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ここから生還する方法を知りたい
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そこから薫くんに出会って結婚して、地の底から救われたような気持ちになったのに、それのしあわせも一瞬だったな。そうだ、忘れてはいけない。わたしは変化の激しい折れ線グラフの人生を送っているのであって、幸せになれそうな気がしても次の暴落を思えば安心して暮らせる瞬間などないのだ。今こうやってアカウントを操って遊んでいる自分が、どん底なのだと思ったら痛い目をみる。これよりもさらに下、クレバスを落ちていくような急降下が、きっと待っている。底につく前に息絶えてしまうような、恐ろしいやつ。
だから、真野くんといっしょにならなかったのは正解なのだ。未来は見えていた。真野くんがわたしをどん底に突き落とすか、わたしが真野くんの腕を掴んでどん底に飛び降りるか、どちらか。
ああ、こういうの、なんていうんだっけ。不幸をよせつける人、自ら不幸へ向かっていってしまう人。そうだ、不幸体質。あぶないあぶない、悪いのはわたしだったんだ。あやうく薫くんのせいにするところだったよ。
家を出て、いちおうお金もあって、なんでもできるはずなのに、もう何もできない。へんなの。もしわたしがわたしの出てくる小説を書いていたら、ここらへんでどこか知らない街に到着させて、知らないおばあさんとかと出会わせて、なんとなく心を通わせたりなんかして、それによる心の成長で小説が書けちゃって、みたいな話になるというのに、なんでそうならないんだろう。わたしを動かす神様は意地悪だ、知らない街でおりる気にもならないし、知らないおばあさんはわたしを無視する。どうあがいても手詰まり。ここから生還する方法を知りたい。
だから、真野くんといっしょにならなかったのは正解なのだ。未来は見えていた。真野くんがわたしをどん底に突き落とすか、わたしが真野くんの腕を掴んでどん底に飛び降りるか、どちらか。
ああ、こういうの、なんていうんだっけ。不幸をよせつける人、自ら不幸へ向かっていってしまう人。そうだ、不幸体質。あぶないあぶない、悪いのはわたしだったんだ。あやうく薫くんのせいにするところだったよ。
家を出て、いちおうお金もあって、なんでもできるはずなのに、もう何もできない。へんなの。もしわたしがわたしの出てくる小説を書いていたら、ここらへんでどこか知らない街に到着させて、知らないおばあさんとかと出会わせて、なんとなく心を通わせたりなんかして、それによる心の成長で小説が書けちゃって、みたいな話になるというのに、なんでそうならないんだろう。わたしを動かす神様は意地悪だ、知らない街でおりる気にもならないし、知らないおばあさんはわたしを無視する。どうあがいても手詰まり。ここから生還する方法を知りたい。
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