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訪
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「また来たの」
呆れ顔の白髪青眼の少女に、虹葉はあはは、と笑う。
二人が立っているのは、白と黒の境界。虹葉が前者、少女が後者である。
「また来るねって、言ったから」
「……」
少女は何も返さなかった。
相手をするだけ面倒だと感じ取ったのだ。
「ねぇお嬢ちゃん、あなたはいっt」
「羽奏」
「ん?」
「羽奏って呼んで」
名前など、少女にはなかった。これは、今付けた仮の名前。
『儚』い、から『羽奏』。
夢のように、儚い存在。
いつまでもお嬢ちゃん呼びは恥ずかしいから、とっさに思い付いた名を口走った。
……まぁいいだろう、と少女は妥協する。
「羽奏ちゃんは、『作られた存在だ』って、言ったよね。あなたは、私たちと何がどう違うの?」
「私は──人間の想像から生まれた、架空の人物」
虹葉は静かに耳を傾けた。
少女の口から零れ落ちる、「自分が作られたワケ」。ある少年のこと。
「あのね羽奏ちゃん。私たち、おんなじだと思うんだよね」
「……え?」
突如、虹葉が口を開いた。
「私たちはいつかは忘れられていく、思い出の中の存在なんだよ。実際に存在しているかどうかじゃなくて」
だからこっちにおいで? と、虹葉が手を伸ばす。
少女はおそるおそる、その手を掴む。
(そうか、私は)
知らない内に自分で壁を作っていたんだ。
呆れ顔の白髪青眼の少女に、虹葉はあはは、と笑う。
二人が立っているのは、白と黒の境界。虹葉が前者、少女が後者である。
「また来るねって、言ったから」
「……」
少女は何も返さなかった。
相手をするだけ面倒だと感じ取ったのだ。
「ねぇお嬢ちゃん、あなたはいっt」
「羽奏」
「ん?」
「羽奏って呼んで」
名前など、少女にはなかった。これは、今付けた仮の名前。
『儚』い、から『羽奏』。
夢のように、儚い存在。
いつまでもお嬢ちゃん呼びは恥ずかしいから、とっさに思い付いた名を口走った。
……まぁいいだろう、と少女は妥協する。
「羽奏ちゃんは、『作られた存在だ』って、言ったよね。あなたは、私たちと何がどう違うの?」
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虹葉は静かに耳を傾けた。
少女の口から零れ落ちる、「自分が作られたワケ」。ある少年のこと。
「あのね羽奏ちゃん。私たち、おんなじだと思うんだよね」
「……え?」
突如、虹葉が口を開いた。
「私たちはいつかは忘れられていく、思い出の中の存在なんだよ。実際に存在しているかどうかじゃなくて」
だからこっちにおいで? と、虹葉が手を伸ばす。
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(そうか、私は)
知らない内に自分で壁を作っていたんだ。
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