暗渠 〜禁忌の廻流〜

角田智史

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 「こないださおりと飲んだよ。」
 ママにそれを伝えた時にはやはり細い目を大きく見開いて「うそ」と言ってきた。
 「たまたま?」
 「…いや。」 

 僕はnabarで彼女と飲んだ事、それを迷いながらもスナックの女の子に吐露していた。
 これを吐露する事は僕としても勇気がいる事でもあった。
 反応は様々ではあったものの、僕としては、ただ連絡が取れなくなって来なくなった、それは最初に僕が彼女を連れていった事がきっかけで入ったスナックなだけに、良くしてくれたママの手前、どうにかなればと思っていた。
 時折は聞いていたのである。女の子達から「さおり戻ってこんちゃろか?」「いつでも戻ってきていいからって言っといて」そんな言葉を聞いてはいたが、またしても僕にも連絡がない状況であって、つい先日まではどうしようもなかったのである。
 僕としても、この状況は芳しいものではなかった。心配しているスナックのママ、そして女の子よりも先に僕と連絡が取れて、そして飲みにまで行ってるのだから。彼女と僕の付き合いが長く、良く知っているとはいえ、元々一客として出会った仲であって、そうなってくると彼女は嫌でも女の子から反感を買うハメにはなった。
 
 ただ、ママには、あれから2度目、この日に彼女と飲みに行くという事は伝えていた。何なら少しの間だけでも彼女とママの2人で話す時間が作れればと、そんな事は考えていたのだった。
 〔さおり嫌がらんやろうか?〕
 10分だけでも少し話す時間を作ろうか、それをママへ伝えた際、返ってきたそのママからの返信でやはり人としての魅力、ママとしての魅力を感じるのだった。
 彼女の事をスナックで話していた時に「うちは受け入れるよ!」と強く言っていた言葉、あの場面が頭をよぎったのだった。

 元々、僕も、周りの人間も伝えてはいた。いつの間にか突然いなくなるような奴だと。
 ただしかし、ママの性格を考えるとやはり、そうは言っても、心配している、それは十分に感じられたし、つい慣れっこになってしまった僕の、彼女の神隠しに対しての1番最初の感覚を思い起こすと、いてもたってもいられないような、ショックが大きい出来事であって、それと同じような感覚にママはなっているはずだと思った僕は、少しでもいいからママを安心させたい、元気な姿を一目見せるだけでもいい、そう思っていたのである。
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