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15 ホブゴブリン

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 早朝、待ち合わせをした俺たちは早速ダンジョンに向かう。
 装備はバッチリだ。
 何度も確認したから忘れ物は無い。

「ダンジョン攻略で水を持たなくて良いのは本当にでかいよ」

 アグニオは何度も言う。
 これまで何度か他のパーティーに混ざってダンジョンに行っていたアグニオは、力持ちだからという理由で重たい水を持たされてきたという。
 だから、俺が水魔法を使えると話したら心底喜んでいた。

 ゴブリンダンジョンに入り、アグニオは懐から紙とペンを取り出す。
 マッピングだ。
 自分が今何処に居るのかを把握できていないと、死に繋がる。
 それから、焦って行動しないと言いつけられた。
 焦って動き回ると、せっかくマッピングしても意味がなくなる。

 俺たちは慎重に進んだ。
 今回は倒したゴブリンからしっかりと魔石を回収する。
 もちろん課金貨もだ。
 昨日は進まなかった分かれ道に到着し、先ずは右の方へ行ってみる。

「ゴブリン来るよ。
数は5~7体くらい!!」

「「了解!!」」

 俺の言葉に2人は答えて盾と剣を構える。
 グギャギャギャと鳴き声を上げて7体のゴブリンがやって来た。
 全員が錆びた剣を持っている。
 この洞窟の中で、俺たちよろ頭一つ分背が低いゴブリンのほうが動きやすく有利だ。
 だから、分散されないように気を行ける。
 前方から来るゴブリンをアグニオは回り込まれないように位置取りし壁となる。
 そこを俺との槍とワーフの剣で攻撃し、1体1体確実に仕留めていった。

「次が来る!!」

 俺たちの戦闘を聞きつけたのか、新たなゴブリンがやって来た。
 その数10体。
 森だったら俺とワーフで素早く駆け回り撹乱したり出来るが、今は4人が並んで歩ける程の幅しか無い。
 必然的に行動が制限されるから、難しい戦いになる……のだがゴブリンは単純だから直ぐに全滅した。
 だけど、奥に進むに連れて難しくなってくる。
 弓を使うゴブリン、槍を使うゴブリンが現れる。
 多様化してくるゴブリンの種類、遠距離からの攻撃に警戒をしていかなきゃいけないから、神経をすり減らす。
 更には、それらのゴブリンを指揮するゴブリンリーダーまで現れ、思うように進まなくなっていた。

 連続で戦闘が続き、やっと途切れて落ち着く。

「疲れたぁ~……」

 俺の言葉に同意するように頷く2人。
 忙しくて魔石の回収が出来ずにダンジョンに吸収されたゴブリンも居るが、課金貨か吸収されること無く残っているから、2人に警戒を頼み拾っていく。
 やりゴブリンと弓ゴブリンは課金貨4枚、ゴブリンリーダーは課金貨6枚のドロップだ。
 たくさん倒したから、結構良い稼ぎになった。
 課金貨184枚。
 今持っているのは合計で1202枚だ。

「ハル、お水貰っていい?」

「あ、俺も俺も!!」

 水魔法で水を作り、2人のコップに注ぐ。
 2人はごくごくと勢いよく飲んだ。

「残りの水を気にしなくても良いのも最高だなぁ」

 しみじみに言うアグニオ。
 それほどにダンジョン攻略は計画と計算をしなきゃいけない面倒くささがあるのだろう。
 俺の魔力はスキルの魔力増加で底上げされているし、もしもの時は課金したアイテムもある。
 それに、亜空間収納には食料や水も大量にストックしているから、他のダンジョン冒険者よりは圧倒的に潤沢だ。
 もしこの事が広まれ取り込もうとするやつが現れるのは明白だから、2人には絶対に秘密だと何度も行っている。

 休憩し、多少の疲れを癒やしたら更に奥へと向かう。
 待ち構えるゴブリンを倒していき、行き止まりについた。

「この道は行き止まりだね。
戻って左の道に行こう」

 アグニオはマッピングした地図を見て言う。
 帰りの道中も何処から湧いてきたのかゴブリンが現れて倒した。
 分かれ道まで戻り、今度は左を行った。
 こっちの方が正解だったようで、更に分かれ道になり、右を行く。
 俺たちはドンドンと奥へ向かった。
 そして出会った。

「ホブゴブリンだ!!」

 今まで倒してきたゴブリンよりも一回りも大きい、俺たちと同じくらいの背丈のゴブリンが現れた。
 ホブゴブリンはゴブリンの進化種で、力が何倍にも強くなり、生命力も高い。
 それに、知能も上がっているから工夫し始め、少し戦いづらくなった。
 アグニオが攻撃を受けて、その隙に俺とワーフで連撃を加える。
 全身に大ダメージを受けたホブゴブリンは倒れ、課金貨をドロップする。

「ちょっとしぶとくなったね」

 普通のゴブリンなら致命傷を一発与えれば簡単に倒れたのに、ホブゴブリンは全身を傷だらけにしても、致命傷を与えても立ち向かってきた。

「これがゴブリンダンジョンの嫌われている理由の1つだよ。
ホブゴブリンになると、倒すのが面倒になる。
ゴブリンは雑魚モンスターだって認識が強いから、ホブゴブリンに苦戦して撤退するなんてこともあるんだよ」

「確かに、分かるかもなぁ
倒しても素材は魔石だけ、それもちょっと大きくなったくらいの。
全然美味しくないダンジョンだよねほんと」

 アグニオとワーフが話す。

「ホブゴブリンは課金貨18枚だった……」

 俺は拾った課金貨を数えて呟く。
 普通のゴブリンや剣、槍とか弓持ち、ゴブリンリーダーよりも遥かに多い、1体18課金貨だ。
 多少面倒くささはあるが、俺にとってリターンは大きい。
 課金の恩恵を受けるワーフとアグニオも同じ考えだった。
 俺たちの表情は一変する。
 ホブゴブリンが絶好の獲物になったのだ。
 その後、精力的にホブゴブリンを狩っていったのは言うまでもない。

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