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17 レトス

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 水を飲み幾分か気分が良くなった翼人の男は、俺の差し出した燻製肉を美味しそうに頬張る。

「ふぅ……助けていただきありがとうございました。
私はレトスと申します」

「俺はハルです」

「ワーフです」

「アグニオといいます」

 とりあえず町に連れていきながら、レトスが何故行き倒れていたのか聞く。

「恥ずかしい話し、冒険者になると家を飛び出してきたんですけど、世間知らずなせいでうまく行かなくて……」

 恥ずかしそうに話す彼の身なりは、多少汚れているけど貴族のような服装だ。
 家の人が心配して探しているに違いない。
 とりあえず、レトスを連れて町に戻ってきた俺たちは、宿屋に連れていき食堂でご飯を注文する。
 運ばれて来た料理を嬉しそうに眺めるレトスだが、手をつけようとしない。

「食べないんですか?」

「えっと、どうやって食べれば良いのでしょうか?
フォークしか無いのですが……」

「あぁ……、それは……」

 丁度アグニオが頼んだ料理が運ばれてきた。
 さっき牛丼を食べたばかりだと言うのに、胃袋は底なしのようにドンドンと食べていく。
 アグニオの食べっぷりに目を見開くレトス。

「こ、こういうふに食べるんだね!!」

 フェークで肉を刺して思いっきり控えめにかぶり付く。
 恥ずかしそうにするが、楽しそうに美味しそうに完食した。

「ごちそうさまです。
お代は……」

「俺が払っといたので大丈夫ですよ。
ついでに宿も取ったので、今日はそこにお泊りください」

「何から何までお世話になります」

 軽く頭を下げるレトス。
 とりあえず、明日迎えに来てギルドに案内して保護してもらおうと考えた。
 その後はお酒も頼み、乾杯する。
 レトスは楽しそうに一緒に乾杯した。

 翌日、俺はレトスを迎えに宿に訪れる。
 彼の泊まっている部屋のドアをノックする。

「どうぞ」

 声が聞こえ、ドアを開けて中に入った。

「おはようございますレトス様。
眠れました?」

「おはようございますハルさん。
お陰様でゆっくり休めました」

 嘘を言っているのは直ぐに分かった。
 目元に若干隈が浮かんでいる。
 今までどうしていたのか聞くと、高い宿に泊まっていたけどお金が尽き、ご飯も食べれなくなってフラフラを彷徨っていたという。
 とりあえず朝食をご馳走して、ギルドに向かった。
 ギルドにはワーフとアグニオが来ていて、挨拶をしながら近づいて来る。

「とりあえずギルドの人に話そう」

 という事で、俺たちはカウンター向かい職員に話す。
 レトスの事を話すと職員は凝視し、理解したのか上司に話を繋げる。
 とりあえずワーフが俺たちパーティーの代表になって、レトスとともに別室に案内された。
 俺たちはワーフ達が話し終わるまで待つ。
 しばらくしてワーフとレトスが部屋から出てきて、俺たちのところに来る。
 ワーフは困惑した表情で、レトスは何やら晴れやかだ。

「話はどうなったの?」

 俺が聞くと、重い口を開く。

「とりあえずレトス様のことを話し合ったんだけど、一応ギルドの方で保護はするけど、世話は俺たちに任せるという事になっちゃった……。
それで、レトス様の要望としては冒険者になりたいって話して、一応登録証は作るって」

「そういうことだから、よろしくね!!」

「よ、よろしくお願いします……」

 俺は必死に表情を誤魔化し、引き攣った笑顔で答える。
 ワーフの手を引っ張って少し離れる。

「ど、どうするの!?
まさか一緒にダンジョンに連れて行くの!?」

「レトス様の希望だからね……。
ただ、絶対に怪我をさせるなと怖い顔で言われた……。
一応費用は負担してくれるって……」

「まじかぁ」

 とんでもないお坊ちゃんが仲間になった。
 俺たちはレトスとアグニオの元に戻る。
 レトスは結構気さくな性格で、偉ぶらないから、アグニオとはなんだか打ち解けている様子だ。
 とりあえず、いきなりダンジョンに連れて行くのは危ないから、今日はレトスの装備などを揃えることにした。

 レトスは魔法が得意という事で、後衛してもらい、俺たちが全力で守ることにした。
 とりあえず、服装は目立つから翼人用の庶民的なのを買い、着てもらう。
 それから装備は盾と杖を買って持たせる。
 レトスにかかった費用はギルドが負担するということだから、後で絶対に請求する。

 俺の課金の力は当然秘密にする。

 とりあえず着替えを済ませ、魔法使いとして装備を整えたからギルドに戻って簡単な依頼を探す。

「今回は様子見という事で、これはどうですか?」

 薬草採取の依頼をレトスに見せる。

「わかりました!!
それにしましょう!!」

 受理してもらい、俺たちは町を出る。
 とりあえず、どんな魔法が使えるのか尋ねた。

「風魔法と光魔法、回復魔法も出来るよ!!
一応剣も習ってたけど、そっちは才能無いのかからっきしでね……」

 正直勿体ないと思った。
 普通の冒険者なら仲間にしたいくらいだ。
 だけど、レトスは貴族の子息だろうから、いつかは家に戻る。
 魔法の威力も結構高く、魔法使いとしてはかなり優秀な方なんだと思う。

 森に入り周囲を最大限警戒しながら薬草の見分け方や採取の仕方を教える。
 レトスは素直に従い、自分の手を泥で汚しながら薬草を摘んでいく。
 楽しそうにしている彼の様子に、本当に冒険者になりたかったんだなと思った。

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