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18 冒険者になる理由

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 薬草採取を終えた俺たちは、町に戻り、ギルドに行って報告をする。
 無事依頼完了して、報酬をレトスに渡すと、感動していた。

「これがお金を稼ぐって感覚かぁ……」

「おめでとうございますレトス様」

「ありがとう!!
はい!!」

 そう言って稼いだ僅かなお金を俺に差し出す。

「えっと……、どういうことでしょうか?」

 受け取らずに居ると、不思議そうな顔をする。

「いろいろお金を出してもらったからね。
お返しをしないといけないでしょう?」

「私は今手持ちがこれしか無いから。
いつか英雄のようになって、この何倍も支払えるように頑張るよ」

 そういう事かと納得した。
 だけど、俺は受け取らなかった。

「自分で初めて稼いだお金です。
それは思い出でにもなりますから、レトス様が大事になっさてください」

「う~ん……、そうするよ!!
ありがとうハル君!!」

「それじゃあ、レトス様の初依頼達成って事で飲みに行っこうぜ!!」

 ワーフが提案する。
 俺たちはいつもの酒場に向かい、奥の目立たない席に陣取る。
 料理とお酒を注文し、乾杯した。
 そのことにも目を輝かせるレトスだった。

「うわぁ~~!!
憧れてた乾杯だよ!!
やっぱり冒険者はこうでないとね!!」

 そういって一気にお酒を煽り、ゴホゴホろ咽るレトスだった。
 なんだか憎めない人だ。
 素直で真っ直ぐで、純粋で。
 とても眩しい。

「あの、レトス様……1つお伺いしても良いですか?」

 俺の言葉に少しだけムッとする。

「レトス」

「はい?」

「冒険者は仲間同士で敬称を使ったりしない!!
だから、私のことはレトスと呼んで欲しい!!」

「ええ!?
それは流石に……」

「レ ト ス!!」

 だめだ。
 この人お酒が弱いようで、顔を赤くして少し酔っている。
 何が何でもレトスと呼ばせたいようで、お酒片手に自分の名前を連呼する。

「で、では、レトス……」

 恐る恐る呼び捨てで呼んでみると、満足そうに頷いてまた一口お酒を飲む。

「それと敬語も禁止!!
仲間同士で敬語使うのは冒険者じゃない!!」

「う……もうこうなったらヤケだ!!」

 俺はコップに注がれたお酒を一気に煽る。
 お酒の力を借りないとやってられない。

「わかった!!
俺たちは今日から仲間だから、敬称も使わないし、敬語も使わない!!
ワーフもアグニオもだぞ!!」

「お、おう!!」

「わ、分かった!!」

 俺の勢いに同意して、2人は酒を飲み干した。

「それで、何かな?」

「え?」

「私にさっき、何か聞こうとしてたでしょ?」

「あ、うん、なんでそんなに冒険者になりたがってるのかなって気になって……」

 俺の質問に少し笑ってコップをテーブルに置くレトス。

「……憧れてる人が居るんだ。
小さい頃からその人の話を沢山聞いてね。
私のその人のような凄い冒険者になりたいって思ったんだ」

「どんな人なの?」

「……大英雄ザラツィール。
小国ダナレアの出身で、15歳で冒険者となって剣と魔法の才能開花するんだ。
16歳の時に3万からなるゴブリン軍とゴブリンキングの討伐に参加し、4体のゴブリンジェネラルの首を単独で上げたのが始まり。
18歳の時に邪悪な巨人、百腕のへクトゥを仲間とともに討伐。
19の時にヴァンパイアの頂点、血鬼十三王の1人、灼血のヴェヘルを同じく仲間とともに封印。
25歳で仲間の2人の仲間を失うも死霊帝ディヘナを滅ぼした。
そして29歳。
いくつもの国を飲み込み滅ばした厄災の邪竜ジャッグフォールを三日三晩の激しい戦いの後に相打ちだけど倒して、人々を救った」

 酔で顔を赤くして饒舌に語るレトス。
 俺たちは黙ってその話を聞いていた。
 詳しく語られる大英雄ザラツィールの英雄譚に、俺たちは静かに興奮し、コップを強く握っていた。
 ザラツィールは冒険者として強大な敵に挑み続け、結果として多くの命を救ってきた。
 29年という短い生涯での数々の功績が称えられ、今では大英雄として語り継がれている。

「私は大英雄ザラツィールのような冒険者になりたいんだ……」

 強い憧れと強い意思の籠もった言葉だ。
 何かに憧れて何かを目指すのに大きな理由は必要ない。
 心が突き動かされればそれだけで良い。
 単純で、子供っぽくても行動したなら立派だ。
 夢を夢のままで終わらせず、自分に出来る行動をするのは凄く勇気が要るし、覚悟も必要だ。
 そんな勇気と覚悟を誰にとやかく言われる筋合いは無い。
 だから、俺はレトスの夢を応援したくなった。
 その純粋な思いと意思に、俺は心を突き動かされた。
 本気な彼を馬鹿にするのは許される事じゃない。

「俺、手伝うよ。
レトスのその夢、応援したい!!」

「俺も!!」

「俺も一緒に手伝いたい!!」

 俺、ワーフ、アグニオの順番で言う。
 レシオは凄く嬉しそうで、凄く照れくさそうだ。

「今日から俺たちは一心同体の仲間だ。
だから、助け合って、大英雄ザラツィールのようになろう!!」

 俺が空のコップを掲げると、3人も同じ様に掲げる。

「プッ」

 おかしくなって吹き出す。

「空のコップじゃしまらないね。
飲み直そう!!」

 全員でもう一杯のお酒を頼み、語らい合った。

 多少酔った勢いはあるけど、俺は本気だ。
 このメンバーで本気で冒険したいと思った。
 だから、強くなる。
 強くなって、レトスの夢をレトスの家族の人に認めて貰って、堂々と冒険をする。
 とりあえず、これが俺の目標だ。

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