暗渠 〜禁忌の廻流〜

角田智史

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 低く見積もって33万分の1という事であった。

 これを日本の人口1億2千万で割ってみると約363という事になり、果たしてこの事が凄い事なのかどうか、それも定かではないし、あくまで僕の頭の中にあるだけの話であって、尚の事それの価値や希少具合というのは誰も測る事はできなかった。


 チャリを街まで走らせた僕はビルの前でしばし待っていた。
 〔すぐに下りる〕
 そう言った彼女はすぐにビルから出てきて駆け寄った。

 いつもの僕がいくようなカラオケやゲームをして盛り上がるようなスナックよりは、久々に会う彼女とは積もる話もあるだろうと、僕はどちらかと言えばしっぽりと飲めるような、男の人が1人で切り盛りしている店へと向かった。

 僕は当然、ハイボールを頼んだのであるが、彼女も釣られるようにして同じものを頼んだ。もちろんの事、積もるような話はあったのではあるが、以前のイメージからかけ離れていた事は唯一、あれから向こうあまり酒を飲んでいない事であって、20年前に浴びるように焼酎をかっくらっていた彼女とは想像もつかないような飲みっぷりであった。
 それぞれの家族の話、共通の知り合いの話なんかをしてマスターを交えながらポツリポツリとした会話を繰り広げていった中で、彼女とマスターとほぼ同年代という事もあって、当時彼女が乗っていた車の話題となっていったのである。
 彼女は僕と仲良くなる前に黒いシーマに乗っていた。見るからにヤンキーの車であって、それを昔からよくネタにされていたのである。彼女自身の見た目もどこからどうみてもヤンキー臭が漂っており、実際にそんな一面もあるにはあるが、話してみると、そうでもない。僕を前にすると尚の事であった。
 彼女は僕と出会って間もなく、黒いシーマから黒いムーブに乗り換えた。
 僕はこの窓に黒いカーテンの施された、白い光を放つ黒いムーブに大変お世話になったのである。
 何もない田舎の密会では当然、彼女の車を使う事が多かったし、その車に乗って熊本まで一緒に行った事も何度もあった。
 その車のナンバーは2桁の「・・36」だった。
 田舎の土地柄では、誰の車が何番だと言う事はすぐに知れていた。そして尚更、彼女はヤンキーで通っていた為、周囲の人間からある事ない事を噂される立場もあり、更に覚えやすい2桁の数字であって、熊本に住んでいた彼女のこの車を誰かが見ようものなら瞬く間に村中の噂となっていたのである。
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