暗渠 〜禁忌の廻流〜

角田智史

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 それを見つけるのに、さほどの時間は要さなかった。
 10分もかからなかったのではないだろうか。

 さおりが出勤する時、割合高い確率で緑色でストーリーズが上がっていた。
 それは電車の中で撮られた写真だった。出勤、退勤の時間は容易に予想がついた。
 市内の風俗サイトを覗いていくと、やはり夜遅くまでの出勤時間の女性が多かった。そして数多くの店があるにはあったが、大手である事も割れていた。大手と言っても、「本日出勤」となっている女性は20人もいないくらいのもので、更には彼女の写真の掲載がない事で、かなり絞られていった。その中で、彼女の出勤の時間はある意味珍しく、他の女性と比べると半端な時間帯となっていた。
 2,3人の候補がいたわけではなく、あたりを付けてプロフィールまで閲覧した時点でほぼほぼ確証を持っていた。働き始めた時期、趣味や特徴の自分で書く欄で、明らかに彼女の特徴が表れていた。
 最も確信めいたものを持ったのは、今から入店を検討する女性達へ向けた、アンケート方式のメッセージだった。以前より、彼女はどこか先駆者として、これから働く女性達を応援しようとするスタンスを時折僕の前でも見せていて、共通の知り合いの年下の女性の話題になっては、もっと大きな街で活躍するべきだと大きな目を見開きながら語りかけるのだった。

 そこまでの確証を持ちながらも僕の気持ちは思った程、安定していた。
 以前、ほぼ3年前だろうか、彼女が初めて僕の前から姿を消した時、僕はいてもたってもいられなかった。
 そういう仕事をしている、それを知った時も、そして実際にそれをHPで見つけても、以前であれば相当心はぐらついていたと思う。
 ただとうとう見つけてしまった僕は、これをさあ、どういう風に持っていくべきなのか、それをひたすらに考えた。
 
 そこまでの確証を持ちながらも、僕は、更に確証を求めた。
 もろもろと考えを巡らせる中で、実際に僕が動く事、それを考えると、少しの不安要素、疑念も無くしたかった。様々なリスクを極力抑えたかった。

 緑色のストーリーズが上がった時、僕は彼女を飲みに誘った。その時既に彼女がデリヘルで働いている事は、彼女の口から僕は直接聞いていた。
 〔ゼンダー行かへん?〕
 〔今日が厳しめ…。行きたかった😭〕
 ゼンダーはバーだった。1度か2度入った事はあった。以前から彼女とバーに行きたい気持ちを持っていたし、実際に行こうと誘った事もあったが、タイミング悪く入れなかった。
 〔また行ける日があったら行くべ〕
 そう返信した後、何時間後かに
 〔もう予定埋まりました?〕
 という返信がきた。
 
 この間も僕は彼女が上げる緑のストーリーズの内容、その時間と、返信がくるタイミングとを、HPで出勤している彼女の予定とを照らし合わせていた。HPでは「次回13:00~」といった形で次の空き枠が分かるようになっている。見つけてからというもの、かなりの高確率で早めに「受付終了」となっていくのだった。
 結局、彼女はその日僕と飲みに出たのだった。そして彼女から吐露されていく情報の一つ一つを確かめていった。

 一応お伝えしておくが、僕から質問していく事はほぼないのである。いつだって、誰でも、向こうから言って
くるように、僕は仕向けていく。

 「今度呼ぶわ明日呼ぶ、明日」
 帰り際に僕はそう言った。僕が見つけ出している事を知らない彼女は、
 「だいたい明日休みだし!」
 そう笑いながら言ったが、僕はそれを知っていた。
 「じゃあ来週呼ぶ来週。」
 「大丈夫です!いつも満員御礼です!」
 いつもの冗談だと思い込んで彼女は笑いながらそう言ったのだった。
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