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気がついたら、ベッドの上で寝ていた。


・・・ここは、どこだろう。



寝ぼけた頭に入ってくる情報は僕を混乱させる。少し・・・落ち着いたところで、辺りを見渡すとなんて事もない自室の光景を映していた。


ーそうだ。ここは、僕の自室。ここで、生活を送っていたんだ。何故、そんな事も忘れていたのだろう。物心がついた頃から過ごしていた部屋。5階建ての塔になっている建物。散々この建物に住んでいたんだ。ただ単に寝ぼけただけだろう。まぁ、確かに、塔自体の姿はあまり見た事がなかった。いつもはテレポートして街に赴くからね。


うん。それで、僕はギルドでクエストを受けて、自分の食い扶持を稼いでいたんだよね。成長した姿に変化して、魔物討伐に薬草集めなどなど。そして、週末には街の教会に行って、歌をうたう。それで、人々を救ってきた。僕は治癒能力を発揮するには歌わなくてはならないんだ。だから、傷だらけの人々が集まる教会に赴いていた。


最初は疎ましく思われていたが、だんだんと馴染んでいった。今ではすっかり頼りにされている。


☆☆☆☆


『あらら。自我が戻ったと思ったら、随分と都合の良いように解釈してくれるのな。おはよう!グレイシア!』


・・・?これは一体どういう事だろう?頭の中に声が響く。でも、その声は僕自身のものであった。僕、二重人格だったかな?


『まぁ、似たようなものかな!』


自分の質問に答えるもう一人の僕は、ははっと笑う。そうなんだ。僕は二重人格者と。そう言えば、グレイシアと名乗った事は・・・教会に赴く時しか名乗らないな。ギルドでは『シア』という名前で登録しているから。


あれ・・・?僕、誰かから名前を与えられた事があったっけ・・・?


『それは、親からも与えられなかったな!!だから、俺が勝手に名乗った。何しろ、ここは城の離れにある嘆きの塔と呼ばれる幽霊屋敷だからな!』


「え・・・?何で、そんなところに僕は住んでんの!?」


僕は思わず、叫んでしまった。しかし、もう一人の僕は冷静に状況を説明してくれる。



「それは、勿論。俺達はこのシュテルツ王国の第二王子だからな!城内に住んでいるのは当たり前じゃない?」
「ええええぇぇぇぇぇ!!!!??」


『えいっ!口塞ぎの術!!・・・いくら、塔自体にシールドを張っているとはいえ、あまり大声は感心しませんよ?』


驚いた声を出していた口が強制的に閉じられる。ええええぇぇぇぇぇ!!?僕、王子なの?そんな事、一度も感じた事がなかったよ!!


『そりゃあ、俺、第二王子だと思って日々生活していないからな。ここだって、双子の王子を嫌う国王から用意された檻みたいなもんだ。名前だって与えてくれないさ。・・・でも、俺がいるから。グレイシアに不快な思いはさせないよ!』



・・・へ、へぇー?そうなんだ。ってまるで君が今まで生活してきたみたいな言い方だなぁ。


『実際のところ、そうだし。グレイシアはたった今自我を目覚めたところ。もっと、詳しく言えば、今日の朝からだね!でも、記憶は残っているよ。俺が行動していた時の事。でも、解釈は俺とは違うみたいだけどね。』


ええええぇぇぇぇぇ!!?


『グレイシアはよく驚くね。教会に赴く理由は決して、人々を救いに行っていた訳じゃない。ただ、人々から称賛されたかっただけだしね!ただの自己満足だよ。変にキャラ変してたしな。』



なんと、もう一人の僕は目立ちたがりな性格の人物らしい。というか、僕という人格が生まれた理由は何だろう?二重人格って何らかの理由で、何かを忌避したい時発生するもの・・・だよね?



『グレイシアはよくそこまで考えが及ぶよね。普通の5歳児には思えないんだけど。・・・まぁ、そこは隠しておくところかな。ごめんね?でも、本来の人格って言うの?それは、グレイシアなんだよなー。俺はアポロンって言う人格という事を言っておこう。まぁ、自我が目覚めるまでは俺が仮住まいしてたって感じ?でも、俺はグレイシアが目覚めた後でも、死ぬまではいるつもりなんだけどね。』



うん。よく分からないや。ここは深く詮索しない方が良いようだ。まぁ、僕を助けてくれた存在という事なのだろう。そして、これからも助けてくれる存在なのだろう。



『うん。その解釈でいいよ!俺はグレイシアと仲良くなりたい。これからよろしくね。』


これからもきっと長い付き合いになる事だろう。こちらこそよろしくお願いします!!
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