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第7話 スタート地点 1
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さおちゃんはアイドルになると決めてから、すぐに行動に移して、オーディションを受けるようになった。これまで休みの日はほとんど一緒に遊んでいたのに、それからのさおちゃんはオーディションを受けたり、ダンスのレッスンに行ったりと忙しそうだった。
「ねえ、さおちゃん明日遊ばない?」
「ごめんね。わたし明日はオーディションだから……」
「最近毎週オーディション受けてない?」
わたしが尋ねると、さおちゃんが大きく頷いた。
「その方が、少しでもアイドルになれる可能性が上がるから」
「それだけアイドルになりたいんだね。応援してるから」
わたしが微笑みながら尋ねると、さおちゃんはまた大きく頷いた。
「杏子ちゃんに早くわたしのこと推して欲しいから!」
さおちゃんの純粋で眩しい笑顔を見て、わたしは少しドキッとしてしまった。
「さおちゃんのこと推すの楽しみにしとくね! さおちゃんのこといっぱい推させて欲しいな」
わたしの言葉を聞いて、さおちゃんはさらに笑顔を弾けさせる。
「アイドルになったら、わたしのこといっぱい愛してね!」
「もちろんだよ」
わたしが大きく頷くとさおちゃんも満足気に頷いていた。
そんな彼女の頑張りを、わたしは微笑ましく見守っていた。目標に向けて頑張るさおちゃんの姿は格好良かった。
だから、日曜日の朝に嬉しそうに家に押しかけてきたさおちゃんの報告を聞いて、わたしも一緒になってとても喜んだのだった。
「受かったわ! 杏子ちゃん、わたし受かった!!」
ぴょんぴょん跳ねている彼女を見て、力一杯抱きしめてしまった。自分のことのように嬉しくて、いつもよりもずっとテンションをあげて言う。
「やった! やった! おめでとう!」
2人で向かい合って両方の手を握り合って見つめ合う。
「ねえ、これでわたしのこと推してくれる?」
「推すよ! わたしの最推しはさおちゃんだよ!!」
さおちゃんが心の底から笑っていたから、わたしは嬉しかった。さおちゃんの笑顔は人を幸せにするから、きっとこれからたくさんの人を幸せにできるだろう。無邪気に笑う小柄なさおちゃんのことを別れ際にもう一度ギュッと抱きしめたら、さおちゃんもギュッと抱きしめ返してくれた。
「ところで、さおちゃんは一体何ていうアイドルグループのオーディションを受けたの?」
「『シュクレ・カヌレ』っていうグループなんだけど……」
スマホで見せてくれたアイドルグループは3人組のユニットを想定しているものだった。事務所名は初めて聞くようなところだったから、どうやらさおちゃんの合格したグループは、まだそんなに有名ではない事務所のグループだったらしい。
「まだできたばっかりの事務所なんだってね。大変かもしれないけど、頑張ってね!」
「でも、ライブも定期的にさせてもらえるみたいだし、杏子ちゃんの前でいっぱい歌えるようになるし、すっごい楽しみだよ!」
さおちゃんはとてもやる気に満ち溢れているみたいで安心する。
「楽しみだよ、さおちゃんのライブ。毎回見にいくね!」
「杏子ちゃんが来てくれるなら、わたしはライブもダンスレッスンもボイトレも無限に頑張れるよ!」
そんな風にさおちゃんが前向きに頑張っている姿を見守るのが好きだった。
彼女の入ったばかりの頃は、『シュクレ・カヌレ』のライブは基本的にはお客さんが十数人の中でライブをすることが多かった。少ない時にはわたしの他にお客さんが2、3人しかいないこともあった。だから、毎回のようにわたしは彼女のことを一番前の席で見ることができた。
一番近くでさおちゃんのことをジッと見つめていると、さおちゃんも、何度も何度もわたしの方に視線を向けてくれた。わたしの方しか見ていないのではないだろうかと勘違いしてしまうくらい、さおちゃんとはライブ中に目が合うことが多かった。
ライブは月に2、3回休みの日にあるくらいだったから、アイドルになったばかりの中学生の頃はさおちゃんも学校に行きながら活動することができていた。平日の放課後に練習をして、休みの日にはライブか、あるいはライブのない日には練習をする。多忙な日々を送っていたけれど、彼女はとても真面目に取り組んでいた。そんな真剣な練習姿勢も含めて、わたしはさおちゃんを推していた。
「ねえ、さおちゃん明日遊ばない?」
「ごめんね。わたし明日はオーディションだから……」
「最近毎週オーディション受けてない?」
わたしが尋ねると、さおちゃんが大きく頷いた。
「その方が、少しでもアイドルになれる可能性が上がるから」
「それだけアイドルになりたいんだね。応援してるから」
わたしが微笑みながら尋ねると、さおちゃんはまた大きく頷いた。
「杏子ちゃんに早くわたしのこと推して欲しいから!」
さおちゃんの純粋で眩しい笑顔を見て、わたしは少しドキッとしてしまった。
「さおちゃんのこと推すの楽しみにしとくね! さおちゃんのこといっぱい推させて欲しいな」
わたしの言葉を聞いて、さおちゃんはさらに笑顔を弾けさせる。
「アイドルになったら、わたしのこといっぱい愛してね!」
「もちろんだよ」
わたしが大きく頷くとさおちゃんも満足気に頷いていた。
そんな彼女の頑張りを、わたしは微笑ましく見守っていた。目標に向けて頑張るさおちゃんの姿は格好良かった。
だから、日曜日の朝に嬉しそうに家に押しかけてきたさおちゃんの報告を聞いて、わたしも一緒になってとても喜んだのだった。
「受かったわ! 杏子ちゃん、わたし受かった!!」
ぴょんぴょん跳ねている彼女を見て、力一杯抱きしめてしまった。自分のことのように嬉しくて、いつもよりもずっとテンションをあげて言う。
「やった! やった! おめでとう!」
2人で向かい合って両方の手を握り合って見つめ合う。
「ねえ、これでわたしのこと推してくれる?」
「推すよ! わたしの最推しはさおちゃんだよ!!」
さおちゃんが心の底から笑っていたから、わたしは嬉しかった。さおちゃんの笑顔は人を幸せにするから、きっとこれからたくさんの人を幸せにできるだろう。無邪気に笑う小柄なさおちゃんのことを別れ際にもう一度ギュッと抱きしめたら、さおちゃんもギュッと抱きしめ返してくれた。
「ところで、さおちゃんは一体何ていうアイドルグループのオーディションを受けたの?」
「『シュクレ・カヌレ』っていうグループなんだけど……」
スマホで見せてくれたアイドルグループは3人組のユニットを想定しているものだった。事務所名は初めて聞くようなところだったから、どうやらさおちゃんの合格したグループは、まだそんなに有名ではない事務所のグループだったらしい。
「まだできたばっかりの事務所なんだってね。大変かもしれないけど、頑張ってね!」
「でも、ライブも定期的にさせてもらえるみたいだし、杏子ちゃんの前でいっぱい歌えるようになるし、すっごい楽しみだよ!」
さおちゃんはとてもやる気に満ち溢れているみたいで安心する。
「楽しみだよ、さおちゃんのライブ。毎回見にいくね!」
「杏子ちゃんが来てくれるなら、わたしはライブもダンスレッスンもボイトレも無限に頑張れるよ!」
そんな風にさおちゃんが前向きに頑張っている姿を見守るのが好きだった。
彼女の入ったばかりの頃は、『シュクレ・カヌレ』のライブは基本的にはお客さんが十数人の中でライブをすることが多かった。少ない時にはわたしの他にお客さんが2、3人しかいないこともあった。だから、毎回のようにわたしは彼女のことを一番前の席で見ることができた。
一番近くでさおちゃんのことをジッと見つめていると、さおちゃんも、何度も何度もわたしの方に視線を向けてくれた。わたしの方しか見ていないのではないだろうかと勘違いしてしまうくらい、さおちゃんとはライブ中に目が合うことが多かった。
ライブは月に2、3回休みの日にあるくらいだったから、アイドルになったばかりの中学生の頃はさおちゃんも学校に行きながら活動することができていた。平日の放課後に練習をして、休みの日にはライブか、あるいはライブのない日には練習をする。多忙な日々を送っていたけれど、彼女はとても真面目に取り組んでいた。そんな真剣な練習姿勢も含めて、わたしはさおちゃんを推していた。
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