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さき 3
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MKに真理恵が入り、さきが入り、僕はもちろん嬉しかったが、古賀さんもテンションが上がっていた。
一度古賀さんが言ってきたのだった。
「もうハッキリしようや、推しが誰って。」
カウンター越しにさきが立っていた。
僕はその言葉の裏側を敏感に感じとっていた。
確かに僕はずっと真理恵推しで通してきた。
この古賀さんの言葉は、僕に対して「振り分けをしよう」そういう提案なんだと、理解した。
理解した上で、いやむしろ理解したからこそ、僕は言った。
「さきちゃんです!いやそれはもう、さきちゃんですよ!」
古賀さんは僕の予想外の言葉に、言葉を詰まらせていた。彼の中ではさとしが真理恵、俺がさき、お互い邪魔しない、そんな妄想を抱いていたのだろう。
そんな甘いわけあるか、そう思った僕はキッパリと言い放ったのだった。
そもそもその振り分けに何の意味もなく、あの山之内がしずかを檻の中に入れたがっていたのと一緒の事で、それをしたところで、女の子の気持ちが変わるわけではない。優位に立つわけでもない。最終的に誰がいいかは女の子しか決められない。
その提案の無駄加減を知らしめる為に、僕は敢えて古賀さんが望んだ答えの逆を示したのだった。
古賀さんが、さきを同伴に誘ってきていた。
それはさきの誕生日だった。そして初の同伴、そんな話だったようだ。
僕がまいた種は想像以上に育っていた。ただ、それは、さきにも一因があって、LINEのやり取りが問題だった。まるで彼氏彼女のようなLINEを繰り広げていて、それ対し僕は、
「いやいや、そんなん返す必要ないやろ?」
と言えば、
「だって、それでお客さんがお店に来なくなったらどうするの?」
と本気で、怒ったように言っていて、店サイドの立場でもある僕は、さきが入る事で跳ね上がったMKの売り上げも頭をちらつき、自分で自分の首を絞めていっているだけのさきに、それ以上何も言えなかった。
古賀さんだけでなく、そんな客ばかりだった。
そのお陰で、店に入ってさきがいない事が分かるとすぐに出ていく客もいたし、飲みにくるわけでもなく、ただ、さきとのLINEの内容に疑念を抱いた人間が、さきの様子を見る為だけに来店しウーロン茶だけを飲んで帰る、そんな客も、ちらほらいたのだった。
古賀さんの初同伴を待たずに、僕はさきとご飯に行った。一度だけではなかった。一度は古賀さんがいないタイミングだったが、もう一度は、古賀さんは他の女の子と同伴で、MKにいた。
さすがに、さきとタイミングをずらしてMKに入ったものの、誰と行ったのか、それはすぐに分かるもので、店に入り辛くて仕方なかった。
いつものように、古賀さんの横に準備された席に座りはしたが、いつもの、
「なんやと!?なんやと!?」
という言葉もなく、
「誰と行ったと?」
と聞かれる事もなかった。
その事がまた、より一層気まずさに拍車をかけた。
古賀さんからすれば、真理恵も、さきも、僕に取られている。そして、真理恵からも、さきからも、古賀さんからどういう事をされた、という事、さきに至っては、その2人のLINEの内容まで、僕に筒抜けだったのだ。
その気まずさに、僕は本当にどうしていいやら、分からなかった。
さきの誕生日、さきの気持ちを思うと、古賀さんとの同伴は複雑な気分であったが、先に決まっていた話なので無理にねじ曲げようとはしなかった。
僕はその日、さきへプレゼントを渡した。欲しがったコスメだった。
「嬉しい!!」
さきは飛び上がって喜んでいた。
そして僕は改めて、その週のさきが休みの日にフレンチへ連れて行って、一晩過ごしたのであった。
一度古賀さんが言ってきたのだった。
「もうハッキリしようや、推しが誰って。」
カウンター越しにさきが立っていた。
僕はその言葉の裏側を敏感に感じとっていた。
確かに僕はずっと真理恵推しで通してきた。
この古賀さんの言葉は、僕に対して「振り分けをしよう」そういう提案なんだと、理解した。
理解した上で、いやむしろ理解したからこそ、僕は言った。
「さきちゃんです!いやそれはもう、さきちゃんですよ!」
古賀さんは僕の予想外の言葉に、言葉を詰まらせていた。彼の中ではさとしが真理恵、俺がさき、お互い邪魔しない、そんな妄想を抱いていたのだろう。
そんな甘いわけあるか、そう思った僕はキッパリと言い放ったのだった。
そもそもその振り分けに何の意味もなく、あの山之内がしずかを檻の中に入れたがっていたのと一緒の事で、それをしたところで、女の子の気持ちが変わるわけではない。優位に立つわけでもない。最終的に誰がいいかは女の子しか決められない。
その提案の無駄加減を知らしめる為に、僕は敢えて古賀さんが望んだ答えの逆を示したのだった。
古賀さんが、さきを同伴に誘ってきていた。
それはさきの誕生日だった。そして初の同伴、そんな話だったようだ。
僕がまいた種は想像以上に育っていた。ただ、それは、さきにも一因があって、LINEのやり取りが問題だった。まるで彼氏彼女のようなLINEを繰り広げていて、それ対し僕は、
「いやいや、そんなん返す必要ないやろ?」
と言えば、
「だって、それでお客さんがお店に来なくなったらどうするの?」
と本気で、怒ったように言っていて、店サイドの立場でもある僕は、さきが入る事で跳ね上がったMKの売り上げも頭をちらつき、自分で自分の首を絞めていっているだけのさきに、それ以上何も言えなかった。
古賀さんだけでなく、そんな客ばかりだった。
そのお陰で、店に入ってさきがいない事が分かるとすぐに出ていく客もいたし、飲みにくるわけでもなく、ただ、さきとのLINEの内容に疑念を抱いた人間が、さきの様子を見る為だけに来店しウーロン茶だけを飲んで帰る、そんな客も、ちらほらいたのだった。
古賀さんの初同伴を待たずに、僕はさきとご飯に行った。一度だけではなかった。一度は古賀さんがいないタイミングだったが、もう一度は、古賀さんは他の女の子と同伴で、MKにいた。
さすがに、さきとタイミングをずらしてMKに入ったものの、誰と行ったのか、それはすぐに分かるもので、店に入り辛くて仕方なかった。
いつものように、古賀さんの横に準備された席に座りはしたが、いつもの、
「なんやと!?なんやと!?」
という言葉もなく、
「誰と行ったと?」
と聞かれる事もなかった。
その事がまた、より一層気まずさに拍車をかけた。
古賀さんからすれば、真理恵も、さきも、僕に取られている。そして、真理恵からも、さきからも、古賀さんからどういう事をされた、という事、さきに至っては、その2人のLINEの内容まで、僕に筒抜けだったのだ。
その気まずさに、僕は本当にどうしていいやら、分からなかった。
さきの誕生日、さきの気持ちを思うと、古賀さんとの同伴は複雑な気分であったが、先に決まっていた話なので無理にねじ曲げようとはしなかった。
僕はその日、さきへプレゼントを渡した。欲しがったコスメだった。
「嬉しい!!」
さきは飛び上がって喜んでいた。
そして僕は改めて、その週のさきが休みの日にフレンチへ連れて行って、一晩過ごしたのであった。
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