最後の晩餐レストラン

ビッグバン

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お子様ランチ 前編

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お姉さん。ここどこ。ねえ。お母さんは。

いつの間に店に幼稚園児くらいの男の子が入り込みキョロキョロと辺りを見回しながら店中を駆け回り始めた。

いつも無表情でマネキンの様て何に対しても無関心な鬼ムノーが珍しく興味を持ったのかこう言った。
コラコラ。お店で走っちゃ危ないです。ホラ。はい。お姉ちゃんと一緒に席に座って。遊んでやるです。

厨房からこの店のオーナーが顔を出してこう言った。

ムノーちゃん。給仕は今君しかいないんだよ。困るよ。勝手な事しちゃ。

黙れです。たまには動きやがれです。ビール腹。私は今忙しいんでやがるです。

困ったね。他の従業員は今確定申告しに書類を出しに行って貰ってるし。仕方ない。私が行くか。
オーナーは厨房から出て料理を運ぼうとしたその瞬間。木製になっている食事スペースの床が体重に耐えきれずに派手な音を立てながら床が割れてしまった。
ヨイショ。バキバキボキぱきゃ。床が抜けた。ギャアァ。

ムノーは感情の無い声で棒読みでこう言った。
ハアッ。どんだけ太ってやがるですか。もういいです。肉ダルマ。私がやるです。

ごめんね。ムノーちゃん。出来れば引き上げてくれない。

ふん。

あの。本当ごめんムノーちゃん謝るから角点灯させないで電気がバチバチ言ってるから。

ハハハッ。。お姉ちゃん達面白い。

はい。ハンバーグです。

あの。もしかして。ワシこのまま。

わい。僕ハンバーグ大好きいただきます。

うわあ。美味しい。このハンバーグいつもの冷凍の奴じゃない。それに、冷たくない。

坊主。それが普通のハンバーグだよ。

そうか。ハンバーグって丸くてあったかいんだ。初めて知ったよ。ありがとうおじさん。礼なら良いよ。それより早く引き抜いて。

少年は夢中でハンバーグに食い着いた。そして、食べ終わると何かに怯えた様にあたりを見回し始めた。

オーナーは床にめり込んだままこう言った。
どうしたんだい。急に怯えて。

こんな美味しい物食べてたら殴られちゃう。

殴られる。誰にだい。

お父さん。僕のお父さんではないけどね。

僕、いつも食べかけの物しか食べるのを許されてないの。僕兄弟がいるんだよ。兄達はお父さんの子なんだけどね。兄達は先にご飯を好きなだけ食べられるんだけど。

僕は食べ残ししか食べちゃダメなんだ。

オーナーは床にめり込んだまま真面目な顔でこう言った。
そうか。君はそれについておかしいとは思わないのかい。

思うよ。僕だって温かいご飯をお腹いっぱい食べて掃除も洗濯もせずに遊びだい。玄関じゃなくて温かい布団で寝たいと思うよ。

少年は弱々しい笑顔を浮かべながらこう言った。

でもね。言えないんだ。僕は子供だから文句は言えないんだ。声に出して不満を言っても誰も聞いてくれないし、ただ殴られるだけ何だ。それに、文句を言って家を追い出されたら僕生きて行けないし。それにあんな親でもいつかきっと頑張れば僕の事を可愛がってくれるはずだよ。

来ないよ。そのいつか。絶対に来ないよ。どれだけ期待してもどれだけ待っても君が望む明日はやって来ないよ。

このままでは君はいつまでも同じ事を思い繰り返す事になるよ。学校に行っても会社に行ってもね。

君は自分が変われば周りが変わる。周りの見る目が変わって優しくなる。いざとなったらあんな親でも助けてくれると思ってるんだね。

でもね。結論から言って。どんなに君が変わろうが親は変わらないよ。何故なら君が親の為を思って行動しようと親を見ても親は君を見てもいないからね。

君がどんなに変わろうが親が君を評価する事はない。それどころか、君が成長すれば、親は君の成長を認められずもっと酷い暴力を振るったり、君の足を引っ張るだろう。

こういう奴は世の中に溢れるほどいるんだ。

会社。学校至る所にいる。君が考え方を変えなければ君はそいつらの食い物になるだけだ。

君が変えるべきは環境なんだ。君は家を出るべきだ。

そんな事ない。僕がダメなだけで僕が成長すればお母さん達はきっと。

いい加減気づけ少年。君が受けてるのは教育ではなく洗脳なんだ。

ここで家を出なければ君の未来はない。ずっと変わらない変われない今日を過ごすだけだ。

何度も言うがクズが変わる事はない。君が言う様にな。愛情が君の親にあるなら君をこんな目に遭わせたりしない。ありもしない希望にすがりつくな。少年。

少年は暗い顔でこう言った。
そんな事言われても僕困るよ。

そうか。そうだよね。難しい事言って悪かった少年。とりあえず今日はご馳走するよ
良いんだよ。お金何て気にせず好きなだけ食べて。

それと私達でよければ好きなだけ迷惑かけて良いんだよ。君が我慢する必要なんてないんだよ。好きなだけわがままを言ってごらん。

子供が大人にわがままを言うなんて当たり前の事だよ。今までがおかしかったんだよ。大人が子供にわがままを言う方がね。

本当に。何だか。夢みたいだ。多分これは夢だけど。

逆に今まで夢かもしれないよ。今君は長い悪夢からやっと目覚めた所なのかもね。
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