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第十章 終わりと始まり
10-5. 追跡
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雨に濡れた広場には、幾つもの術者の死体と、呆然と佇むカウンシルメンバー達がいた。
眼前で消え去ったユウリに、ナディアはレヴィに抱きかかえられないと立っていられない。
「ユウリ! ユウリは、どこに……ッ」
わあわあと悲痛な声で泣き喚くナディアを抱き締めて宥めるレヴィを見ながら、ユージンが盛大に舌打ちする。
彼は、術者たちが放った魔法に心当たりがあった。
ラヴレより聞かされた真実の歴史の中で使われた魔法。
封印魔法、転生魔法、消滅魔法……それらを詳しく調べてみようと、後日図書塔へ籠って禁書を読み漁ったのだ。
中でも、魔女を封印したという史上最強の封印魔法——それが、ユウリを覆っていたものと似通っていた。
ユージンは、もう一度舌打ちして、広場を見渡す。リュカとロッシが、何度も魔法痕検索魔法を詠唱している。ヴァネッサとフォンは、折り重なった数十の遺体の顔を確認していた。
目が合うと、フォンは瞳を伏せて首を左右に振る。どれも、学園の関係者ではないようだ。彼らから手掛かりを得るという選択肢は消えた。
「な……これは……」
学園の方からやってきた人影が、広場の惨状を目の当たりにし、呆然と呟いた。
「……お早いご到着だな」
「……ッ」
ラヴレは、普通なら到底許されないユージンの嫌味を甘んじて受ける。その胸倉を、リュカが掴み上げた。
「学園長! 何でユウリを一人にした!!」
「リュカ」
「止めるなっユージン! こんなことなら、パリアなんか放っておくんだった……!」
「申し訳……ありません」
突き飛ばすようにラヴレに怒りをぶつけるリュカに、彼は小さく謝ることしかできない。
「……ダメだな……。奴ら、追跡できないよう、転移先座標を複雑に変えてきている」
額に落ちる雨粒を振り払いながら、ロッシが観念したように告げる。
一つずつ潰してユウリが連れ去られた先を特定することは可能だが、時間がかかりすぎる。
クリスタルのあった場所に膝をついて、壊れた機械のように魔法痕検索魔法を繰り返していたヨルンの瞳が、不意に、地面にキラリと光るものを写した。
指を伸ばして、血と泥に塗れた機械時計を拾い上げる。
「必ず、見つけてやる」
——どうか、それまでは無事でいてくれ
低い声で唸るように発した彼の背に、ラヴレはそっと手を添える。
ユウリを拐われた代償に教会に赴いたことは、ある意味無駄ではなかったのだ。
そこにいるべき人物が消息不明とあって、抱いていた疑念が確信に変わっていた。
「私なら、彼の痕跡を辿れるかもしれません」
眼前で消え去ったユウリに、ナディアはレヴィに抱きかかえられないと立っていられない。
「ユウリ! ユウリは、どこに……ッ」
わあわあと悲痛な声で泣き喚くナディアを抱き締めて宥めるレヴィを見ながら、ユージンが盛大に舌打ちする。
彼は、術者たちが放った魔法に心当たりがあった。
ラヴレより聞かされた真実の歴史の中で使われた魔法。
封印魔法、転生魔法、消滅魔法……それらを詳しく調べてみようと、後日図書塔へ籠って禁書を読み漁ったのだ。
中でも、魔女を封印したという史上最強の封印魔法——それが、ユウリを覆っていたものと似通っていた。
ユージンは、もう一度舌打ちして、広場を見渡す。リュカとロッシが、何度も魔法痕検索魔法を詠唱している。ヴァネッサとフォンは、折り重なった数十の遺体の顔を確認していた。
目が合うと、フォンは瞳を伏せて首を左右に振る。どれも、学園の関係者ではないようだ。彼らから手掛かりを得るという選択肢は消えた。
「な……これは……」
学園の方からやってきた人影が、広場の惨状を目の当たりにし、呆然と呟いた。
「……お早いご到着だな」
「……ッ」
ラヴレは、普通なら到底許されないユージンの嫌味を甘んじて受ける。その胸倉を、リュカが掴み上げた。
「学園長! 何でユウリを一人にした!!」
「リュカ」
「止めるなっユージン! こんなことなら、パリアなんか放っておくんだった……!」
「申し訳……ありません」
突き飛ばすようにラヴレに怒りをぶつけるリュカに、彼は小さく謝ることしかできない。
「……ダメだな……。奴ら、追跡できないよう、転移先座標を複雑に変えてきている」
額に落ちる雨粒を振り払いながら、ロッシが観念したように告げる。
一つずつ潰してユウリが連れ去られた先を特定することは可能だが、時間がかかりすぎる。
クリスタルのあった場所に膝をついて、壊れた機械のように魔法痕検索魔法を繰り返していたヨルンの瞳が、不意に、地面にキラリと光るものを写した。
指を伸ばして、血と泥に塗れた機械時計を拾い上げる。
「必ず、見つけてやる」
——どうか、それまでは無事でいてくれ
低い声で唸るように発した彼の背に、ラヴレはそっと手を添える。
ユウリを拐われた代償に教会に赴いたことは、ある意味無駄ではなかったのだ。
そこにいるべき人物が消息不明とあって、抱いていた疑念が確信に変わっていた。
「私なら、彼の痕跡を辿れるかもしれません」
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