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二人暮らし編
2人の朝食
しおりを挟むあの日から2人暮らしとなった俺だが、このことを知っている奴はいない。
いや、教えられるわけがない。
あーやは「未来から来た自分の娘だ」なんて、誰が信じるだろうか。
完全に変人扱いどころか誘拐犯になってしまう。
これからどうやって生活していくかは検討中だ...
*****
「あーや、起きろ、朝だぞ」
顔を洗い、完全に目の覚醒した香がベットで寝るあーやを起こしにかかる。
「...んぁ...おやすみぃ...?」
寝ぼけながらあーやは目をこする。
「いや、おはような、はい、起きて」
あーやにかかっていた布団を引き剥がし、カーテンを全開にする。
「うぅ...まぶすぃ...」
あーやは陽の光に当てられた吸血鬼のように体を丸め小さくなった。
...あまりにも辛そうだったので
「...はぁ、じゃあ飯作るまで寝てていいから」
剥がした布団をあーやに掛け直し、香はキッチンに向かう。
朝飯と言ってもかなり限定される。
なんせ作れるのは目玉焼き、いや、それしかない。
「...よしっ」
袖をまくり香は気合を入れた。
*****
「...ふぁ...なん...この匂い」
目をこすりながらあーやが体を起こす。
「おぉ、起きたか。飯だぞ、飯」
ちょうど着席しようとしていた香が自慢げにテーブルを指差す。
あれから20分後、小さいテーブルには朝ごはんが並べられていた。
鯖の缶詰に、ご飯、インスタントの味噌汁、パックのお茶。
そしてこの料理のメイン、目玉焼きだ。
少々型崩れが見られるが、胃に入れば同じだと、香シェフは豪語する。
香特製のこの料理は、オリジナル目玉焼き鯖スペシャル定食と呼ばれている(香に)。
「めし...?」
あーやは開ききっていない目でテーブルを見る。
「そうだ、飯...って...あ、あーや...?」
しばし香シェフ作、オリジナル目玉焼きさ(略)を凝視し沈黙。
これが俺の全力...フルパワー...
これ以上の物を俺は作れない...
やっぱ未来って違うのか...そうなのか...
妙に緊張してきた香の額を汗が流れる。
部活やらずに家で過ごす、自分の飯を作っていた俺の努力(?)...
あれは無駄だったというのか...
今まさに有罪か、無罪かを言い渡される被告人、香は手に汗握り、裁判長、あーやの言葉を待つ。
そしてあーやは口元を緩め小さい声で言った。
「...ぉいしそぅ...」
香の努力は報われた。
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