スコア稼ぎ短編小説集

透

    僕はネガティブに考え過ぎなんだよ。と、自分に言い聞かせる。
    トイレの電気を消されるのだって、三回に一回はあることだけれど、言い換えれば三回に一回に"しか"ないのだ。
    真っ暗なトイレはもう慣れた。
    いや、決していじめなどではない。
    ただ、認識されないだけ。
    それだけなんだ。

    話しかければ、反応してくれる。
    知り合い以上、友達未満。
    そんな関係の人が多いだけ。
    嫌われているし、好かれている。
    何となく感じ取れる、相手の僕に対する印象。
    世界に人間が何人いるか知ってる？

    三十五億。

    ……ってつまらない冗談は置いといて。
    あとこれは男の数である。

    取り敢えず、それだけたくさんの人に好かれるなんて無理って話。
    逆に疲れるのでは？
    僕は誰かのご機嫌をとるために生まれてきたワケじゃない。
    僕がご機嫌をとる必要なんてない。

    でも、その結果が、今。
    誰とも関わらずに、ただただ学校生活を送っている、だけ。
    意味を聞かれても、答えられない。

    友達はいるにはいるが最近冷たい。
    認識は、ギリギリされている、くらい。
    そのうち、全く見えなくなるんだろうな。

    誰にも見えない透明人間と、透明人間でないのに誰にも気付いてもらえない人間。
    果たして、楽なのはどちらだろう。

    四人で並んで登校しているときだって、気付けば僕は茅の外。
    前に三人、僕は後ろについて行くだけ。
    三人が何を話しているかなんて知らない。どうせ、K-POP辺りだろう。
    ごめん、僕はその話についていけないや。
    無理してハマって勉強して話を合わせるなんて、僕は性に合わないんだ。

    僕は、いつしか一人で登校するようになった。
    一人はいい。話のネタも思い付くし。
    堂々と歩けば「いつもは友達と一緒に登校してるけど今日は置いていかれた」感を出せるし。
    別にそんなことする必要はないし、そんなことをしているつもりもない。

    誰も僕のことを見ないと思っていれば、怖いものなどなにもないのだ。
    だから、考え方を変えてみる。

    誰にも見られていないって、存外悪いことではない気がする。
    だからといって犯罪を犯す気はないけど、見えていないって案外気楽。
    好きなときに好きなことをしたりして。

    だから、挙手して20分ほど待っているのなら、楽しめば良いじゃないか。
    「僕はいつまで気付かれないのか」。
    我ながら良いアイデアだと思う。
    なんなら、この記録でギネスを狙ってもいい。

    考え方を変えれば、未来もつまらないもんじゃない。