上 下
6 / 12

6.

しおりを挟む
アディエル王子様(推定)と出会ってから、僕は心臓がバクバクと鳴り響いています。まぁ、アポロンが平常心を保っているおかげか、実際には通常の鼓動であります。


そして、食材を買って自室にて調理中。アポロンは何故か、大量の食材を買っていた。今日はめでたい日だからかな?そう、アディエル王子の誕生日だ。おめでたいよね。







アポロンが夕食を作り終える頃、僕はかなり驚いた。やけに、大量の食材を買っているとは思ったけど豪勢な料理が出てきた時には、そこまでアディエル王子の誕生日をお祝いしたいの!?とか思ってしまったが、どうやら理由は別にあるらしい。


「グレイシア。お誕生日おめでとう!!これは、俺からのささやかな誕生日プレゼントかな!!」


え・・・?それって、どういう事だろう?


そう、考えた僕は疑問符を浮かべるが、アポロンは僕の疑問に答えてくれた。



「あぁ、そこまでは記憶がないのな。アディエル王子とグレイシアは双子の兄弟だよ。しかし、双子の王子を忌み嫌う風習があるこの国では、双子のうち弟の方をここに隔離した。でも、双子が生まれたのは事実だから、一応第二王子がいるって事にされているけど、床に臥せっている事になっているみたいだね!」


ええええぇぇぇぇぇ!!?確かに、今日会ったのがアディエル王子だとして、年齢は同い年位で姿も似ているかもしれないが、そんな事・・・いや、姿が似ているのは事実だ。教会に行く時に、よく王子に間違われていた。それは、知っている。でも、そういう理由があるとは思わなかった。


『教会では姿を隠していないからなぁ。』


アポロンは鏡を持って、自分の姿を映すと、鏡の中の僕が口を開いた。実際の自分の口が開いていないにも関わらず。


『グレイシア。今、身体を動かしてみな。腕だけが動かないと思うから。』


アポロンに言われて気が付く。腕が、固定されたように動かない。


「え?・・・あれ、本当だ。なんで?」


『ふふーん。それは俺が腕だけは身体の主導権を握っているからね!そして、鏡を通ずれば、もし俺が身体を動かしていても、グレイシアの声が響くし、その逆も然り。これは、ミラクルミラーだね!まぁ、面倒な事、この上ないけど。でも、一方通行にはならないでしょ。腕は部分的に主導権を奪っているから、グレイシアは動けないんだけどね。』


「でも、これでアポロンと会話できるんだよね!脳内会話みたいな一方通行にはならないんだよね?」


『その通り!そして、腕の主導権も譲るね。ミラーを落とさないでね。』


その言葉と共に、腕が解放感に包まれた。鏡を手放しそうになったが、寸での事で力を入れ、落とさずに済んだ。本当に、凄いな。僕にも出来るかな?


『まぁ。やろうと思えば出来るけど。時間はかかるよね。』


うわ!?心、読まれた!?・・・いや、アポロンだって僕の一部だから分かるのだろうけど!


『まぁ。ここは素直に自分の誕生日を喜んでおけば?』


そう言えば、そうだった!・・・どうしよう?僕は第二王子でアディエル王子と双子で。却って、問題が増えてない?まぁ。深掘りする事もないけどね。


考える事を放棄してから、純粋に5歳の誕生日を喜ぼう。うん、そうしよう。


僕はアポロンの作った料理に手をつける。アポロンの作った料理はなんというか、豪快だ。でも、口にすると美味しいので慣れているのだろう。


「・・・ん。美味しい。」


僕は近くに置いていたマジカルミラーをチラッと見て言った。アポロンは嬉しそうに笑った。


『まぁ。俺はあまり料理は細かくは作れないけどなぁ!』


「そうかな?でも、すごく美味しい。ありがとうございます。」


『でも、料理はグレイシアの方が上手いよ!俺、脱帽しちゃった。』


えっ?でも、アポロンの料理はThe漢飯って感じで好きだなぁ。


『なんか、今日は色んな事があったね。』

「うん。そうだね。今日一日だけでもすごく濃い感じがするね。」

『すごく濃い感じ!でも、今日の出来事を超える事なんてないんじゃねーのかな?』


「確かに!」


僕達は笑った。これから色々とよろしくね。
しおりを挟む

処理中です...