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懐 上
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「陽李さーん」
「おや、白姫ちゃん。こんにちは」
ある晴れた日、従妹が訪ねて来た。八歳年下の彼女は、母の妹の一人娘である。去年の正月の親戚の集まり以来である。
「白姫ちゃん、叔母さんや叔父さんは?」
一応は良家のお嬢様である彼女が、一人でここへ来る訳がない。もしそうなら両親が黙っていないからだ。
「私一人で来たの」
「え」
私の想像の範囲外だった。
「なんで!? 叔母さんには伝えた!? 叔父さんでもいいけど!!」
彼女は静かに首を横に振る。Noなのだ。
取り敢えず、ここにいることを伝えないと、騒ぎになることは確実。携帯電話を持ち歩かない私は、固定電話を取りに屋敷へ戻ろうとすると、その羽織の袖を引っ張られた。
「言わないで。いいの、すぐ帰るから」
白姫は縁側に腰掛けるよう促した。
二人は並んで座る。沈黙が気まずい。
「……肇さんは元気?」
先に口を開いたのは白姫だった。
心なしか、元気がないような……
「あぁ。この前テレビに出ていたよ。小説が話題になって」
肇は私の弟。早くに家を出て、今では名の知れた小説家だ。彼の外見はイケメンの分類に入るらしい。私がそう思ったことは一度もなかったが。
「そっか」
白姫はあまりテレビを見ないらしい。かく言う私もテレビは好まないのだが。
白姫は最近まで田舎にいた。周りを山、川、田、畑に囲まれた自然溢れるところである。さすがに電波は届いたはずだが。
最近、この辺りに越してきたと聞いた。
「私ね、好きな人がいたの」
私は、ただ続きを待った。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
ごめんなさい! 本気で投稿忘れてました。いや、もう書き上がってはいたんだけど……Wi-Fi環境の整っていないところにいたので! という言い訳です。
「おや、白姫ちゃん。こんにちは」
ある晴れた日、従妹が訪ねて来た。八歳年下の彼女は、母の妹の一人娘である。去年の正月の親戚の集まり以来である。
「白姫ちゃん、叔母さんや叔父さんは?」
一応は良家のお嬢様である彼女が、一人でここへ来る訳がない。もしそうなら両親が黙っていないからだ。
「私一人で来たの」
「え」
私の想像の範囲外だった。
「なんで!? 叔母さんには伝えた!? 叔父さんでもいいけど!!」
彼女は静かに首を横に振る。Noなのだ。
取り敢えず、ここにいることを伝えないと、騒ぎになることは確実。携帯電話を持ち歩かない私は、固定電話を取りに屋敷へ戻ろうとすると、その羽織の袖を引っ張られた。
「言わないで。いいの、すぐ帰るから」
白姫は縁側に腰掛けるよう促した。
二人は並んで座る。沈黙が気まずい。
「……肇さんは元気?」
先に口を開いたのは白姫だった。
心なしか、元気がないような……
「あぁ。この前テレビに出ていたよ。小説が話題になって」
肇は私の弟。早くに家を出て、今では名の知れた小説家だ。彼の外見はイケメンの分類に入るらしい。私がそう思ったことは一度もなかったが。
「そっか」
白姫はあまりテレビを見ないらしい。かく言う私もテレビは好まないのだが。
白姫は最近まで田舎にいた。周りを山、川、田、畑に囲まれた自然溢れるところである。さすがに電波は届いたはずだが。
最近、この辺りに越してきたと聞いた。
「私ね、好きな人がいたの」
私は、ただ続きを待った。
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ごめんなさい! 本気で投稿忘れてました。いや、もう書き上がってはいたんだけど……Wi-Fi環境の整っていないところにいたので! という言い訳です。
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