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第七章 ユウリとヨルン
7-7. 衝突
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ヨルンが何かを探すように、辺りを見回しながら中庭にやってきた。
木陰に佇むユージンを見つけ、声を掛ける。
「ユージン、ユウリ見なかった?」
「俺の求婚に、照れたようだ」
「な!?」
あまりのユージンらしからぬ発言に、短い驚愕の後、ヨルンはその無感情な瞳を睨み返す。
二人の目線の間に、パチリと魔力が弾けた。
ヨルンは一呼吸置いて、その緊張を崩さずに、それでいて出来得る限り穏やかに尋ねる。
「ユウリを、ガイアに連れていって何をするつもり」
そこに愛がないと気付かなければ出ない疑問に、ヨルンの鋭さを再認識して、ふ、とユージンの頰が緩んだ。
魔法工学の盛んなガイア王国は、帝国時代に存在したという『失われた知識』の研究にも力を入れている。
その当時、魔法の存在しない帝国では機械工学と呼ばれ、様々な道具や機械が開発されていた。日用品から軍用品に至るまで、その技術が浸透しており、ガイアはそれを魔法工学に応用できないかと長年解析と開発に取り組み、数代前の国王の時代からそれらを取り入れた実用可能な魔法機械を生産するようになった。
その中にはもちろん、多くの武器や武具、軍事兵器のようなものまである。
平和維持のため、軍事力が一点集中することのないよう、ガイア王国はそれらを各国へ提供しており、魔物討伐や危険種からの防衛等に貢献していた。
しかしながら実際は、生産国の強みもあり、ガイアが最も戦闘力の高い王国だということは暗黙の了解だった。
だからこそ、ユージンはユウリを手に入れることで迫る危険を回避できると考えている。
「ガイア所有になれば、クタトリアとやらも、そうそう手出しできまい」
「所有って、ユウリをまた、モノみたいに……!」
「俺は史上最高のガイア国王になる」
その瞳に迷いはなかった。
たじろくヨルンを真っ直ぐ見つめて、ユージンはきっぱりと言い切った。
「そのためには、あいつが必要だ」
ヨルンは眉根を寄せる。
「そこに、彼女の意思は?」
「そんなもの、必要ない」
あの力さえあれば、それを持ち帰れば、確実に反発を抑えることが出来る。
必要なのは、彼女の持つ力。
この際、感情など気にしてはいられない。
——ましてや、失ってからでは遅いのだ。
「彼女の気持ちはどうなるの」
「はっ!」
非難めいたヨルンの言葉に、ユージンの嘲笑が重なる。
「お前がそれを言うのか?」
言葉に詰まったヨルンを一瞥して、ユージンは踵を返す。
「あいつの気持ちに気づいていないわけじゃない。 それでも、あいつを手に入れようともしないお前に、俺を止める権利はないだろう」
ぼんやりとその背中を見つめていたヨルンの瞳は、暗く揺らいでいた。
木陰に佇むユージンを見つけ、声を掛ける。
「ユージン、ユウリ見なかった?」
「俺の求婚に、照れたようだ」
「な!?」
あまりのユージンらしからぬ発言に、短い驚愕の後、ヨルンはその無感情な瞳を睨み返す。
二人の目線の間に、パチリと魔力が弾けた。
ヨルンは一呼吸置いて、その緊張を崩さずに、それでいて出来得る限り穏やかに尋ねる。
「ユウリを、ガイアに連れていって何をするつもり」
そこに愛がないと気付かなければ出ない疑問に、ヨルンの鋭さを再認識して、ふ、とユージンの頰が緩んだ。
魔法工学の盛んなガイア王国は、帝国時代に存在したという『失われた知識』の研究にも力を入れている。
その当時、魔法の存在しない帝国では機械工学と呼ばれ、様々な道具や機械が開発されていた。日用品から軍用品に至るまで、その技術が浸透しており、ガイアはそれを魔法工学に応用できないかと長年解析と開発に取り組み、数代前の国王の時代からそれらを取り入れた実用可能な魔法機械を生産するようになった。
その中にはもちろん、多くの武器や武具、軍事兵器のようなものまである。
平和維持のため、軍事力が一点集中することのないよう、ガイア王国はそれらを各国へ提供しており、魔物討伐や危険種からの防衛等に貢献していた。
しかしながら実際は、生産国の強みもあり、ガイアが最も戦闘力の高い王国だということは暗黙の了解だった。
だからこそ、ユージンはユウリを手に入れることで迫る危険を回避できると考えている。
「ガイア所有になれば、クタトリアとやらも、そうそう手出しできまい」
「所有って、ユウリをまた、モノみたいに……!」
「俺は史上最高のガイア国王になる」
その瞳に迷いはなかった。
たじろくヨルンを真っ直ぐ見つめて、ユージンはきっぱりと言い切った。
「そのためには、あいつが必要だ」
ヨルンは眉根を寄せる。
「そこに、彼女の意思は?」
「そんなもの、必要ない」
あの力さえあれば、それを持ち帰れば、確実に反発を抑えることが出来る。
必要なのは、彼女の持つ力。
この際、感情など気にしてはいられない。
——ましてや、失ってからでは遅いのだ。
「彼女の気持ちはどうなるの」
「はっ!」
非難めいたヨルンの言葉に、ユージンの嘲笑が重なる。
「お前がそれを言うのか?」
言葉に詰まったヨルンを一瞥して、ユージンは踵を返す。
「あいつの気持ちに気づいていないわけじゃない。 それでも、あいつを手に入れようともしないお前に、俺を止める権利はないだろう」
ぼんやりとその背中を見つめていたヨルンの瞳は、暗く揺らいでいた。
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