カルバート

角田智史

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 サンボウ

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 駐車場は停めにくい。

 観光名所である馬ケ背や、クルスの海。
 そこへ向かう、カーブとアップダウンが多い道。その途中に少しだけ広場のように膨らんだ駐車場がある。右手の生い茂った木々、そのせいで注意していないと見落として通り過ぎてしまう。
 そもそも傾斜がついており、更には白線が斜めになっていて、基本のバック駐車をしようと思えば、必ず車道に一度大きく出ないといけない。
 社用車のミラであった為、比較的楽に駐車できた。

 車から降りると、潮で少し肌がベタついた。
 細い広葉樹が両脇に高く生い茂り、その中を一本の小道が伸びている。

 
 木漏れ日。


 いつだってここだった。
 いつだってここに来たかった。

 僕が涙を流す時は。

 
 運試し。
 僕は勝手にそう思っている。
 この細い道を進んでいった先の行き止まりに、屋根つきのテーブルとベンチがある。
 そこに誰もいない事を願う。
 
 誰かがいるとすれば、僕は泣く事さえも許されない。

 木漏れ日のトンネルをくぐろうとした時には既に嗚咽がこみ上げていた。

 30メートル程、トンネルをくぐると、視界が開ける。
 赤茶けた岩と、青い海。
 右手には赤茶けた岩が緩やかに、時に急に海まで伸びており、左手には背の低い木々が所々岩から生え、上の道路までそれが続いている。正面に見えるのは果てしない青い海。
 小道は少し左に曲がり、ベンチへと辿り着く。

 ベンチには、誰もいなかった。
 泣く事を許された僕は、ベンチに腰掛けた。

 眼前、海が広がった。暫く、一時の感情を失った。


 しかし、またすぐに溢れ出した。



 何の為に?
 誰の為に?

 何を間違えた?
 なんだそれ?
 なんだそれは?

 僕は声を上げて泣いていた。
 理由なんてなかった。
 悲しいわけでもなかった。
 悔しいわけでもなかった。

 途中、人が小道をこちらへ向かってくるのが見えた。
 無理に涙を引っ込めた。こんな真昼間からサラリーマンの恰好をした人間が声を出して泣いているのはあまりに恥ずかしい。
 涙を引っ込めるのに必死で、気がつけば途中まで来ていた人は視界に入らなくなっていた。
 お陰で少し落ち着いた。そしてこの場所に感謝した。
 あくまで仕事中であって、いつまでもここにはいられなかった。
 ベンチを立って、歩きだした。


 その時、唐突に思った。


 僕は苦しかったんだ、と。


 彼と過ごした1年間、楽しかった記憶の方が大きい。
 よく笑い、くだらない事でよく盛り上がり、よく飲みも行った。



 その反面、それら以上に、僕は苦しんでいたんだ。


 
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