カルバート

角田智史

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 MK 2

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 ナチュールの契約を取ってから、僕は一つだけ決めていた事があった。それは正造へこちらから連絡はしない、というものだった。正造から連絡があれば、僕は今まで通りに対応するつもりだった。
 「甘やかしすぎたのかもしれない」
 そんな思いもあっての事だった。

 6月。
 お客さんのホテルでビアガーデンが開かれ、必ず会社でそれを利用していた。そのホテルは僕のお客さんであり、僕が仕切る事も分かっていた。

 ある日の夕方、僕はまた名案を思い付いたのだった。それはビアガーデンの後の二次会でお礼も兼ねてMKを利用する、というものだった。我ながらこれ以上ない案だと思った僕は、対面に座っていた正造に思いついた瞬間にそのまま伝えた。
 「ビアガーデンの後にMK行けばいいやん、みんな連れていけばいいやん。」
 「ああ、そうっすね。」
 「ビアガーデンは俺が出欠取るから、二次会は正造がやればいいやん。一人一人聞いていって…、今よ今。」
 僕の斜め後ろに座っている管理課の2人を顎で差した。
 「あっ、今っすか…、」
 正造はペコペコしながら、たどたどしく二次会出席のお願いをしていっていた。

 それから僕は、ビアガーデンの出欠確認とともに、二次会出席のお願いも暗に繰り広げていった。狭い支社内であったが、ほぼ全員が出席するような勢いで、みんないい返事をしてくれた。ただ、二次会に関しては改めて正造から連絡があると思うから、と言って回っていた。
 ある意味、僕からの成約祝い、僕はどこまでも正造を立てて、そして完全なる根回しを進めていった。
 しかしながら、会社の事であるので、当然、一番に出欠を取るべきは支社長であった。

 これまで何度か、支社長もMKを訪れた事があった。
 それは明らかに、僕らの顔を立てる為であって、来る度に大枚を叩いて、またピザや出前を頼む事も多かった。
 支社長から言わせれば、娘に近いような年齢の女の子と一緒に喋っても、娘の友達とか、そういう繋がりにすぐ発展する事が怖く、全く楽しめないとの事だった。
 その妙案を正造に伝えてから、1日経ち、2日経ち…、正造は支社長へ二次会の事は言わなかった。気が付けばもう、前日。業務課長にも伝えてないようだった。正造が誘いやすい人間だけに声を掛けて、若手の何人かにもまだ声かけもしていないようだった。
 大人数となればスナック側も当然準備がある。MK側にも言うように、と伝えてはいたが、まきに聞くと「大体10人くらいとは聞いてるけど、詳しくは聞いてないとよねー。」そんなものだった。

 当日の朝、僕はいよいよ正造を会議室に呼び出した。

 
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