えてる状態。魔力を開放するよ」
その言葉と同時にさらにいろんな色のキラキラしたものがアルを中心に螺旋状に舞っている。そのアルから風まで起こり、あたしの髪は縦横無尽に風に遊ばれている。それと沸き起こる恐怖心。アルが怖いわけじゃないんだけど、多分圧倒的な魔力量の差に本能で恐れているんだと思う。
「貸して」
アルがまたマックから剣を借りると、剣に纏っている炎の大きさが長さも幅も倍になる。さらに炎から出た火の粉が一体化していき、いくつもの帯状の火がアルの身体の周りを螺旋状に回っている。
「この火だけでも大抵の攻撃は防げるんだよ」
すっごい! すっごい! すっごい!
「シンディ、ちょっとその剣を貸して」
この状態のアルが魔徹を持ったらどうなるか興味が湧いて、恐怖心で震える手で渡した。
「……やっぱり重っ……」
「え? ウソ? そんなに重くなかったよ?」
驚いてそう言うと逆にアルが驚いている。
「シンディ、ちょっとこの剣を持って」
そして手渡された魔徹を握って構えてみるけど、やっぱりそんなに重く感じない。危なくないようにみんなに背中を向けてブンブン素振りをしていると後ろからアルに抱き締められて驚く。とは言ってもアルの手はあたしの両手首を握っているけど。密着はものすごくしてる。シンディ、なんかごめんね。
「アルゥ! コラァ!」
マックの雄叫びをあたしたちは無視しちゃう。だってアルに手首を掴まれた瞬間から刀身の文字が少しだけ紅く光り『キィィィィン』と音を立てているんだから。
「なるほどね。これはすごい……」
アルが手を離すと文字の光は消えてしまい音も鳴らなくなってしまった。
「一度魔力を抑えるよ」
そう言ってまたピアスを付けていくアルだけど、一つ付けるごとに恐怖心が治まっていく。魔徹を見て呆けていたマックもまた騒ぎ出した。
「なんだよ、うるさいなぁ。ちょっとシンディのナカに入れちゃっただけだよ」
「アル……おま……なに……」
知らない人が聞いたら勘違いしそうなセリフを微笑んで言うアルに、さすがのあたしも赤面してしまう。
「シンディも……何で……赤くなってるの……」
悲しげな声を出すマックを見てアルは声を出して笑っている。あれだ、アルはV系歳下腹黒系なんだ……。いやぁ、それにしても照れるわ……。
「……シンディ。僕は興奮しているんだ。こんな武器は見たことがない」
そりゃね、この世界観のゲームに日本刀はないよね。
「武器自体も見たことがないけれど、古代文字が彫られた武器なんて見たことがない。しかも! この僕が読めないなんて!」
「古代文字? 魔法協会で似たような文字を見たけど?」
闘牛役に疲れたあたしは疑問を口にした。
「あれも古代文字と言えば古代文字なんだけど、魔法を文字にしたものとでも言えばいいかな……説明が難しいな」
なんて言いながらもアルはポン刀から目を離さない。
「なぁアル! 俺の武器も早く見てくれよ!」
放置されっぱなしだったマックがしびれを切らして叫んだ。そのマックを横目でチラリと見たアルはため息を吐きながら刀身を鞘に収めてようやくあたしに渡してくれた。本物の日本刀ならズシリと重いはずなのに、受け取った『魔徹』は思ったほど重くはなかった。鍛えたからかな?
「まず剣を抜いて。どれくらい成長したか見せてよ?」
挑発的にアルはそう言い、イラッとした顔をしたマックは言われた通り剣を抜く。マックの剣はファンタジーとかRPGで見かけるような長めで幅広の剣だ。マックは剣を握りしめて集中している。多分、魔力を込めているんだろう。
「……全然ダメ。貸して」
アルがマックから剣を受け取り両手で握っただけで刀身が燃えた。
「え!? 何それ! すごっ! 燃えてるんだけど!」
あたしが騒ぐとアルはいたずらっぽく微笑む。
「持ち主の魔力によって燃える剣なんだ。だから燃やせないマックはまだまだ。そして僕もまだ本気じゃないよ?」
悔しがるマックにアルは一度剣を手渡す。
「魔法学校を卒業してからより魔力を高めようとしてね。量は増えたんだけど質は変わらなかった」
腕をまくったアルだけど、その腕には古代文字? のタトゥーが彫られている。
「タトゥー? 痛くないの?」
「痛かったけどそれよりも魔力が欲しかったんだ。身体にも彫っているけど、見る?」
アルがそう言うとマックが叫ぶ。
「ダメに決まってるだろ! それにシンディはもう俺の裸を見てるし」
どうしてマックが勝ち誇った顔をしているのか分かんなくて「パンツは履いてたよ」と言うとアルは落ち着いた。何なんだこの二人は。
「まぁいいや。僕の魔力を見せてあげるよ」
そう言いながら少し長めの髪を耳にかけると両耳に大量のピアスが付いている。タトゥーにピアスに美少年顔とかV系かよ! あ、なんかV系でしっくりくるかも。なんて思っていると器用にピアスを外していき、なんか周囲の空気が変わっていく。
「魔石のピアスで抑えてないと家族にすら迷惑がかかるからさ」
そう言うアルの周りには色とりどりの光が舞っている。
「今は自力で抑えてる状態。魔力を開放するよ」
その言葉と同時にさらにいろんな色のキラキラしたものがアルを中心に螺旋状に舞っている。そのアルから風まで起こり、あたしの髪は縦横無尽に風に遊ばれている。それと沸き起こる恐怖心。アルが怖いわけじゃないんだけど、多分圧倒的な魔力量の差に本能で恐れているんだと思う。
「貸して」
アルがまたマックから剣を借りると、剣に纏っている炎の大きさが長さも幅も倍になる。さらに炎から出た火の粉が一体化していき、いくつもの帯状の火がアルの身体の周りを螺旋状に回っている。
「この火だけでも大抵の攻撃は防げるんだよ」
すっごい! すっごい! すっごい!
「シンディ、ちょっとその剣を貸して」
この状態のアルが魔徹を持ったらどうなるか興味が湧いて、恐怖心で震える手で渡した。
「……やっぱり重っ……」
「え? ウソ? そんなに重くなかったよ?」
驚いてそう言うと逆にアルが驚いている。
「シンディ、ちょっとこの剣を持って」
そして手渡された魔徹を握って構えてみるけど、やっぱりそんなに重く感じない。危なくないようにみんなに背中を向けてブンブン素振りをしていると後ろからアルに抱き締められて驚く。とは言ってもアルの手はあたしの両手首を握っているけど。密着はものすごくしてる。シンディ、なんかごめんね。
「アルゥ! コラァ!」
マックの雄叫びをあたしたちは無視しちゃう。だってアルに手首を掴まれた瞬間から刀身の文字が少しだけ紅く光り『キィィィィン』と音を立てているんだから。
「なるほどね。これはすごい……」
アルが手を離すと文字の光は消えてしまい音も鳴らなくなってしまった。
「一度魔力を抑えるよ」
そう言ってまたピアスを付けていくアルだけど、一つ付けるごとに恐怖心が治まっていく。魔徹を見て呆けていたマックもまた騒ぎ出した。
「なんだよ、うるさいなぁ。ちょっとシンディのナカに入れちゃっただけだよ」
「アル……おま……なに……」
知らない人が聞いたら勘違いしそうなセリフを微笑んで言うアルに、さすがのあたしも赤面してしまう。
「シンディも……何で……赤くなってるの……」
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