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VIVA
02.Cap
しおりを挟む黒ずくめの彼に誘拐されて、彼曰く、一週間が経った。一週間も経つと、人間は、自分のいる場所がいくら暗く恐ろしい場所でも慣れてしまうもので、最初は恐ろしく思っていた彼とも、日常的な会話をしたり、彼の好きな食べ物や私の好きな食べ物を話し合えるような関係に進展した。
しかし一週間もこの場所に軟禁されては気が滅入るのも当然で、自らの匂いや汗に嫌悪するのも当然のことだった。
「あの、私、お風呂に、入りたいんですけど」
私の隣で、どこから持ってきたのかは分からないけれど、箪笥の奥に大切に保管していた私の装飾品を磨いている彼にそう頼むと、彼はか細い息を漏らした。
「あー……お風呂…か……んー…」
小さく唸ってから両手の手袋を外し、自らの首を右手の人差し指でぽりぽりと掻く彼。
彼は、しばらく悩んでから、彼がずっと磨いていた、羽を象った銀色のブローチを私の胸につけた。
「濡れた布巾で汗を拭くのは、入浴と言えるかな?」
困ったようにそう言う彼。
彼はどうしてもこの部屋から私を出したくないようだ。
「私の事も、このブローチみたいに磨きたいの?」
そう言ってみると、彼は首を大きく横に振ってから「分かったよ、君の好きにしてくれ」と言いながら大慌てで部屋から出ていった。
彼に出ていかれては、私は、これから、どうすればいい?
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