47 / 81
なつみ
しおりを挟む
「誠に申し訳ありません。」
2階のドアを開けて見える小さな机、それを挟んでそう言った時、まきは、
「なんで知ってると?」
とお角違いな答えを返してきた。
その時に、明らかに彼となつみの間で何かがあったというのは勘づいてはいた。
古賀さんと話していた。
僕は前述した通り、何かがあったと思っていた。
しかしながら、古賀さんは実際にそれがあったのではなく、何等かの噂を彼が言いふらしたのではないか、という推論であった。例えば店の子の誰かが尻軽だとか、そういったものだった。
「そうかも知れませんね…。」
と言いつつも、正造となつみの2人の姿を思い起こすと、何かがあってもおかしくはない、と思っていた。
なつみの印象は僕の中で悪かった。
綺麗な顔立ちで、スタイルも良かった。ゆるふわっとした天然キャラといったのが最初の印象だった。古賀さんからのなつみに対する愚痴も良く聞いていた。
そして僕は実際に被害も受けていた。
カウンター越しになつみと喋っていると、僕が言った一言が気に食わなかったらしく、僕のおでこをバチン!と叩いてきたのだった。いい音がした為、店の中は一瞬にして静まり帰った。
ここみや他の女の子が一生懸命に僕を気遣い、謝ってきた。
100歩譲って、叩かれたその事はいい。僕が失礼な事を言ったのかもしれない。
だが、店の中が一瞬にして白けた空気になった事と、従業員として客にやっていけない事をしてしまった事、何より、一番気分を害したのが、まきとここみが僕に謝らなければならない事だった。
僕はまきを大事に思っている。
まきもまた、僕を大事にしてくれている。
まきはここみを大事にしている。
まきが僕を大事にするから、ここみも僕を大事にしてくれる。
だから僕はここみを大事にしている。
僕がこちらにきて、そして創り上げてきた、MKでの人間関係。
これを侮辱したり、波立たせる事は、僕にとっては許せない事だった。
ある日一度、MKで正造に聞かれた事がある。
「角田さんて、怒ったりする事あるんですか?」
僕は、言いたくなかったが、本人を目の前にして言った。
「俺が大事にしてる物とか、人とか、その気持ちを無下にされるのだけは腹が立つ。」
彼に向けて言った言葉である事を、彼はまた気づいた様子もなく、また違う話を繰り広げるのだった。
なつみの言動は常に、周りへの配慮が少ないものだった。
ナチュールにはお客さんが入っているらしかった。
「ん?」「ん?」という空気が流れ、
「誰もいない時じゃないと喋れんね…。」
とまきは言ったが、僕の心はもう決まっていた。
2階のドアを開けて見える小さな机、それを挟んでそう言った時、まきは、
「なんで知ってると?」
とお角違いな答えを返してきた。
その時に、明らかに彼となつみの間で何かがあったというのは勘づいてはいた。
古賀さんと話していた。
僕は前述した通り、何かがあったと思っていた。
しかしながら、古賀さんは実際にそれがあったのではなく、何等かの噂を彼が言いふらしたのではないか、という推論であった。例えば店の子の誰かが尻軽だとか、そういったものだった。
「そうかも知れませんね…。」
と言いつつも、正造となつみの2人の姿を思い起こすと、何かがあってもおかしくはない、と思っていた。
なつみの印象は僕の中で悪かった。
綺麗な顔立ちで、スタイルも良かった。ゆるふわっとした天然キャラといったのが最初の印象だった。古賀さんからのなつみに対する愚痴も良く聞いていた。
そして僕は実際に被害も受けていた。
カウンター越しになつみと喋っていると、僕が言った一言が気に食わなかったらしく、僕のおでこをバチン!と叩いてきたのだった。いい音がした為、店の中は一瞬にして静まり帰った。
ここみや他の女の子が一生懸命に僕を気遣い、謝ってきた。
100歩譲って、叩かれたその事はいい。僕が失礼な事を言ったのかもしれない。
だが、店の中が一瞬にして白けた空気になった事と、従業員として客にやっていけない事をしてしまった事、何より、一番気分を害したのが、まきとここみが僕に謝らなければならない事だった。
僕はまきを大事に思っている。
まきもまた、僕を大事にしてくれている。
まきはここみを大事にしている。
まきが僕を大事にするから、ここみも僕を大事にしてくれる。
だから僕はここみを大事にしている。
僕がこちらにきて、そして創り上げてきた、MKでの人間関係。
これを侮辱したり、波立たせる事は、僕にとっては許せない事だった。
ある日一度、MKで正造に聞かれた事がある。
「角田さんて、怒ったりする事あるんですか?」
僕は、言いたくなかったが、本人を目の前にして言った。
「俺が大事にしてる物とか、人とか、その気持ちを無下にされるのだけは腹が立つ。」
彼に向けて言った言葉である事を、彼はまた気づいた様子もなく、また違う話を繰り広げるのだった。
なつみの言動は常に、周りへの配慮が少ないものだった。
ナチュールにはお客さんが入っているらしかった。
「ん?」「ん?」という空気が流れ、
「誰もいない時じゃないと喋れんね…。」
とまきは言ったが、僕の心はもう決まっていた。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる