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第6話 その日さおちゃんはアイドルを目指した 2
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そうして次の月になり、さおちゃんの希望通り、ミミミちゃんのライブに行くことになった。
「ねえ、さおちゃん。ミミミちゃんのライブ楽しみだね!」
「そうだね」とさおちゃんはそっけなく言う。照れ隠しなのだろうか。テンションの上がりまくっているわたしと違って、さおちゃんは冷静だから、少し恥ずかしくなってしまう。
推しの良さをさおちゃんと共有できることが楽しみで、なんとしてでもミミミちゃんのファンにしたくて、行き道でミミミちゃんのことをたくさん教えてあげてたけど、さおちゃんは興味なさそうに相槌を打っているだけだった。さおちゃんからライブに行きたいと言ってくれたのに、あまり興味が無さそうなことが少し不思議だった。
ライブ会場はそこまで大きくなかったから、良い席が買えなくても、ミミミちゃんの姿はしっかりと見えた。会場に響き渡る声援、ライブ会場の中だけ温度が上昇しているのではないかと思えるような熱気。わたしたちファンは感動に包まれていた。いつにも増してコーレスにも熱が籠る。
ミミミちゃんはたった一人でステージに立っているけれど、パフォーマンスはとても一人だけでステージに立っているとは思えないほど、凄かった。さおちゃんが横にいるにも関わらず、わたしは終始大きな声でミミミちゃんに声援を飛ばしていた。
さおちゃんは静かにだけれど、しっかりと目に焼き付けるようにして、ミミミちゃんの姿を見ていたのだった。チラリとさおちゃんの横顔をみると、本当に可愛らしいのがわかる。普段何かに熱中しているさおちゃんの姿を見ることはあまりなかったから、わたしはなんだか嬉しくなった。
やっぱり、部屋でミミミちゃんの良さを布教をするよりも、実際にライブを見てもらうのが一番だ。さおちゃんと同じ趣味を共有できることへの喜びで胸が弾む。ライブが終わった頃には、さおちゃんにわたしの推しを見せられたことで大満足だったけれど、帰り道に聞いたさおちゃんの決断に、もっと喜ばしい気持ちを覚えたのだった。
「初めて行ったけど、たしかに悪く無いね。杏子ちゃんがこういうの好きなの、納得したかも」
「でしょ! ミミミちゃんすごいよね! 離れた場所から見ても、とっても大きく見えたもん! どの角度から見ても可愛くなるように調整してるからさ、すっごいキラキラして見えたよね!! 今はまだそんなに大きくない箱でやってるけど、きっともうちょっとしたらドームライブだって夢じゃないよ!」
さおちゃんが、ええ、とそんなに感情の篭っていない声で応えた。熱量をこめて語りすぎたせいで少し引かれてしまったのだろうかと、恥ずかしくなってしまう。
「ねえ、杏子ちゃん。もし、わたしがアイドルになったら、ミミミみたいな感じで推してくれるの?」
歩きながら、さおちゃんはこちらは見ずに呟いた。わたしは一瞬え? と呟いてから答えた。
「アイドル目指したいの?」
さおちゃんは曖昧に、小さく頷いた。さおちゃんが舞台に立って、歌って踊る姿を想像する。映えそうだなぁ、とパッと思った。さおちゃんは小柄だから、スラリと背の高いミミミちゃんとは違うけれど、可愛らしくていつまでも見ていられるに違いない。
「もしもの話だよ。わたしがアイドルになったらミミミみたいに推してくれるの?」
「もちろん推すに決まってるじゃん! ミミミちゃんのことはもちろん好きだけど、さおちゃんがアイドルになったら絶対推すよ! 最推しになるよ!」
さおちゃんがアイドルになったときの魅力的な姿を想像してしまったせいで、思ったよりも言葉に熱が篭ってしまった。また引かれてしまったのではないだろうかと心配になったけど、さおちゃんは嬉しそうに頷いてくれていた。
「じゃあ、頑張る!」
「さおちゃんならきっとなれるよ! 応援するね!!」
こうして、さおちゃんはミミミちゃんのライブを見たことでアイドルを目指し始めたのだった。
「ねえ、さおちゃん。ミミミちゃんのライブ楽しみだね!」
「そうだね」とさおちゃんはそっけなく言う。照れ隠しなのだろうか。テンションの上がりまくっているわたしと違って、さおちゃんは冷静だから、少し恥ずかしくなってしまう。
推しの良さをさおちゃんと共有できることが楽しみで、なんとしてでもミミミちゃんのファンにしたくて、行き道でミミミちゃんのことをたくさん教えてあげてたけど、さおちゃんは興味なさそうに相槌を打っているだけだった。さおちゃんからライブに行きたいと言ってくれたのに、あまり興味が無さそうなことが少し不思議だった。
ライブ会場はそこまで大きくなかったから、良い席が買えなくても、ミミミちゃんの姿はしっかりと見えた。会場に響き渡る声援、ライブ会場の中だけ温度が上昇しているのではないかと思えるような熱気。わたしたちファンは感動に包まれていた。いつにも増してコーレスにも熱が籠る。
ミミミちゃんはたった一人でステージに立っているけれど、パフォーマンスはとても一人だけでステージに立っているとは思えないほど、凄かった。さおちゃんが横にいるにも関わらず、わたしは終始大きな声でミミミちゃんに声援を飛ばしていた。
さおちゃんは静かにだけれど、しっかりと目に焼き付けるようにして、ミミミちゃんの姿を見ていたのだった。チラリとさおちゃんの横顔をみると、本当に可愛らしいのがわかる。普段何かに熱中しているさおちゃんの姿を見ることはあまりなかったから、わたしはなんだか嬉しくなった。
やっぱり、部屋でミミミちゃんの良さを布教をするよりも、実際にライブを見てもらうのが一番だ。さおちゃんと同じ趣味を共有できることへの喜びで胸が弾む。ライブが終わった頃には、さおちゃんにわたしの推しを見せられたことで大満足だったけれど、帰り道に聞いたさおちゃんの決断に、もっと喜ばしい気持ちを覚えたのだった。
「初めて行ったけど、たしかに悪く無いね。杏子ちゃんがこういうの好きなの、納得したかも」
「でしょ! ミミミちゃんすごいよね! 離れた場所から見ても、とっても大きく見えたもん! どの角度から見ても可愛くなるように調整してるからさ、すっごいキラキラして見えたよね!! 今はまだそんなに大きくない箱でやってるけど、きっともうちょっとしたらドームライブだって夢じゃないよ!」
さおちゃんが、ええ、とそんなに感情の篭っていない声で応えた。熱量をこめて語りすぎたせいで少し引かれてしまったのだろうかと、恥ずかしくなってしまう。
「ねえ、杏子ちゃん。もし、わたしがアイドルになったら、ミミミみたいな感じで推してくれるの?」
歩きながら、さおちゃんはこちらは見ずに呟いた。わたしは一瞬え? と呟いてから答えた。
「アイドル目指したいの?」
さおちゃんは曖昧に、小さく頷いた。さおちゃんが舞台に立って、歌って踊る姿を想像する。映えそうだなぁ、とパッと思った。さおちゃんは小柄だから、スラリと背の高いミミミちゃんとは違うけれど、可愛らしくていつまでも見ていられるに違いない。
「もしもの話だよ。わたしがアイドルになったらミミミみたいに推してくれるの?」
「もちろん推すに決まってるじゃん! ミミミちゃんのことはもちろん好きだけど、さおちゃんがアイドルになったら絶対推すよ! 最推しになるよ!」
さおちゃんがアイドルになったときの魅力的な姿を想像してしまったせいで、思ったよりも言葉に熱が篭ってしまった。また引かれてしまったのではないだろうかと心配になったけど、さおちゃんは嬉しそうに頷いてくれていた。
「じゃあ、頑張る!」
「さおちゃんならきっとなれるよ! 応援するね!!」
こうして、さおちゃんはミミミちゃんのライブを見たことでアイドルを目指し始めたのだった。
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