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1 母との別れ
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様々な春の花がほころび始めた頃、母は息を引き取った。
教会で葬儀にはお隣のジョージさん夫妻や母さんと仲の良かったご婦人方が出席してくれ、一輪ずつスイトピー花を棺に添えて、お悔やみの言葉をかけてくれた。ジョージさんと奥さんのナナさんは
「レイちゃん。今日はうちで晩御飯食べなさいね」
「レイ坊、また後でな。家で待ってるぞ」
「はい、ありがとうございます。これまでも母のことを気にかけてもらってとても助かりました。ありがとうございました」
今日は天気がよく緑が青々として風もなくとても穏やかな日だった。父さんの隣に埋葬された母さんの墓標と父さんの墓標に花を供えた僕はその場に座り込んだ。
「ごめんね。母さん。薬師の癖に母さんを助けられなくて。父さんごめんね。母さんを守れなくて」
ぽろぽろと涙がこぼれた。半人前薬師の僕の薬じゃ助けられなかった。
温暖な気候でめったに雪が降ることはないのに、年明けに十数年ぶりの大雪が降った日、母さんは風邪をこじらせて体調を崩すようになった。僕はもっと効能の高い薬草を手に入れたくて、幼馴染で冒険者のギルバートに頼んで森の奥に連れて行ってもらい、新しい薬草を見つけてたくさん摘んで、母さんの好きなリパの実をもいで帰った。
新しい薬草で薬を作る。飲みやすいように取れたてのリパの実も加えてみる。
「母さん、気分はどう?新しい調合で薬を使ってみたんだ」
「ありがとう。薬を飲むとすっきりするわ。でも無理だけはしないでね」
母さんは僕の頭をなでてくれた。
それから、何度かギルバートに連れて行ってもらったり、ギルバートのパーティが日帰りや一泊のクエストを受ける際には同行させてもらいパーティの食事の用意や雑用をこなしながら、空いている時間に薬草や果物を取らせてもらい、家に帰れば母さんに効く薬を調薬していた。
一生懸命薬を作っては母さんに飲んでもらう。
飲んだ後は顔色と体調も良くなる。休んでいてくれたらよいのに仕事に出てしまう。すると2~3日で体調が悪くなってしまう。
「母さん。父さんが元気だったころみたいな生活はできないかもしれないけど、何とか生活できるだけのお金は薬師の仕事で稼ぐから仕事に行かずにゆっくり休んでよ」
「ありがとう。でも母さんも働きたいの。あなたにおいしいものを食べさせてあげたいし、少しでもあなたにお金を残せたらと思っているの。あなたにはいろいろな経験をしてもらいたいから」
「ありがとう母さん。うれしいけど僕は母さんの体のほうが心配だよ。僕がもっと働いておいしいもの食べさせてあげるよ。だから無理しないで」
「ふふふ。母というのは我が子のためにいろいろとしてあげたいのよ」
「ありがとう。でも絶対に無理はしないでね」
ヤンさんの薬局に薬を下ろして、ギルバートにお願いしてまた薬草採取に行くことにした。ギルバートは快く引き受けてくれたけど、パーティーメンバーには煙たがられている。ギルに迷惑をかける厄介者扱いだ。ギルが見ていないときに、小突かれたり足をかけて転ばされたり嫌味を言われた。
市販の薬草では効果が半減してしまうので、どうしても新鮮な薬草が必要だったから、そんなことにかまっていられなかった。迷惑がられても頭を下げて仲間に入れてもらった。
花も咲き始め薬草ももうじき新芽がでてもっと効果の良いものが作れると思った矢先
母が眠るように息を引き取った・・・・・。
教会で葬儀にはお隣のジョージさん夫妻や母さんと仲の良かったご婦人方が出席してくれ、一輪ずつスイトピー花を棺に添えて、お悔やみの言葉をかけてくれた。ジョージさんと奥さんのナナさんは
「レイちゃん。今日はうちで晩御飯食べなさいね」
「レイ坊、また後でな。家で待ってるぞ」
「はい、ありがとうございます。これまでも母のことを気にかけてもらってとても助かりました。ありがとうございました」
今日は天気がよく緑が青々として風もなくとても穏やかな日だった。父さんの隣に埋葬された母さんの墓標と父さんの墓標に花を供えた僕はその場に座り込んだ。
「ごめんね。母さん。薬師の癖に母さんを助けられなくて。父さんごめんね。母さんを守れなくて」
ぽろぽろと涙がこぼれた。半人前薬師の僕の薬じゃ助けられなかった。
温暖な気候でめったに雪が降ることはないのに、年明けに十数年ぶりの大雪が降った日、母さんは風邪をこじらせて体調を崩すようになった。僕はもっと効能の高い薬草を手に入れたくて、幼馴染で冒険者のギルバートに頼んで森の奥に連れて行ってもらい、新しい薬草を見つけてたくさん摘んで、母さんの好きなリパの実をもいで帰った。
新しい薬草で薬を作る。飲みやすいように取れたてのリパの実も加えてみる。
「母さん、気分はどう?新しい調合で薬を使ってみたんだ」
「ありがとう。薬を飲むとすっきりするわ。でも無理だけはしないでね」
母さんは僕の頭をなでてくれた。
それから、何度かギルバートに連れて行ってもらったり、ギルバートのパーティが日帰りや一泊のクエストを受ける際には同行させてもらいパーティの食事の用意や雑用をこなしながら、空いている時間に薬草や果物を取らせてもらい、家に帰れば母さんに効く薬を調薬していた。
一生懸命薬を作っては母さんに飲んでもらう。
飲んだ後は顔色と体調も良くなる。休んでいてくれたらよいのに仕事に出てしまう。すると2~3日で体調が悪くなってしまう。
「母さん。父さんが元気だったころみたいな生活はできないかもしれないけど、何とか生活できるだけのお金は薬師の仕事で稼ぐから仕事に行かずにゆっくり休んでよ」
「ありがとう。でも母さんも働きたいの。あなたにおいしいものを食べさせてあげたいし、少しでもあなたにお金を残せたらと思っているの。あなたにはいろいろな経験をしてもらいたいから」
「ありがとう母さん。うれしいけど僕は母さんの体のほうが心配だよ。僕がもっと働いておいしいもの食べさせてあげるよ。だから無理しないで」
「ふふふ。母というのは我が子のためにいろいろとしてあげたいのよ」
「ありがとう。でも絶対に無理はしないでね」
ヤンさんの薬局に薬を下ろして、ギルバートにお願いしてまた薬草採取に行くことにした。ギルバートは快く引き受けてくれたけど、パーティーメンバーには煙たがられている。ギルに迷惑をかける厄介者扱いだ。ギルが見ていないときに、小突かれたり足をかけて転ばされたり嫌味を言われた。
市販の薬草では効果が半減してしまうので、どうしても新鮮な薬草が必要だったから、そんなことにかまっていられなかった。迷惑がられても頭を下げて仲間に入れてもらった。
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