VaD

正君

文字の大きさ
上 下
2 / 40
VIVA

02.Cap

しおりを挟む


 黒ずくめの彼に誘拐されて、彼曰く、一週間が経った。一週間も経つと、人間は、自分のいる場所がいくら暗く恐ろしい場所でも慣れてしまうもので、最初は恐ろしく思っていた彼とも、日常的な会話をしたり、彼の好きな食べ物や私の好きな食べ物を話し合えるような関係に進展した。
 しかし一週間もこの場所に軟禁されては気が滅入るのも当然で、自らの匂いや汗に嫌悪するのも当然のことだった。

「あの、私、お風呂に、入りたいんですけど」
 私の隣で、どこから持ってきたのかは分からないけれど、箪笥の奥に大切に保管していた私の装飾品を磨いている彼にそう頼むと、彼はか細い息を漏らした。
「あー……お風呂…か……んー…」
 小さく唸ってから両手の手袋を外し、自らの首を右手の人差し指でぽりぽりと掻く彼。
 彼は、しばらく悩んでから、彼がずっと磨いていた、羽を象った銀色のブローチを私の胸につけた。

「濡れた布巾で汗を拭くのは、入浴と言えるかな?」
 困ったようにそう言う彼。
 彼はどうしてもこの部屋から私を出したくないようだ。
「私の事も、このブローチみたいに磨きたいの?」
 そう言ってみると、彼は首を大きく横に振ってから「分かったよ、君の好きにしてくれ」と言いながら大慌てで部屋から出ていった。
 彼に出ていかれては、私は、これから、どうすればいい?

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

13歳女子は男友達のためヌードモデルになる

矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

同僚くすぐりマッサージ

セナ
大衆娯楽
これは自分の実体験です

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

処理中です...