カルバート

角田智史

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 MK 8

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 あのビアガーデンから、丸1年経った。
 今年もまた、同じく社内でそれを利用する事となった。
 それは、古賀さんの退職祝いも兼ねたものとなった。
 
 出欠は幹事の別の人間が取っていったのだが、延岡のみならず、県内全域から集まり、20人を超えるような話となっていた。この会社では24時間体制で必ず誰かが勤務につかないといけない為、なかなかまとまった人数が集まる事はない。延岡にここまで集まるのは、おそらく後にも先にもないんじゃないかと思うと、古賀さんの人望というものが顕著に表れるものとなった。
 当然、二次会はMKでという頭もあったものの、貸し切りのレベルになる為、僕は幹事の人間に他の店をあたるように話をしていた。
 ただ、この幹事もそういった事が苦手で、結局は「角田さん、二次会の手配もお願いしますよ~。」と言われ、致し方なく、まきに話を持っていったのだった。

 ビアガーデンでは、誰もが、正造の話なんてする事なく、皆楽しく飲んでいた。
 結局、そこから移動して、MKに入ったのは17人だった。
 たまたまママレードで出会った真理恵の彼氏、その彼に最初連れていってもらったMK。様々なドラマを生み出したMKに、県内各地から17人、上役含め連れてきたと思うと、僕は感慨深いものを感じていた。

 あれから僕は、支社長から聞いていた。
 別会社でも正造は有給を使いきったようだと。
 それ以前、子供が感染症で、とか熱が出て、とかそういった理由で一カ月程、会社に来ていなかった時期もあるようだったと。
 その時期を照らし合わせると、あの真理恵と飲んで僕がMKの椅子を蹴ったくった、あの日と見事に合致していた。
 どこか違うところで飲んでいるだろう、そんな話はよく女の子とするものの、実際にどこかで見たという話は聞いた事がなく、また、僕自身そんな彼への興味が薄れてきている事もあり、そこをハッキリさせる必要はないと感じていた。

 あれ以来、正造がMKのドアを開ける事は無くなった。

 常連である古賀さんの退職祝いという事は伝えていたので、店側からはお祝いでシャンパンとケーキを出されていた。古賀さんはものすごく喜んでおり、結果まあ、MKが二次会で良かったのかなと僕は思った。

 MKは時間になったので切り上げ、僕らは支社長の付き合いがあるスナックへ向かった。本来は静かで高級なお店らしいのだが、支社長はじめ僕らが行ってしまうと、静けさなんてどこかへ吹き飛んでしまう。
 ボックスの端っこに座った僕の視界に、カウンターに座っている若い2人組の女の子が見えた。

 すると、すっかりいい気分になっていた古賀さんがこっちのボックスへ、その内の1人の手を引いてきた。そして僕に言ってきた。

 「ほら!雪穂よ!雪穂!」
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