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カレン、さらに料理を作る

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 私の両手では抱えきれない程のオドリキッコの一部を貰い、さあ広場へ、と思った矢先に桶に入れられたものを見つけた。立ち止まり凝視しているとトビ爺さんに声をかけられた。

「なんだこれも好きなのか? これも昨日処理したやつだ」

 うんうんと頷くと、トビ爺さんは桶から一つを取り出した。それはもう茹でてある巨大なタッケノコである。これでもう作るものはほぼ決まった。

「ねぇトビ爺さん、コッコの肉が余ってたりしない?」

「多分ねぇと思うなぁ……それ置いてついて来い」

 持っていたオドリキッコとタッケノコを一旦元に戻し、言われた通りに後ろをついて行くとトビ爺さんは叫んだ。

「お~いニワトリ! コッコを潰していいか!?」

「あぁいいぞ~」

 一瞬脳が混乱したが、この村でニワトリさんというおじさんがコッコを育てているらしい。寝癖なのか癖っ毛なのか、サイドは清潔感のある短さの髪だが頭頂部だけがモフモフと逆立っている。まさにニワトリのトサカのようだ。
 そのニワトリさんの家に行くと、家の裏側部分の広範囲がコッコの飼育場となっており、茶色の羽根のコッコが元気に走り回っていた。

「何羽くらい欲しいんだい~?」

 まるでコッコの鳴き声である『コケコッコー』の『コー』の部分のような、間延びした語尾を話すニワトリさんに思わず笑みがこぼれてしまう。

「私個人としては一羽あれば良いのだけれど……クジャや兵たちはまだまだ食べるでしょうし……」

 苦笑いでそう言うと、ひとまず四~五羽を捕まえようということになった。
 当たり前のように参加しようとすると、二人に「コッコは凶暴だぞ!?」と心配されたが、二人よりも先に一羽捕まえると苦笑いをされつつ驚かれた。

 そして広場からは見えない解体する場所にコッコを運ぶと、二人は私に気遣い「あとは二人でやるから」と言っているそばからコッコの首を折ると、二人は呆気にとられていた。

「娘っこ……」

 トビ爺さんが呆れてそう言うと同時に、近くに置いてあった刃物でコッコの首を落とすと「手慣れてますね~……」とニワトリさんも軽く引いていた。
 三人で同じ作業をし、この村では熱湯に浸けてから羽根をむしると言うが、湯が沸くまでに血抜きの終わったコッコの羽根をむしっていると、二人は呆気を通り越して笑い始めた。

「カレン! どこに行ったかと……それは教えた覚えは……あぁそうか……」

 どうやら姿が見えなくなった私を心配して、お父様が探しに来たようである。そしてその娘である私が首のないコッコの羽根をむしっているのに驚き軽く混乱したようだが、前世の記憶があるのを思い出して納得したようである。

 お父様も混ざって四人で肉を解体し、欲しい部分を貰って良いと言われたので、モモ肉とレバーと砂肝、そして骨を貰った。

「肉以外なんてどうするんだ?」

「この村では使わないの? うふふ、美味しいものを作るから待っていて。あと、ジンガーとガンリックとナーニーオーンとキャロッチをいただけたら嬉しいのだけれど……」

 少し遠慮気味に言うと、ニワトリさんは「待ってね~」と家から食材を持って来てくれた。一度トビ爺さんの家にも寄り、お父様と一緒に全ての材料を持って広場の調理スペースへと戻った。

「おや? ずいぶん時間がかかったねぇ?」

「えぇ、コッコを絞めて捌いて来たの」

 近くにいた女性に声をかけられ、ルンルンとしながら答えるとこちらも引いている。この国ではどうやら女性はあまり動物を捌かないようだ。

「じゃあお料理を作るので、調味料をお借りします」

 近くに置いてある調味料や食材を使わせてもらい、オドリキッコとタッケノコ、そしてキャロッチとモモ肉を使った炊き込みご飯とおこわを作る。
 玄米のびっくり炊きで作る炊き込みご飯なので、最初は普通に炊き、差し水の時に具材やセウユなどの調味料を入れる。おこわは先に具材を調味料と共に煮て、一度蒸したもち米と混ぜて再度蒸す。

 鶏ガラはナーニーオーンとジンガーと一緒に煮ながらアクを取り、まずは鶏ガラスープを作る。取り出した鶏ガラから取れそうな肉はスープに混ぜ、そこにモモ肉とオドリキッコにタッケノコ、キャロッチとディーコンは千切りに、ナーニーオーンは斜め切りにして入れ、セウユなどで味を整える。最後にモチを投入する。
 そしてレバーと砂肝は細かく切り、ジンガーとガンリックと共に味噌煮にし、汁が少なくなるまで煮詰めて小口切りにしたナーニーオーンとセッサーミンをかける。

「ふぅ……完成したわ!」

 私の周りにわらわらと人が集まって来たが、あえて気にせずお盆を用意し、器に炊き込みご飯とおこわ、そして雑煮と味噌煮を盛り付けてオオルリさんのご両親のところへ持って行った。

「お待たせしてしまってごめんなさい。美味しくて体に良いものを作りました。このミィソの煮物は特に体に良いです。毎日は無理でも、たまに食べるともっとお体の調子が良くなると思います」

 お二人はこの国の食材で見たことのない料理を作った私に驚いていたが、一口食べると目をひん剥いて感嘆の声を上げていた。

 そして私の背後では、勝手に料理を食べ始めた村人や兵たちが叫び声を上げるほど舌鼓を打っているようである。特にニワトリさんの「こりゃ美味い~!」という甲高い特徴的な叫び声は、まさにニワトリの鳴き声のようだった。この村の人たちの胃袋も掴むことに成功したようだ。
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